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第百十四話 ユウ、暇を凄く持て余す

 少年少女を送り出し、椅子に座って背伸びをする。


「さーて、俺も俺の仕事をしなくっちゃな。まずは…………」


 …………。


 あれ?


 シゲミチとシズクが村作りの下準備を、ザックとモリーが鉱石や鍛冶等の産業周りの下準備をしにでかけたわけだよ。


 俺こそもう何もする事が無いのでは?


 ダンジョン周りだってパンやルーちゃんナーちゃんに任せておけば良いし、温泉施設の経営やメンテだってウサ族やモルモルに任せておけば問題ない。


「俺に出来ることと言えばマルリさんと遊ぶことだけじゃねえかああ」


 しかし、マルリさんは少年少女と出かけて行ってしまった。

 クロベエ達もそれに同行しているため、猫と戯れることすら叶わない。


 んじゃ、たまには子供達と遊ぶか、と思ってもルーちゃんナーちゃんはパンを引きずって外に出かけてしまっている。


 ……。


 急に出来た休みっていまいち活用しにくいんだよな。

 お前有給取ってないだろ?明日休め!とか言われてさ、何をしようかと迷っているうちに昼が過ぎ夕方になり、そして寝る時間が訪れるのだ。


 布団に入って初めて「今日休みだったのになあ」とぼやく。


 実際このように空き時間が出来た時、有効活用できるタイプこそ成功する人種なのだろうなあ。


「……よし、ダンジョン行くか」


 ◇◆◇


 ポコッと暇が出来てしまった俺はダンジョンに通い始めた。

 といっても、塩のダンジョンでは無く現在進入禁止にして居る火のダンジョンだ。

 ここは既にナーちゃん経由でルーちゃんの加護下に置かれていて、魔獣を倒したところでリスポーンするし、あの強烈な暑さというか熱さもナーちゃんのおかげで涼しいもんだ。


 何故俺がダンジョン通いをはじめたかというと、別に冒険者としての魂が震えたとかそう言う物では無い。

 純粋に魔石が欲しかったのだ。


 とは言え、既に加護下でありゲーム感覚のダンジョンと化しているため、其れを手に入れるにはドロップ運に頼るしか無いわけで。


 物欲センサーにすり寄られた俺は大量の鉱石に頭を抱えている。


「くそおおお!30体狩って鉱石20に魔石1ってどういうことだよ!」


 鉱石は鉱石で使い道はあるし、悪くは無い、悪くは無いがあまりにも効率が悪すぎる。

 魔導具を作ろうと思った時、必要になるのは魔石で、その魔石は魔導具やスマホの充電にも必要になる。


 なのでこの暇な時を利用して沢山補充しておこうと思ったのだが、いくら狩っても微々たるものだ。

 さらに言えば、ダンジョンコアの身内だと言うことで知能がある魔獣はあまり出てきてくれない。

 出てきたところで挨拶をしてくれるため、どうもやりにくいのだ。


 そう、塩のダンジョンとの大きな違いとして、ここは始めから住んでいた住人をそのまま使っているため、知能が低く使役するのが難しい魔獣も加護下に置かれている。


 ダンジョン毎まるっと加護下に置くという乱暴な方法をとったためそれが実現したわけだが、元が空っぽで外から連れてくる必要がある塩のダンジョンでは真似が出来ない方法だよね。


 そのおかげで身内の俺もこうして気楽に狩りが出来ているわけだけど、塩のダンジョンと違って住人達と打ち合わせをすると言うことが出来ない魔獣がいる以上、管理はちょっとだけ難しくなるだろうな。


 ま、そこはフロアマスターであるレッドドラゴン君に胃を痛めて貰うとして、冒険者が来るまでつかの間の休暇を楽しんでいて貰おうじゃ無いか。


 しかし、魔石集めついでにダンジョンの難易度を測ろうと思ったけど無理な話だったな。

 スマホ槍が強すぎてどの魔物もひと突きで終わってしまう。


 実際の所、致命傷になるギリギリの所で討伐判定を受け退場しているわけなので、もしも加護無しの戦いであれば一撃で沈まない個体も居るのかもしれないが、実際に冒険者が相手をするのはこの環境である。


「かといって普通の武器で戦ったら俺の体力じゃもたないからなあ」


 早々に割り切って魔石集めに集中することにした。


 ◇◆◇


 一週間ほど暇つぶしに通い、集まったのは山ほどある鉱石に20個前後の魔石。

 紅く輝く火焰石がいくつかに薬の元になる植物が何束か。


 火焔石は魔力を込めると熱を発する不思議な石で、魔石と組み合わせれば簡易コンロを作ることが出来る。

 そして試しに砕いてみたところ、小さくなった分熱量は落ちるがきちんと熱は発生し、上手に使えばカイロが作れそうな感じだった。


「防寒具に加えてカイロまであれば外に出やすくなるよな。

 寒さを恐れず気軽に外にいけるならウィンタースポーツもウケそうだ」


 この地域は吹雪く日もあるが、基本外は晴れていることが多い。

 

 であればスキーは難しくとも、ソリや雪合戦など雪遊びをするスペースを作れば村外から来る連中は喜ぶんじゃ無いかな。

 

 そのためにウィンタースポーツ場(仮)の周りに魔獣が来ないようにする必要があるわけだけど、そうして安全を確保できれば村の子供達も気軽に遊びに行けるようになるはずだ。

 

 洞窟から出るのは数少ない狩人くらいだと聞くし、これはこれで村の人々の生活を変えるいい手になりそうだな。


 観光にもなるし、良い案じゃ無いか。


 これならラーメンも流行るだろうし、其れを真似て店を出すドワーフも増えることだろう。

 

 酒と鍛冶を求めてやってきた集落だけど、観光地としても良いところになりそうだ。 

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