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第百十一話 ユウ、またしても企む

 暴走仕掛けたシズクをなんとか止め、改めて温泉施設へと案内した。

 

 道中、改めてこの集落の人達の特徴を説明した。


「じゃあ、髭の人達はどう見ても皆オッサンでも、実は大人と子供がちゃんと居て、

 ウサ族みたいな人達も、同じように大人と子供が居るってことなんですか?」


「納得出来ないだろうが、納得してくれ。俺も未だ納得できんが」


 頭を抱えるシゲミチとシズク。


 今後この集落を村にするにあたって、戸籍登録のような事をしなければいけない。

 見た目である程度判別できるのであれば、登録に来た大人に混じった子供を親と一緒に来いとあしらうことも出来るが、これでは年齢を聞くまで大人か子供かわからない。

 

 増して、この世界には名字というか家名と言うか、そのたぐいのものが存在しない。

 シゲミチはシゲミチだし、ザックはザック。

 やってきたヒゲが「俺はマサだ!8歳だ!」と言った所で親が誰なのかわからない。

 年齢を聞いてから改めて家族揃ってくるよう説明しなければいけない。


 家族で来いって云うのを守るような連中じゃないしなあ……。

 そんときゃまた酒でいう事聞かせるしか無いか……はあ、不健全だ。


 俺までぐったり仕掛けた頃、ようやく温泉施設に到着した。


「ほら、ここが噂の温泉施設だぞ、どうだ?すごいだろ?」


 ドヤドヤドヤアと得意気な俺と、驚く3人。

 非常にドヤり甲斐があるいい子たちである。


「うわあ……大きな建物ですねえ!ユウさんちにある宿屋よりも大きい」

「見たことがない造りの建物だ……ユウさん、じっくりと見せてください!」

「オンセン……オンセン……オンセン……」


 シズクは……うん、すっかりやられているな。


 しかし、まだ温泉に入れる訳にはいかない。

 彼らはまだこの地域をきちんと理解していないからな。


「申し訳ないが、温泉に入るのは後だ。お前らには集落の外も視察してもらわないといけないからな」


「集落の外……?」

「そう言えば、広いから忘れかけてましたが、ここって洞窟の中なんだった」

「と言うことは、洞窟の外に……?何か変わったものがありますの?」


 はっはっは、あるともあるとも!とても変わったものがな!

 恐らく君達が見たことがないものがあることだろう!


「まあ、まずは荷物を部屋に置いてくると良い。ミミ、彼らを部屋に案内してやってくれ」


「かしこまりましたユウ様。ふふっ、胸元のほくろで見分けましたね?ユウさんのえっち」


「だから毛に覆われててみえねーつーんだよ!いい加減顔で見分けがつくわ!」


「ユウさん、ウサ族の見分けつくんですか?凄い!」

「なんかコツとかあるんです?宿屋の皆同じにみえるんですが」

「むっ胸元?」


 みろ、シズクが胸を隠してこっちを睨んでいるぞ!

 確かに俺は少しエッチなおじさんだが、今までそんなことはしてないだろうが!


 まったく、いちいち妙な遊びをしやがって……。


 なんだか嬉しそうにミミがシゲミチ達を連れて行ったのを見送ると、3人分の防寒着を作ってそれぞれ袋に入れた。


 ふふふ……せいぜいこれをありがたがってくることだな……。


 馬鹿とルーちゃんナーちゃんの姿が見えないが、恐らく家の方に居るのだろう。

 先触れをしろとは言ったけど、ここで待てとは言ってなかったからな。


 一緒に外に行かせようと思ったが、またブチブチ言われそうだしな……。

 今日くらいは勘弁してやるか。


 荷物を置き、戻ってきた3人にクロベエとヒカリが案内役になると告げた。

 

「こいつらは外に何度も行ってるプロだ。わからない事はクロベエとヒカリに聞いてくれ。

 っと、これを渡しておくよ、時計だ」


「見たことない機械だ。トケイってなんですか?」


「大雑把に昼とか朝とか言ってるだろ?其れを数字で明確にしたものだよ。

 これとカレンダー、その両方が揃って初めてきちんとした予定が組めるってわけさ」


 そう言えば時計の概念が無かったなと思い出して作っておいたのだ。

 年末にカウントダウンをしていたが、あれは俺らに合わせてノリでやってただけだしな。


 3人に懐中時計を手渡し、簡単に見方を教える。

 ザックは分解したそうにしていたが、今はまだ戻せなくなりそうなので止めておいた。

 魔導回路を使った物であればなんとかなりそうだが、これは完全に機械式だからな。

 製作キット任せで作ったものだから、俺だって開けた瞬間目を回してしまうよ。


「いいか、今9時30分だ。12時が昼ごはんの時間だから、11時くらいまで視察したら戻ってきてくれ」


「ええ、1時間?だけですか?色々調べたいことがありそうなのに」


 残念そうな顔でシゲミチが言う。

 果たして外に出ても同じことを言えるかな?んん?


 いかんいかん、ニヤニヤしてしまう。

 

 そして、では行ってきます!と出ようとする3人を呼び止める。


「おっと、忘れるところだった、君達にはこれを渡しておこう」


 先程の袋をそれぞれに渡す。

 早速開けようとするシズクを止め、機会があったら言いたかったセリフ第8位を言う。


「いいか、耐えきれなくなった時其れを開けるが良い。

 きっとその時君達が何よりほしいと思うものが出るはずだから……」


 不思議そうな顔で其れを受け取った3人は改めて俺に挨拶をすると、クロベエ達の案内で出口に向かっていった。


 クックック……、さあ、凍てつく風に恐れおののくが良い……!

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