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第百十話 視察隊、集落へ

 転移門ゲートを前にしたシゲミチ達の反応は淡白なものだった。


「これはなんですか?俺達これから例の集落に行くんじゃ」

「そうですよユウさん、ここはダンジョンじゃないっすか」

「私達ダンジョンに来ても戦えませんわ」

「私は行けますわよ!モルモル柔術ご覧あれ!」


 パンやルーちゃん達にお願いして全て内緒にしてもらってあるのだ。

 故にこれが転移門ゲートであること、其れを使って移動することは知らない。


 俺が気楽に帰ってきたものだから近場に有る集落だと思っているのだ。


 シゲミチなんかはキンタからゲートの話をちらっと聞いたことはあるかもしれないが、キンタの性格を考えれば奴がきちんとシゲミチが理解する説明をしているとは思えない。


 なので実際目にしてもキンタが説明していたであろう転移門ゲートだとは気づかないのだろう。


「まあ、とりあえず皆真ん中に寄ってくれ」


 何をするつもりなのだろう?そんな不思議な顔をしながら身体を寄せ合って中央に集まる。

 うむうむ、見て驚け飛んで驚け!俺のドキドキ同様のものは感じられないだろうがビビってしまえ!


「じゃ、いくぞう!」


 例の操作盤に手を置くと陣が輝き始める。ここでようやく周りから驚きの声が上がった。


「ユ、ユウさん?これはいったい」

「うおおお、床が光ってるぞ!どういう仕組なんですか?調べても!うおお!」

「ちょ、ちょっと動かないでくださいまし!眩しくて何も!」

「そうですわ!ザック様!私が落ちてしまいますの!」


 そしてやがて光が収まると、一同は落ち着きを取り戻しつつ首を傾げている。


 一体何だったんだろう、今の光になんの意味があったのだろうか?


 俺が外に出るよう伝えると、その疑問はますます強くなる。

 一体何のためにこの部屋に入れられたのだろう?


 しかし、一歩外に出ると一気に其れが解消する。


「うわっ暑っ」

「ていうか、どこだここは……」

「じっとりとしますわね?一体何が……」

「うう、凄い魔力が下の方から……」


 それぞれ様々な反応を見せる。特にモリーは面白いな、下の魔獣の気配を察知したのか。


 そして俺が満を持して言葉を発する。


「ようこそ、火のダンジョンへ、そして洞窟の集落(仮)にようこそ、みんな!」


「うわーすっごいドヤ顔してるわよあんた」

「うるせえ!馬鹿はルーちゃんナーちゃん連れて先に温泉行ってろ!」


 うるさいのを追い出し、三人と一匹を連れて集落を案内する。

 ダンジョンから集落に繋がる道を歩いている間、シゲミチが凄くそわそわしていた。


「うわー、知らない植物や鉱物がちらほら見えるー……。ユウさん、俺暫くここに居ても…」

「良いけど帰った後どうなってるか考えてからにしろよ」

「うう……そうでした……」


 元々調べ物が好きな彼にとってここの土地は宝の山に思えることだろう。

 シズクをこちらに連れてきてしまったのでアレだが、また新たな弟子を育てきったらその際は休暇がてら研究にこさせるのも良いかもしれないな。


 道が終わり集落が有る大空洞に出ると皆一様に感嘆の声を上げていた。


「わあ……綺麗ですわね……」


 本来暗いはずである洞窟内を明るく照らすヒカリゴケ、各家々には光の魔導具がぶら下がり幻想的な雰囲気を醸し出している。


 道を歩きながら「アレが長のマルリさんの家」「あっちがマサモ畑」と適当に説明するが、まだ目立って物がないため手持ち無沙汰気味である。


 そんな中、どうしても気になったという感じでまたシゲミチが口を開く。


「あの、さっきから此処の住人と思われる人達の姿が目に入るんですが、小さいおじさんと変わった女の子しかいないようなんですが……?」


 続けてザックも口を開く。


「だよな、髭のおっさんとウサ族のお姉さん見たいな子供しか居ない。大人の女や男の子供ってのはどこにいるんですか?」


 至極まっとうな質問である。

 どう答えてやろうか、ニヤニヤと意地悪なことを考えていると丁度良い所にマルリさんがやってきた。


「おお、ユウ!かえったのか!寂しかったぞ!またはんばーぐをつくってほしいのじゃ!」


「ただいま、マルリさん。ここを良くするための人を連れてきたからね、期待しててよ」


 マルリさんの頭を撫でてやると耳や尻尾をピコピコと動かし気持ちよさそうにしている。


「あ、あのユウさん、その子供は一体……」


 ザックが良いボールを投げてよこす。

 これには俺も最高の返しをしないとな。


「ああ、紹介しておこう。彼女はマルリさん、この集落を纏めている長老ってやつだな」


「「「長老」」」


 モリー以外の三人が同時に驚いた声を上げる。

 モルモルも大小はあれど見た目は子供も大人もそう変わらんからな。


「ちょ、長老って言うとその、極端に寿命が短いとか……?」


 シゲミチがトンデモ理論を言うが、トンデモにはトンデモで返してやろう。

 いいや、彼女は立派な大人、それどころか俺より倍以上生きているぞ。

 女性の年を言うのは失礼に当たる。それとなくはぐらかして教えてやった。


「「「えええ……」」」


「あ、あの私シズクともうします。あの、マルリさん?一体どのようにしたらそんな美しいまま……」


 女子が変な食いつき方をしてしまった。

 そう言われたマルリさんは少々困りつつも、律儀にキチンと答えてくれる。


「そうさのう、きちんと食べ、酒をのんで寝ることじゃの」


「さ、サケですの……?ユウさんがたまに出してくれると噂のアレ……ユウさん!サケを!サケを私にも!」

 

 ガシッと掴まれて酒をねだられてしまう。ちょ、やめろ近い!近いから!反応するから!


 色々な俺の危機を救ったのはマルリさんの追撃である。


「ああ、それな、最近ユウが作ってくれたオンセン!あれはいいものじゃよ!わしも40年は若返ったきがするぞ」


「40年ですの?」


「お肌ツヤツヤ髪はさらさら、みとくれこの尻尾!すっかり毛割れが消えてサラサラじゃよ!」


 ファサッと尻尾を振り嬉しそうに見せている。

 確かに出会った頃よりだいぶ毛並みが良くなっている気がするな。


 マルリさんはなんだかんだいってオープン前なのにちょいちょい入りに来るからな……。


「ユウさん!行きましょう、オンセンに!パンさん達も待っているんですのよね!?

 まずはそのオンセン!オンセンの視察をしましょう!ほら、シゲミチ様!いきますわよ!」


「ちょ、ちょっとシズク痛いって!君、オンセンの場所しらないんじゃ、ちょ!」


 何処かへ引きずられていくシゲミチをザックと二人手を合わせて見送るのだった。

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