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第百九話 久々の自宅

 無事、事前打ち合わせが終わり明日の朝にはあちらに向かうことが決まった。


 行くメンバーはシゲミチ、ザック、シズクにモリーの3人と1匹。

 シズク以外は1週間程度滞在したら村へ帰ることになるが、それまでは視察をしたり、商談をしたりして過すとのことだった。


 彼らにはあちらの事情をかなり細かく説明して置いたが、一つだけ内緒にしていることがある。


 これは目で見て驚いた方が楽しいからな……俺が。


 明日、こいつらがどんな顔をするのか今からとても楽しみだぜ……くっくっく……。


 用も済んだので、シゲミチ達には明日の用意をしておくようにと伝えて俺は家に向かった。

 今夜は水入らずでナーちゃんの歓迎会をしようと思っていたので、ウサ松には予め夕食は彼らの分だけで良いと断りを入れておいた。


 宿屋と家までの距離は遠くは無いので出前を頼むことも出来たが、今日は俺の手料理を食べさせたかったのだ。


「ただいまー」


「む、主!良く参られた!」

「我々、留守を護り抜いたにござる!」


 なんだかモルモル達の言葉遣いが怪しくなっているが、今更もう気にしない。

 塵一つ無くピカピカの家、モルモル達が留守中もサボらず掃除を続けてくれた証だ。


 別に留守中くらいサボっても構わないんだけどな。


「ありがとうな、モル助、モルゾウ。俺が居ない間も掃除しててくれたんだな」


「礼には及びませんぞ。これこそ我らの使命ゆえ」


 まあそう言うと思ったよ。


 さて、お腹を空かせて帰ってくるだろうし、今のうちに夕食の用意をしておくか。

 作って直ぐにボックスにつっこんどきゃ暖かいまま維持できるしな。


 今夜のメニューはオムライスと唐揚げだ。


 子供が喜ぶ鉄板料理だが、あの馬鹿も喜んで喰うに違いない。

 前に馬鹿に買って貰ったケチャップがあるしチキンライスもバッチリだ。


 自由に地球と行き来できるズルい存在、それが馬鹿……もとい女神様。

 少し煽ててやるとちゃちゃっとパシってくれるため、ズルいとは思いつつもちょいちょいお世話になっている。


 まあ、最終的にはこの世界の物だけで再現できるようにしたいので、トマトを初めとした様々な野菜をどうにか見つける必要があるんだけどな。


 オムライスは地味に得意料理だ。


 といっても、大人向けのおしゃれな奴では無くて、子供が大好きな家庭的な味だけどね。

 みじん切りにしたタマネギを炒め、適当なところでクッカの肉を投入する。

 軽く塩胡椒を振って、薄く下味をつける。

 

 肉に火が通った頃、ケチャップを入れ混ぜてフツフツとし始めたところでご飯を入れる。

 ざっくりと切るように混ぜ合わせ、ケチャップを追加。


 良い具合になったところでボウルに移し、ボックスに入れる。


 後はオムレツを作って盛り付けたチキンライスに乗せ、切れ目を入れてふわっとろっとさせれば完成だが、そこは見せたいのでルーちゃんナーちゃんが帰ってきてからその場でやるのだ。


 サラダを作り、スープを用意して唐揚げを揚げはじめた頃玄関先が賑やかになる。


「ただいまー!」

「た、ただいま帰りました!」

「良い匂いしてるじゃ無いの!早くご飯にしなさいよ!」


 ルーちゃんとナーちゃんが帰ってきた。

 ナーちゃんは初めてのお家に緊張と興奮で顔を赤くしながら辺りをキョロキョロと見渡している。


「お帰り、ルーちゃん、ナーちゃん。もうすぐご飯になるから手を洗っておいてね」


「「はーい!」」


「ちょっと、唐揚げ?いいわね!少し寄こしなさいよ!」


「あ、ちゃんと石鹸で洗うんだぞ!」


「わかったー!」

「わかりました父上!」


「ねえ……唐揚げ……」


「……」


「私も帰ってきたんだけど……ねえ?ユウ-」


「……」


「何よ何よー!あたしだって頑張ってきたんだからご褒美の一つや二つくれてもいモガ」


 なんだか馬鹿の扱いに慣れてきた気がする。

 口に唐揚げを突っ込んでやると思った通り大人しくなった。


「はあ、お前も手を洗ってきなさいよ。子供達に示しがつかないだろう?」


「はん!お母さんみたいなこと言っちゃってさ!なによ!」


 と、いいつつきちんと洗面所に向かうパン。

 何だかんだ言ってそういう所はちゃんと従うんだよなあ……。


 子供達と馬鹿が戻ってきたのでサラダや唐揚げを運ばせる。

 二人には馬鹿が唐揚げをつまみ食いしないよう見張る係も任せている。


「いいかー、唐揚げをつまみ食いするような奴はそれで夕食おしまいだからなー」


「ちゃんと見張ってるね!」

「だめですぞ、母上!」

「ユウー!!!なんてこというの!」


 はっはっは、子供達に見張られてはつまみ食いも出来まい。


 皿にチキンライスを盛り付け、それぞれの席に置く。


「いいか、まだ食べちゃダメだぞ?仕上げが残ってるからな」


「これで完成じゃ無いのー?」

「このままでも綺麗な料理だと思いますが、まだ何かあるのですか!」


 ふっふっふーと、手早くふわとろのオムレツを作り、まずはルーちゃんの皿に載せる。


「わっ!たまごやき?たまごやきを乗せたの?」


「これをな、こうしてこうじゃ!」


 ふわっとオムレツが割れ、チキンライスを包み込む。


「わあ!なにこれ!綺麗!」


「父上!私にも!私にもやって下さい!」


「はっはっは!まっておれ!ナーちゃん!」


「わあああ!綺麗……ありがとうございます!父上!」


「父上!私にも!私にもおおおおおお!!!」


「誰がお前の父上だ!待ってろ、ちゃんとやってやるから!」


 ナーちゃんの真似をするパンを小突き、オムライスを仕上げてやった。

 

 クロベエとヒカリにはヒッグ・ホッグを焼いた物と唐揚げを出してやり、俺も食卓に着く。


「では、いただきます!」


「「「いただきます!!!」」」


 皆、笑顔で美味しい美味しいと言って食べてくれた。

 作った甲斐があるというもんだぜ。


 予想通り馬鹿も大喜びでオムライスにがっついている。

 今度子供達にお子様ランチを作ってやろうかと考えていたが、パンの分も作らないと拗ねるなこりゃ。

 

「ご飯を食べたらお風呂に入るんだぞ、いいね?」


「「はーい!」」


「ねね、ユウさん、ユウさん」


「何だよ気持ち悪いな」


「唐揚げまだ残ってる?」


「あん?沢山揚げたからボックスに入れてあるけど……」


「湯上がりにまた出してよ!ビールと一緒にやるからさ!」


「……」


 久々の自宅は穏やかに時間が流れていく。

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