第百四話 報告
「ただいまー!」
「ただいま帰りました!父上!」
「ユウー!ただいまー!」
「ユウ殿、ただいま戻りました!」
「……」
3人と2匹が元気よく温泉施設の扉を開け帰ってきた。
「おかえり、どうだった?寒かっただろ?先ずはお風呂に入ってきなさい」
「「はーい!」」
子供達がパタパタと温泉に向かっていく。女神はなんだか恨めしそうな顔でこちらを見ていたが、何も言わずに風呂に向かっていった。
ははあ、あれはやはり気づいていなかった、気づかなかったまま過してきたと言う奴だな。
暫くして風呂から上がって来た子供達にフルーツ牛乳を、女神にはビールを与え探索を労う。
「改めてお疲れ様。旨いご飯を作っておいたから楽しみにしててな。この後またドワーフ達を集めて試食会開くからさ」
ビールを飲んで少し機嫌が良くなったのか、女神が口を開きはじめた。
「この香り……、あんたカレーを作ったのね?ご飯は?ご飯はどうしたのよ」
「ああ、無い物ねだりしてもしょうが無いからな。諦めてパンで喰って貰うことにした。各自家から持ってこさせればこっちの手間も無いだろ?」
「ふうん、じゃあ別に私がご飯を出さなくてもいいのね?」
ぐっ……そのセリフは聞きたくなかった。ドワーフ達にはパンでいい、寧ろパンの方がウケが良さそうだ。しかし、だがしかし俺は違う!正直ご飯で頂きますをしたい!
「そ、それは、また、今度……!」
血涙を流しそれを断る。今それを出して貰うと試食会で浮く事になるからな。
あいつらのことだ、俺が喰ってるのを見たら真似をして喰いたがるに決まっている。流石にあの人数分ご飯を用意するのは大変そうだし、カレーライスは後でこっそり堪能させて貰うことにする。
「で、どうだったんだ?探索は」
「あんたね、温々としたところでカレー作ってたから知らないでしょうけどねえ!」
「俺?俺はカレー作ってないよ。マルリさんとハンバーグ作ってたから……」
「カレーでもハンバーグでもいいわよ!あ!ハンバーグ残ってたら寄こしなさい!」
「もう無いけど……露骨にがっかりした顔するなよ、今度作ってやるから……」
「絶対よ?まあいいわ。あんたがそうやってた間!私は!寒いところで!頑張って!」
はい、寒いって言った!馬鹿確定!
「あのさ、この間も気になったんだけどさ……」
「な、なによ?」
「寒いなら来た時のように耐寒フィールド出せば良いんじゃ無いの?火のダンジョン行った時も使ってなかったけど、お前使うの忘れていただろ」
「あっ」
「ルーちゃんかナーちゃんが寒いって言えば気づくだろうと言わなかった俺も悪いけどさ、それは気づいた方が良いんじゃ無かったかなあ……」
「うう……そうだった……。あの子達、子供だからかコアだからか寒さにめっぽう強くてね……。全然泣き言を言わないから思い出すことすら無かったわ……」
来る時に行った『寒いねー』もただの感想だろうしな。大して苦にも思っていなかったんだろう。子供は風の子って言うしな。
「それで、俺が聞きたいのはお前の感想じゃ無くって、調査の話なんだけど……」
「それに関してはバッチリよ。まず、アイスモルモルだけど週に1つ何か食べさせてくれるなら喜んで仕事をするって言ってたわ」
「なんて欲が無い」
「暖かい空気を冷やせる、それだけでかなり乗り気だったみたい。ここらは冷やし甲斐がないとかでね」
「まあそうだろうな」
「で、ルーちゃんの契約についても概ね良好。特に氷のカッp……フロストタルットなんかは乗り気でね」
「今氷のカッパって言っただろ」
「言ってない!フロストタルットは『ほう、普通のタルットもおるんか、じゃあきっと住みやすいんやろなあ』って乗り気も乗り気、今から行こかーなんて言うから止めるのに苦労したくらいよ」
「あのオッサンと似た種ならまあそうなんだろう」
「他の連中も乗り気だったから帰ったら第3層を作らなくっちゃね。そのまま森の上位版って感じの環境とレベルだったから3層としては相応しいと思う」
「森の上位マップに雪山はまあ、良くあるしいいんじゃないかな」
「ユウーお腹空いたー」
と、ルーちゃんが空腹のようだ。見ればナーちゃんも言い出せないでは居るが、同じくお腹が減ったという顔をしている。女神はまあ、いつも腹ぺこだから気にしないで置こう。
「よし、ドワーフ達を集めて試食会といこうか!」
「む、ではわしが皆を呼んでくるぞい」
「そんな、マルリさんに頼むわけには……」
「いやなに、その黒いのか白いのを借りられれば楽ちんじゃしの」
そう言うマルリさんはクロベエを見て尻尾をブンブン振っている。ああ、これは乗りたいんだな……。
ならば仕方が無いな、マルリさんにお願いをして呼んできて貰おうか。
「てことだから、クロベエ頼めるかい?」
「うん!その代わり肉沢山喰わせてね!」
俺から肉塊の約束を取り付けるとマルリさんを乗せたクロベエが元気よく駆けだしていった。