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第九十八話 火山の村(仮)レポート

 飲みの翌日からは特にやることが無かった。


 温泉施設の従業員教育はモル山達やウサ男にランがやってくれるし、村化の用意はシゲミチと合流しなければどうしようもない。


 しょうが無い、シゲミチに渡す資料でも作っておくか。


 この集落の気候や産業、出来そうなことを纏めておけば村化の助けになるはずだ。


 まず、ここの気候は特殊。集落の外は雪に覆われていて外気温はマイナス5度前後からプラス3度前後。少ないながら寒さに強い野草も見られ、薬や調味料、食材に使えるかも知れない。


 これは本日パンに罰として採取に行かせている。クロベエとヒカリを見張りにつけているので今日こそはサボることは無いはずだ。


 また、ウーフという喰ってよし、剥いでよしの人間にとって都合が良すぎる魔獣も生息している。ドワーフ達に愛されるその肉はジューシーで甘みがある脂を持ち、それを覆う体毛はまるで羊のようなモフモフの毛。


 肉はまあ良いとして、毛は良いよな。新たな服の素材として使えるし、何よりフワフワの布団の材料にだってなりそうだ。ウールだぞウール。


 他にも魔獣が居ないはずは無いので、それはそのうち改めてちゃんと探索してみないとね。魔獣はどちらかと言えば産業と言うよりルーちゃんダンジョンの第3層に関わるネタだけれども。


 さて、寒い外に対して集落の気候は高温多湿とも言える気候だ。地熱によって温められ居住区の気温は平均すると20度前後。ダンジョンに近づくにつれその気温は上昇し、ダンジョンの入口まで行くと30度を超える。


 ダンジョンの内部はさらに気温が上がり、ナーちゃんの加護無しでは到底動くことは出来ないが、其れに適応した魔獣達が多数生息している。


 そしてこの集落がある洞窟内はあちらこちらから水蒸気が立ち上っていて、それによりやや多湿気味の気候になっているわけだが、そのせいなのか地面は乾燥すること無くしっとりとしている。


 特定の場所以外日が差さない洞窟内だが、壁には謎の発光藻類か何かが生えていてけして暗くは無い。それが光合成にやくだって居るのか、そもそも光合成の必要が無いのかは分からないが洞窟内でも植物はしっかりと育っている。


 代表的なのが作物として育てられているマサモとリッフだ。マサモはそのまんまサツマイモのような植物で、同様に所謂”イモ”部分を食用とする。と言うかこれサツマイモだろ!といった感じの味で、主食とするほか、酒の原材料にもなっている。つーか芋焼酎だろ。


 リッフは何というか葉野菜だ。菜っ葉って感じの。大した主張をする野菜では無いが、鍋や味噌汁などに浮かせると良いんじゃ無いかなって言うアレだな。炒め物なんかにも有りだ。


 その他、住人達は見向きもしていなかったが唐辛子のような物も生えている。


 単体で調味料として使うことも出来るし、コーレーグースーやペッパーソース、他のハーブと組み合わせたらカレー粉なんかにも使えそうだ。


 食材で考えればここの産業はあまり豊かでは無いが酒を造れるのは大きい。


 そして鉱石資源が豊富なのは最高だろう。今後、ここで製造される武器は始まりの村の連中がダンジョンで振り回す大切な相棒となるはずだ。


 また、それ以外にも様々な魔道具や日用品にも鉱物は必要不可欠。始まりの村地方ではあまり鉱物が豊富とは言えず、ダンジョンのドロップでも大した量を稼ぐことが出来ない。


 つまり、まとまった量を手に入れようとすればここの集落との交易は必要不可欠になるわけだ。


 始まりの村には余るほど野菜がある。野菜をこちらに売り、こちらからは鉱物を買う。あちらでは弓矢の知識を与え、こちらからは近接武器の知識を与える。良好な関係が築けるんじゃ無いかな。


 そしてここの主力は勿論温泉だな。外にスキー場を作るのも悪くは無いよな。外で遊んで冷えた身体で温泉に浸かる。特に村の連中は雪なんか見たこと無いからな。良い産業になるんじゃ無いかな。


 ま、レジャーに金をかける余裕がでるのはまだ当分先だろうし、今はまず生活を安定させることからだなあ。


 小屋がノックされ、其れに応えるとウサ族のええと……ララが昼食を運んできてくれた。


「有難うララ、丁度お腹が空いていたんだ」


 笑顔でそれを労うと、ララもまた笑顔で其れに応えてくれた。


「いえ、ユウ様もお仕事お疲れ様です。其れと私はリリです。見分けポイントは尻尾の色、白いのがララで黒いのが私、リリです」


 くるっと後ろを振り向いてお尻をプリッとさせ尻尾を見せてくる。メイド服から顔を出し丸くフワフワと揺れている尻尾は思わずわしづかみしそうになるな。


「尻尾となるとお尻を見なければ分からないじゃ無いか……ま、そのうち雰囲気で分かるようになるから暫くは間違えたら教えてくれな」


 リリはうふふと小さく笑うと頭を下げ、温泉施設に帰っていった。


 今日の昼食はラーメンか。うむ、それなりにラーメンっぽい味だな……ってラーメン?いつの間にそんなの編み出したんだ……?


 コックは確かウサ男とかいったか。男はどうも適当に名前をつけてしまうが、まあしょうが無いだろう。


 ラーメンは寒い地域でキラーメニューとなる。村の制定が一段落したら入口にでもラーメン屋を建てさせるのも悪くないだろうな。外から帰ってまずラーメン!寒い寒いと震える身体に染み渡るスープ!


 これは流行る!


 こっちの集落弄りもなんとか上手くいきそうだな。

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