第2ピース:霞む人影
誰かが目の前に立っているそれが、誰かは、分からない。だけど確かに誰かがいる。
男の人か女の人か分からない、だけど確かにそこにいる、なぜ分かるんだろう、自分にもよく分からないもしかしたら自分は目すら開けてないような気がする。頑張って、目を凝らして見てみると、ようやくうっすらと一つの人影が見えてきた、その影は霞がかかったようにぼんやりしていた。私は、その影に、手を伸ばした、その行動は、人としての探求心が、そうさせたのか他に理由があったのか、自分にもよく分からない。ただ気付いたら、手を伸ばしていた。
もう少しで、手が届きそうだった。
しかし、後少しの所で、なかなか手は届かなかった。私は試しに、目を閉じて伸ばしてみた。
一生懸命伸ばした、これでもかってくらい伸ばした、しかし、いくら伸ばしても、私の伸ばした手は、その人影に触れる感触を感じることができなかった。
(!?)
その時、私は伸ばしてる手に何かが触れるのをやっと感じ取れた。
いや、この期に及んで何かがという曖昧な表現はおかしいだろう、あの人影にやっと手を触れることができたのだ。
その人影は、とても暖かくて落ち着いた。できることならずっとずっと、もっとたくさんの面積の肌を触れてこうしていたかった。
私はこの安心感を与えてくれる人影が誰なのか確かめようと閉じていた目を開いた。
しかし、目を開けた時にはうっすらとした人影はなく代わりに目に入ったのは私と同じベッドで寝ていた奈乃葉ちゃんが、静かに寝息を立てている顔だった。
「あ〜、ねねぇ〜おはよー」
私の、視線を感じたのか奈乃葉ちゃんは、うっすらとした寝ぼけ眼でまだ意識がはっきりしていないのか、少々聞き取りにくい発音で私に挨拶をしてきた。
「あ、おはようございます奈乃葉………ちゃん……」「あはは、奈乃葉で良いって言ってるのに」
奈乃葉ちゃんの、名前を呼ぶ度に、いつも呼び捨てでいいと進めてくれるけれど、なかなか呼び捨てにすることはできなかった。
「まあ、好きなように呼んでくれていいんだけどね、記憶が戻ったら前みたいに呼び捨てにしてほしいな、それが私の、ミミに記憶が戻ったと実感できる最大の喜びだから」
最大の喜び………
「うん、奈乃葉ちゃん」
カーテンを開けると、外は昨日から引き続き、雨が降っていた。
「今日も雨かー、せっかくの休日なのにもったいないなー(-_-;)」
雨………私は意識を取り戻してから晴れの景色をまだ見たことがない、つまり晴れの景色がどんな風になるのかまだ知らない。
「………晴れたらいいな」私は、静かに呟いた。
昨日、私は意識を取り戻したのも夕方ごろで、そこから色々と忙しかったため、私の家から自分の服などを、集める時間がなかった。(今着替えた服はとりあえず体格も対してかわらないので奈乃葉ちゃんが貸してくれた。)
なので今日は、奈乃葉ちゃんと二人で、私の家から着替えなどの、日常品を取りにいくことにしていた。
私は、世話になってるのに、荷物運びの手伝いをさせるのは、悪いと思ったので一人でも大丈夫だと言って断ったのだか。
「いいのいいの、どうせ暇だし、めんどい作業は一人より、二人でやったがはかどるよ」
と言ってくれたので、私はまたまたお言葉に甘えて、手伝ってもらうことにした。
奈乃葉ちゃんの家は、二階建ての一軒家だ、奈乃葉ちゃんは二階に、おじさんとおばさんは、一階にそれぞれ一部屋ずつ持っている。着替えを済ませた私たちは、二人ともまだおぼつかない足取りで、一階まで降りてきた。
一階に降りると、朝の雨の風景に、ふさわしい静寂が一階を支配していた。
昨日の夜、おじさんとおばさんは二人とも出掛けると言っていた。
なので、この静寂にも私たちは戸惑うことなく、リビングに置いてあった夜ご飯の残りを朝のニュースを見ながら眠気を覚ましながら静かに食べていた。
今は、朝の11時こんな時間まで二人して寝るとは相当な疲労がたまっていたのだろう。
おじさんとおばさんが、私たちを起こさなかったのは、私たちを気遣ってのことなのかもしれない。
ご飯を食べ終えた私たちはさっそく、出掛ける準備を始めた。