5 語るテロリストが魔物退治します。
エトファム都市連合地方、ラーグスリーグ暫定自治領にて。
エトファム唯一の生き残りハイヒューマンの魔法使い、ユーシアに二度目の面会を果しに研究施設来ています。
「私もエトファムの、ラーグスリーグの民なのです。
戦争に負けたからといって、高度な魔導文明を築いた先祖の子孫である事である矜持が、野蛮な他民族を同等に見る事ができません。
また私達の先祖が五十年前この地に強引に融合した事が発端となって引き起こされた、この戦乱によって滅びるなら先祖は罪人であり運命の裁断なのでしょう」
前回、ダルビーグを倒した直後、そんな言葉で勧誘を断ったユーシアに、ゲームの設定でエトファムを人達よりその背景を知っているわたしは、モヤモヤしたものを胸に残していましたので今回は一人で会いに来ました。
前回の牢とは違い、自由が許される様になっていた蒼い髪の23歳の女性は、お茶を出すくらいの余裕はあるようです。
「前回お会いした時は御若い文官の方と思っていましたが?」
…存在感が子供よりマシという程度ですものね。
ジョブと年齢をオープンして見せます。
「このような感じの者です。違和感を覚えませんか?」
「Lv2の異邦人?16歳?」
「自分より高レベルの戦闘を何度か見ているだけで経験になると聞きました」
「そうですね。行軍に随行しているだけのお姫様でも5・6レベルにはなります。
その御歳でLv2では人の死体も見た事がないのでしょうか?」
「…少し話が脱線します。
生物が生きる為に酸素が必要なのは知っていますね?
それは毒であることは?」
この世界、あるかどうかは知りませんがエネルギー源を石油に依存していないだけで電力等の基本的科学は存在しているのです。
エトファムを初めとした高度な魔導文明が融合してもたらした部分が大きいようですが。
「…どんな薬でも多量の接種は毒になる、という意味ではなく?」
「その意味も含みますが、大気中の約2割が酸素ですが多分急に5割くらいになると普通のヒューマンは生きていけません。
…聞きかじりの知識ですが」
途中で気付きましたけれど、ここでも同じとは限らないのですよね、ハイヒューマンも分かりませんし。
「つまり、ウォーターボールのように目に見えて窒息を狙う魔法よりオキシゲンボールみたいな魔法を作ってみた方が対処されにくいと?」
「そこまで単純な趣旨ではありませんが、できますか?オキシゲンボール」
「…形式的にはテンプレートがありますから、少し時間をいただければ」
「では対爆処理された部屋で実験してみましょう」
安物の木製ジョッキにエタノールを注いで芯を立てただけのアルコールランプを教室3つ分くらいの部屋の隅のテーブルに置いて実験開始です。
「[オキシゲンボール]…成功した感触はありますが見えないと使う側にも不便ですね」
「圧力をかけて凝縮はできそうですか?」
「テンプレ流用の即席なのでそこまでは難しいですが、大きくするのは可能です」
「では無理のない程度に大きくしてアルコールランプにぶつけてみてください」
「…?分かりました」
途端、炎と熱気が荒れ狂ってわたし達をも襲いますが、予想していたわたしは魔法結界で遮断しています。
予想していなかったユーシアは口をパクパクさせています。
…この結界、わたし達の呼吸用の酸素はどこから供給されているのでしょうか?
こんな思考が今一つ魔法を使えるようにならない原因なのでしょうか?
「…これは?結界を用意していたということは理屈を理解して想定していたのでしょう?」
「わたしは専門家ではありませんからざっくりとした説明になります。
酸素は燃焼の為の重要なファクターにもなるのです。
生物が酸素を必要とするのは体内で燃焼するという意味で似ているかもしれませんが、酸素の違う特性が必要だからと教わりました。
酸素一つでかなり研究するべき幅が広がったのではないでしょうか?
重ねて言いますが、わたしは専門家ではありません。
わたしは異邦人で故郷の義務教育の、決して高くない教養としてこのレベルの知識を平均的に得る事ができました。
貴族とかではありませんよ?平民のわたしでもです」
「Lv2とは思えない魔法結界も?」
「そちらの方がクリティカルな要因ですね。
音より早い、とか想像できますか?」
「遠くに見えた爆発より爆音が遅れて聞こえるのは知っています。
空間接続ワープホールや転移は音より早い、という事なのでしょう」
転移は視界内の空間ごと相互転移するスキルです。
即時発動ですが転移先の草や凹凸等の地面ごとは無理なので転移直後は足場が微妙に浮いているので挙動が遅れるのです。
戦闘時には直線内に障害があると使えなくて限界距離が短くても、手足を狙った突進の延長線上の使い方ができる縮地の方が感覚的に使い勝手が良いとされています。
「ええと縮地の方が近い感覚です。
例えば目の前で爆発したら煙も炎も目で追えませんでしたよね?
でも遠くの爆発の煙は目で追う位はヒューマンにもできます。
縮地は多分、距離を伸ばす事ができても遠くからは見えるのだと思います」
「…実際、ヒューマンの低レベルの縮地は一部のハイヒューマンには見えるそうです」
「マジですか…。ハイヒューマンのしか見た事ないですが、あれも音より早いと思っていたのですが…」
「まあ、誰も音との速度比較した事がないだけで、実際は音より早くて常識の通じないハイヒューマンが見えているだけなのかもしれませんが」
「…話を戻します。
わたしの故郷では音の速度…音速を超える空飛ぶ乗り物が魔力を一切使用しない純粋科学の産物として量産されています。運用コストの問題で軍事方面ばかりですが、技術としては民間に流布した、先程の炎に酸素を加えるような工夫の延長線の技術です。
…高度な文明だとは思いませんか?」
「…それは…」
「…正直、わたしにはエトファムの民と他の民の見分けが付きません。
高度な魔導文明を築いた礎は、余裕がもたらす間口の広い教育と研究を次世代に引き継げる環境にあるのではないかと推測しています。
故郷の話で言えば五十年もあれば初めて自力で1分程度飛んだ試作航空機が音速を超える量産機を生産できる位までの技術格差があります。
でもエトファムの歴史を見る限り、低下している技術すら多く見受けられます。
周りの国とそこまで明らかな優位があるように見えません」
「それは我々の技術を彼ら模倣したからで…」
「それはそうでしょう。
ですが上位者を認めて糧にする余裕があったとも言えます。
どうしても相容れない文化はあるのだと思います。
でも民族主義に固執して、ただ闇雲に排他するのは多面性・多面視点の放棄、退化にも見えますし、余裕のなさにも見えます。
…そうですね、これを見てもらえますか?」
ここに来て以来ほとんど役に立っていない携帯端末に、アニメーション動画を表示させて見せてみます。
「これは?」
「この道具の本質は通信端末です。
そこは今は置いといて下さい。画面内で動いているのが人の絵であることが認識できますか?」
「…ええ」
「内容はフィクション、娯楽の物語ですが1秒に十枚とかを少しずつ動いた絵を描いて動いているように見せています。動画の理屈は映像魔道具とかと同じですね。映画とかは融合前のエトファムにもあったようですし。
荒唐無稽なフィクションの伝え方の歴史は記号化からの進化の歴史です。
文字という記号による小説から童話の絵本へと、みたいにですね。
背景を別に描いて動く物だけを動画にして重ねたり表情にしても口と目だけを重ねたり、固体なら1枚描いて少しずつ移動させて重ねたり、工夫してなるべく手間を減らそうとしてはいますがその労力を想像できますか?
二十数分十三話の制作費用にして一般的労働者の生涯所得くらいはかかるそうです。
こんな娯楽が週に十種類くらい、平民のわたし達が持っているこんな端末で気軽に視聴できる余裕。
融合前のエトファムにあった映画を作るだけの余裕。
都市に籠って得られる余裕なのでしょうか?
映画の登場人物達は単一民族だけが仲良くしていたのでしょうか?」
ガエリオス王国方面から甲魔獣が進軍してきている。
研究施設を出ようとしてそんな声を拾ってしまいました。
耳に蓋を作らなかったのは創造主の最大の失敗…誰かにきいた話を思い出します。
…聞き耳スキルなので切ろうと思えば切れるのでしたっけ?
ここで知らない振りをしてもLv2のわたしが責められる事もありません。
ですが研究施設に入る為の申請にギルドカードを使いました。
イリーシャ辺りの冷たい視線を想像してしまい「何でわたしが」と溜息を吐いてしまいます。
でも聞き捨てならない言い回しなので気にもなります。
「行ってみますか。試したい事もできましたし」
「待って!」
ユーシアの声が呼び止めます。
「行くって何処に?試すって何を?」
「ガエリオス王国方面?」
「四百㎞くらいあるわよ?」
「なので思い付いた移動方法を試します」
なぜかユーシアが袖を掴んで付いて来ます。
「あなた、レイブギン…はややこしくなっているそうですが、文官でしょう?」
「いいえ、とんでもない。無位無官の…強いて言えば冒険者ですよ。
レイブギンとか文官とか大きな声で言わないで下さい。
それでなくとも外堀を埋めようと躍起になっている人達がいますので。
離してもらわないと一緒に行く事になりますよ?」
「ゲストのアポ申請はイリーシャ・ブライトンの代理と聞いていたのですけど?」
「イリーシャの代理…依頼を受けた冒険者? 」
「なんで疑問形なのよ?」
「まあユーシアもハイヒューマンですから一緒に行っても問題ありませんね」
研究施設を出てレイに跨りサビをローブのフードに入れてガエリオス方面の上空50mくらいを[望遠視]スキルで見ます。
「[転移]…十㎞くらい稼げましたか?」
落下を始める前に下に平面の[シ-ルド]を張ってレイはしっかりと着盾?します。
先刻のユーシアとの会話で望遠視で視線さえ通っていれば魔法力依存で距離は伸ばせるのではと思い試してみました。
「え!?ひあ!?」
この世界、レビテーションはあるので魔法使い職のユーシアなら使えるでしょうし、腐ってもハイヒューマンが50mの落下で死んだりはしないでしょう。
ゲーム知識的には飛行魔法はありませんし、あるとシナリオが破綻してしまうからないのでしょうと諦めて、こういう移動方法をを模索してみているのです。
ガシッとユーシアに腰を掴まれましたが、まあいいです。
次は望遠視スキルを最大倍率にして百㎞くらい稼ぎます。
「あの私、空間接続で行ける場所なのですが…?魔力消耗はちょっとしんどいですが」
ユーシアにマップを提供しましょうか?と提案され素直にいただいて統合して見えるように許可してのマップを覗き込んでそんなことを言い出す。
そういえば地元の戦闘魔法職ハイヒューマンでしたね、この人。
「…ハイヒューマンのマップは軍事機密ではないのでしょうか?」
「今や一属領ですし、このままでもすぐに埋まるでしょう?」
「では魔力はトランスファーしますので、一番手前の赤マークの少し手前でお願いします」
着いてからのんびり魔力譲渡はアレですから色々ノーマライズしておきます。
「はあ、[空間接続]」
「れ、Lv133甲魔獣?!」
5mの太ったエビのような甲魔獣です。
Lv123のユーシアには格上ですね。
「あれ?話を聞いていて付いて来たのではなかったのですね」
「聞いてません!」
そういえば聞き耳スキルで拾ってしまった情報でしたっけ?
少し離れた後方にも2体いますが2・3分の余裕はあるでしょう。
Lv2の祝福と呪いもノーマライズしておきます。結果的にいきなり甲魔獣の相手をさせる事になってしまいましたので特別です。
「強化とブースト系のエンチャントをたんまりと、魔力もいくらでも融通しますから一撃集中系の…弱点属性の火の魔法をとにかく連打して下さい。
レイ、援護。サビは奥の監視をお願い」
…実はレイでもサビでも単独で問題ないのですけれど。
「[レイフレア] [レイフレア] [レイフレア] [レイフレア]・・・」
半狂乱で魔法を連打するユーシア。
そろそろサビに次を釣ってきてもらいましょう。
「はあ、はあ、はあ・・・」
一体仕留めた所で余裕なく疲れ切った様子のユーシアですが色々ノーマライズしているのでそこまで疲れていないはずです。気分的なものでしょう。
「次が来てますよ今度は地属性で…あら?」
サビは上手くできているはずですが、2体が明らかにコンビネーション意識して寄ってきます。
人間に近い知性です。詳細鑑定してみましょう。
「…後1体はまた火属性でお願いします」
『レイ、サビ、もう少し直接的でもかまいませんから、もう一体のエビモドキの足留をお願いします』
「なっ!?[ロックゲイザー] [ロックゲイザー] [ロックゲイザー] [ロックゲイザー]・・・」
そして4mの蜘蛛にサソリの尻尾を付けたような甲魔獣に、また半狂乱のユーシアが魔法を連打。
「あせらなくても今度はそんなにかかりませんよ?」
一度Lv2まで下げて110まで上がったのですからパラメータ的には倍以上、MAXレベル以上なのですから。
取得条件Lv123以上のスキルはまだ取得できませんけれども、もうLv2の祝福と呪いのノーマライズは外していますし、そのうち普通に…より楽なはずなのでレベルを上げて取得して下さい。
「 [レイフレア][レイフレア][レイフレア]・・・あっ…終わ…りました…?」
Lv130オーバーの甲魔獣3体をほぼ単独撃破でLv131まで上げてユーシアがへたり込みました。気分的なものでしょう。
エビモドキ甲魔獣の背中に不自然な…といいますか。別の甲殻で継ぎ足した様なおおきなコブ。
丁寧に少しずつナイフの刃を入れて継ぎ足した様なコブ部分の甲殻を切り取ります。
中は内臓グロ…よりある意味、醜悪なモノ。
ふと切り取った甲殻の内側を見ると、人工的な…人工でしょうクッション。
「どうしました?何かみつかりました?」
復活したらしいユーシアが寄って来ます。
見せて良いのでしょうか?
いえ、見せなきゃ駄目でしょう。
「…これ、どう思いますか?」
ハイヒューマンとなる過程で、数え切れない死体を見てきたはずのユーシアが、ソレを見て息を飲みます。
「人の、遺体?」
最初の一体にも遺体はありました。ただ魔法で蒸し焼きになっているものの、腐って融合しかかった様な痕跡がありました。
おそらくその痕跡が一体だけ外れて、普通の甲魔獣に見える行動をしていた原因なのでしょう。
他の二体の中の遺体も、蒸し焼き以外のダメージがあるように見えます。
「研究室に持ち帰って調査をしたいと思います。
ジュライさんにイリーシャ・ブライトンへの伝言を依頼します。
研究員の増援を要請して下さい」
「承りました。
レイブギン方面への配慮?」
「…それも一つ。
こんなものの専門家は居ても少ないのでマンパワーの不足が一つ。
多面性・多面視点の確保が一つ。
…後は余裕が欲しいじゃないですか?」
堅い表情に無理な笑顔を作って見せてくれました。
「改めて承りました。
無理にでも捻じ込んで人員確保してみせます」
そんなユーシアの笑顔を別としても、なんとしても解析したいのです。
おそらく、わたしにはアレの先の技術に覚えがあるのですから。
ガエリオス王国方面から人為痕跡のある甲魔獣が現われたのは、ガエリオス王国首謀の作戦または事故なのでしょうか?
他国の陽動なり誘導なのでしょうか?
状況を素直に見ますと、暴走した一体を二体が回収なり始末なりを行っていた様に見えますが、それも他国の誘導であったとしても然程手が込んだ作戦とも思えません。
エトファムもまたレイブギンの他に2カ国と交戦状態で、隣接する残り1国とも良い関係とは言えません。
「なので、エトファムに防衛戦力も送る事はできませんか?
対エトファム戦力は絶対に必要ではなくなったわけですし」
「確かに絶対に、ではなくなりましたね。
ウチも落ち着いていない以上、どこまで手綱を握り切れるかと言う問題はありますが。
ただ改造甲魔獣については無防備にするのは反対です」
この件ついての窓口のイリーシャのやや肯定的意見。
「正直、研究拠点をこちらに移して、エトファム自体は動きがあってからの対応でもウチはそんなに痛くないんじゃないか?」
ジリアス領のあるレイブギンを第一に考え、研究等に重きを置かないセレナです。
「どうしたの?いつになく積極的じゃない?」
エイプリルはエイプリルですね。
「あの研究施設は使わないともったいないです。
お金でどうにか出来るものではありません。
それに私人として…いえ、後にも先にもわたしは私人ですけれど、言わせていただくと改造甲魔獣については、わたしの本来の道行きに絡む可能性がありますので、わたしは少なくともエトファムにしばらく居るつもりです」
「なら私も…」
「駄目です」
セレナに皆まで言わせずピシャリとイリーシャ。
「ずっとやれとは言いませんが、少なくとも今は貴女がレイブギンの顔です。
脳みそや手足は通信と空間接続でフォローできますが、顔だけはエトファムの様な微妙な位置に動かれては困ります」
「むしろ今レイブギンに必要なのは単純戦力よりせ…サツキ様子飼いの情報戦力ですね。
単純戦力でサツキ様をどうにかできるはずもないですし、お留守番確定ですね」
「その言い方だとウヅキはいくつもりか!」
「サツキ様共々あれだけお世話になったのですよ?
私だけでもお手伝いしないと暇じゃないで…不義理じゃないですか」
「暇って言った!今暇って言った!はっきり言った!」
お飾りの顔と言ってもちょこちょこと少しは仕事のあるセレナに対して、その従者というわたしに次いであやふやな立場なエイプリルは暇なようです。…そうなるよう立ち回ったようにも見えましたけれど。.
「…私もですが…」
言い難そうにイリーシャも切り出します。
「イリーシャ、お前もか…?」
「そういう方向へシフトするのでしたら、エトファムは難しい立ち位置の現場です。元々エトファム方面担当の私が行くしかありません。
一応聞いておきますが、他に希望者はいますか?」
呪いが解呪され人質や、みたいなものが一応安全になったばかりなのです。今レイブギンを離れたい者はいないでしょう。
「ウヅキとジュライだけでエトファムに向かわせる事に、不安を感じない者はいますか?」
…それはどういう意味でしょうか?
皆が視線を逸らします。
「以上、そういう事です」
「ジュライの本来の道行きとは何なのですか?差し支えなければ私も知っていた方が便宜をはかり易いと思いますが?」
「そうですねイリーシャ様ももう完全に共犯者ですし、私達が言うのもなんですが、裏切者とか薄情者が逃げ出したとか筋違いな言われ方されるのは私達も心苦しいので仲間を増やしませんか」
「…共犯者とか人聞きの悪い…最終的に裏切るか逃げ出すのは確定なのですか?」
「…どういわれようと仕方ないですし、構わないのですが。
わたしのジョブとレベル、どう考えてもおかしいですよね。
異邦人というのは異世界からの異邦人なのです。
最終目標が帰る事なので、最終的に裏切ってでも帰る可能性があるのと、糸口を見つけたら優先しますという事です。
召喚現場はサツキとウヅキ、言ってしまって良いですか?…セレナとエイプリルが見ていますので証言してくれますよ。
あと最近、証拠としてこんな物を思い付きました」
携帯端末を出してアニメや音楽等を再生して見せます。
意外と驚かれたのは撮影とその場再生機能です。
魔導具で似たような機能のものはあるはずなのですが、映像の再現度とサイズと多重機能がありえないそうです。
ちなみに魔導具を組み合わせて充電できる腹積もりでした。制服のポケットに入っていたので3つもあるし。
でも電池を登録して使った後リヴァイヴしたら回復しました。
相談したら充電魔法も魔導電池の組み込みもそう難しくないはずとの事でした。
ついでなのでイリーシャにも「稼ぎ修行」して複数の甲魔獣やハイヒューマンに対しての戦力不安も解消しておきました。
マップの塗り潰しでもしようかと思いましたが、よく考えてみますとモモンガのサビにはわたしの魔法の使用権限を与えています。
なのでサビには高所に転移して滑空して高度が落ちたらまた高所に転移と、任せた方が塗り潰しという意味では効率が良い事に気付きました。
甲魔獣を発見との通信を最優先で回してもらっているので位置情報を確認します。
まだ塗り潰していない場所です。
でも近所にサビがいるので飛んでもらいます。
2体のLv162の4mの巨人?甲魔獣なので全身甲冑を着ているように見える巨人。コブはないように見えます。
『サビ、やってしまってください』
首後ろの甲殻を引きはがして隙間から頭部内の脳を倒れるまで掘り進みます。
体長20㎝もないモモンガが物理で蹂躙。
2体目も同様に仕留めます。
魔法を使わせなかったのは、監視者がいても何が起きたか解からないように処理する為にです。
再生能力が高い巨人は記憶こそ再生できませんが時間をかければ脳味噌も再生します。
離れてしばらくピクピクする半死体を監視しますが反応はありません。
空間接続でサビと半死体2体を結晶封印してサクッと回収。
「サビさん、お風呂に入りましょう」
血に塗れて毛が寝て張り付いたサビは、それでなくとも小さいのに更に小さく見える上になんだか猟奇的です。