1 プロローグでチートします。
R15と残酷な描写ありは微妙なので一応の保険です。
皆様の意見と誤字脱字の指摘を御待ちしております。
本作品はアルファポリス様にも投稿しております。
あえて言うなら白い空間。
「君は元の世界を離れて別の世界に転移する事が確定した。
しかし祝福を得て変に救世主とかになって目立たれるのは、こちらの事情で困る。
なので召喚場所と祝福付与については介入させてもらう。
苦労はするだろうが、まあ死にはしないだろ。
2・30年はかけても大丈夫、奮戦を期待する」
わたしは意思表示すらできず一方的な声の気配が消えます。
声と言っても意思が伝わるだけで音ではなく、個性がないのか私に特定できない知覚なのでしょう。
…苦労は確定で、死は未定ですか。
そのまま意識が移動させられます。
重力を感じ、目を開くとわたしは光る召喚陣の中心で立膝を付いていました。
「転移…の魔法陣?」
硬質の部分鎧を着た銀髪灰瞳女性が呟く。
白人補正を加味すれば同年代、15・6才でしょうか?
「いえ、転移魔法は魔法陣を使いません」
こちらは金髪碧瞳の女性…エルフ?17・8に見えますが、テンプレ設定ならアテにならないかな?
ちなみにこの会話、ネイティヴな日本語でございます。
そしてわたしの視界にはLv43、Lv78とかHPバーみたいなのが『表示』されています。
ゲーム?VRMMOは少し齧りましたけれど、知っているモノとは違います。
「ええと、わたしはフヅキ。
会話からしてあなた達が呼んだわけではないのですか?」
「違います。しかし、呼ぶと言っても私達以外にこの森に人はいないはずです」
エルフ?がVRでマップ検索したかのような視線の動きです。
やっぱりゲームっぽいですね。
「直前に一方的に宣告された声の言葉を信じるなら、召喚場所を介入したらしいです。
ここがどこだか分かりません。
貴女方が仮装しているのでなければ、わたしの知る文化とはかけ離れています」
立ち上がりたいのを堪えて、刺激しないように立膝を付いたまま。
ブレザーの制服、スカート長めで良かった。
「神の言葉?」
う、ここは間違えると大惨事かもしれません。
「分かりません。失礼ですが御二方の信じる神とは?」
「…なるほど、取り繕って女神ラーシアの名が出ないのは文化かけ離れているからか?」
「私達はそれすら形式だけですが」
うん、エルフのテンプレは精霊信仰ですよね。
にしてもラーシア、ラーシア…引っ掛かるけれど神話系ではないよね…?
「声は男性のように感じましたので、女神ではないのではと思います」
「まあ、女神ならLv2でこの森の真ん中に放り出したりしないでしょう」
「えっ…と、Lvの概念があるのですか?というかLv2って!」
思わず素で返してしまいました。
「自身のレベルも分からないの?」
「ええと、普通に分かるものなのですか?わたし、Lv2なのですか?」
「Lv2だね」
「Lv2ですね。
ジョブオープンしてもらわないと数値としてははっきりしないし、戦う者としての目安ですが、自分より10も上ですと分かりませんが下は分かります。隠すのが上手いスキル持ちでも30も下だと隠せません」
ん?Lv43、Lv78とか見えているのですけれど?
「ジョブがかけ離れていれば分からないが、この場に単独で至る為のジョブがLv2というのは…ちょっと考え付かない」
「私も思い付きませんね。
私達は召喚陣らしきものから貴女が出現したのを目撃した事を考慮して、通常はあまり他人に見せるものではない事を前提で、ジョブを見せて頂ければ何か分かるかもしれません」
「…わたし自身どうしたらLvとかジョブが分かるのでしょうか…?
…メニュー!…あ、出ました」
VRMMOで初期に慣れるまでやっていた、手をかざしてメニュー呼び出す動作で青い半透明なメニューが出ました。
で、ステータスでしょうか?お、視線で操作できます!
名称 文月/フヅキ
Lv2 異邦人
ヒューマン女性
NEXT EXP 4
HP 22/22
MP 8/8
SP 8/8
以下パラメータは筋力だけでも腕力脚力、他ズラズラっと並んでいますけれどパッと見、全部、5か6。
詳細タブになっているので概略タブに切り替えると主要7項目が5か6になります。
下にはスキル?
『Lv2の祝福』『Lv2の呪い』が2つだけ。
「何でしょう、これ?祝福なのでしょうか?呪いなのでしょうか?」
「スキルですか?それは秘匿するべきです。
ジョブオープンしてください」
割と思考制御が優秀なようで、言われたらすんなりジョブオープンした様です。
「Lv2 異邦人ヒューマン…」
「何といえばいいのでしょうか…」
「え?何か問題あるのですか?問題のあるジョブなんですか?」
「いえ、このガースギースには大陸と呼べるのは現在1つしかありません。
しかし、いくつか島国はあり、それらからの渡航者が稀に異邦人になるという話です」
「でも、なにか判断できる程いない、というか実際の異邦人はすぐにジョブが変わって普通のジョブになるから今の場合の判断材料にならないんだ」
「ジョブオープンまでしてもらって、申し訳ないのですが」
本当に申し訳なさそうにします。
けれど、重要な情報を得ました。
「え、ええ、そこはまあ、仕方ないです。
ただ、ここが森の真ん中で、Lv2が単独で来るのが考え難いのですよね?
と言うことは出るのも?」
「ああ、危険。自殺行為だね。
でも、プライベートの活動中に、こんな状況で見捨てる様な事はしないよ。
私はセレナ・ゲインツ。騎士崩れだ」
「…よろしいのですか?」
「ああ」
「私はエイプリル。セレナ様の従者です」
ゲームなのでしょうか?
ガースギース。女神ラーシア
同一ゲーム内の名称。
ただ、VRMMOではなく昔の復刻ライブラリを現行OSで再現した、一応マルチエンドではあるものの、いわゆる一本道RPG+シミュレーション風味。
あのゲームの設定をVRMMOに移植? 無理ですね。
ストーリーRPGは根本的にVRMMOとは相容れないと聞いたことがありますし。
何より圧倒的現実感と一月前に袖を通したばかりの制服がゲームである事を否定しています。
危険・自殺行為の忠告通り何度か魔物とエンカウント。
Lv20のゴブリン三匹をエイプリルの魔法の炎の矢が生々しい全身火傷の致命傷に追い込みます。グロいです。
Lv29のオーガ2二匹をセレナの大剣…スキル?を二連発して袈裟懸けに両断。夥しい血がスプラッタです。
死体にたかるLv15のイーターリザード三匹が魔物の構造を鮮明に見せてくれます。
…うん、ゲームはないですね。
ここまで緻密なデータを作る狂人はいないと信じたいです。
「アレも死体喰らいではなく狩猟種ですよね…」
3m先に狩猟種が居る事実。
「そういえばそうですね。レベル一桁しか襲いませんが。
フヅキにとっては脅威ですから、狩ってみますか?
支援します、[バーストエンチャント]」
エイプリルの魔法によりゴブリンから拝借して一応持っていた槍に力…魔力が宿ったのを感じました。
「え?え?え?」
「慌てずここから投げたら良いのです。
多少外してもエンチャント効果がありますし、こちらには来ません」
「あっ、はい」
ゲーム的に養殖してくれるって事ですよね。
深呼吸して中央の個体を狙い、モーションをイメージします。
「はっ」
狙い違わず命中。エンチャント効果で残り二匹もまとめて爆散。
「悪くないですね。習った事が?」
「当てる事だけに集中しました」
「しっかり習った事があればLv2って事はないでしょう」
他の死体喰らいが寄ってこないか視線は周囲警戒のままの二人。
騎士崩れと従者って言っていましたけれどプロっぽいです。
セレナがイーターリザードとオーガの死体から魔石を掘り出し、わたしに手渡します。
「初討伐の祝いだ。
私達はこれくらいは無視してしまうが、二三日は暮らせる額になるでしょう。
この場を移動して落ち着いて話をしてみた内容次第で、一週間程度なら私が面倒をみるかもしれない」
「セレナ様?」
「内容次第だって。ウチの事情に巻き込んだりしたら、本末転倒でしょう?」
「分りました。
ところでフヅキさん。
何故まだLv2なのですか?」
「まだLv2なのか?
普通ここまでを見ているだけでも4か5位になるはずでしょう?」
「…Lv2ですね。
うん?パラメータとスキルが…」
名称 文月/フヅキ
Lv2 異邦人
ヒューマン女性
NEXT EXP 4
HP 22/42
MP 8/28
SP 8/28
・
・
・
以下パラメータは40~50位上がってポテンシャルポイントが66となっていました。
これを消費してスキルを取得するはずです…取れるスキルは気付かないうちにLv2になっていました『投擲』『遠見』『暗視』しかないので5ポイントずつ振り分けてスキルLv3にしてみます。
注目すべきは変わっていない『NEXT EXP 4』でしょうか?
「パラメータ?はよく解かりませんが、Lvが上がってないのにスキルを得たのですか?」
「そうみたいです。
すみません、よく分からないので、ちょっと我が儘を聞いてもらってもいいですか?」
テニスボール大の石を集め、練習しつつエイプリルさんの誘導で10分。
[遠見]スキルで400m手前の木陰でオ-ガ三匹Lv36・36・40を発見。
30mまで近寄って自分のステータスウインドを開けたままにします。
「戦闘後、余裕があれば、わたしのLvをよく見ていて下さい。
一投目、行きます!」
テニスボール大の石を3mを超えるLv40鬼族に向かって投げます。
目標の背中から肩に命中。粉砕。
可能な限り連投。
6発投げて2匹仕留めてラストが10mまで接近。
エイプリルさんが一番簡単なプレーンなエンチャントを付与した石を顔面を狙って投擲。
思い通りに顔面を貫通。一撃瞬殺。
「何か掴めた気がします…。
って、レベル!」
ステータスウインドを注視します。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
×101
ポテンシャルポイントが363まで貯まりました。
「Lv不明…だと…」
「ごめんなさい、今あんまり余裕ないです」
スキル習得欄で必要ポイントの高い順に上から習得していきます。
「なんで?あ、見えました 、はあ?なんで?
…ってあら?90に下がりましたよ ?」
「10秒に1ダウンくらい?15分くらいですね。
なら、そこまで焦る事もないかもです」
「終わりました。
お世話になっているお二人には、誠心誠意を尽くして尽くして御答えしたいと思います」
「…なら聞こう。Lv2に戻ってしまったがフヅキは大丈夫なのか?」
「現在苦痛も疲労も感じていません。それに…」
20m先で先程のオーガの死体にたかるLv15のイーターリザード5匹を「[ホーミングボルト]」と呟くと10本の灰色の矢がわたしの周囲に現れて発射。木々等の障害物を避けて全弾命中して全滅します。
「…とまあ、簡単な魔法をエイプリルさんの真似ができるくらい余裕があります。
…1本ずつでで良かったですね」
「魔力は?ホーミングボルト10本は私でも結構な負担です」
「…Lv100超えなりの魔力最大値だと思います」
「…ハイヒューマン…Lv2で?」
ハイヒューマン。わたしのゲーム知識の中にそれと思われる該当するものがあります。
NPCや一時参加のパーティメンバーはヒューマンでLv50、エルフでLv80位でレベルアップしなくなるのです。
ゲーム知識内で世界で30人くらいしかいないLv100超えの超越者。
ちなみにプレイヤーは最大200
「わたしには最初から[Lv2の祝福] [Lv2の呪い]というスキルが2つだけありました。
そしてお二人の戦闘を見ているだけでも経験値として少しはLvが上がるはずとの事でした。
おそらくレベルアップしていたのでしょうが、多分[Lv2の祝福] [Lv2の呪い]の祝福の効果でどんなに経験値を得てレベルアップしてもLv2に戻るのだと思います。
先程の様にLv2がエイプリルさんの支援付きでLv15のイーターリザードを三匹倒したら?単独でオーガ三匹を倒したら?どのくらいレベルアップしますか?」
「オーガは想像もできないけど、イーターリザードなら10位かな」
「それで?Lv2がホーミングボルト10本放てる説明にはならないね」
「Lv2は下がってもお二人の戦闘の記憶や投擲等のスキルを忘れるわけではないと思います。一度育った筋力や魔力なんかも。
先程のお待たせした様に必要な条件や作業はありますけれど。
後は呪いの方で御聞きしたいのですが、Lv2固定でデメリットはありますか?」
「まずLv依存で習得できる魔法やスキルがありますが…ああ、先程『作業』とはLvが下がり切る前に習得作業をしていたのですか?」
「はい。Lv100超えのものも習得できましたが今の所、実際見たものか理解できるものしか使えませんですが」
「ふむ…では実際的には最大の呪いかもしれないデメリットを一つ思い付いた。
兵士でLv5、傭兵ギルドで8が最低資格、冒険者ギルドでも実質4はないと食える仕事を貰えない。
ちなみに、成人民衆のほどんどが戦闘関連でもLv2から4だ。
Lv2は子供よりマシ程度の部類に入る」
「つまり街中では嘗められ易いし、荒事向けの職は無理があります。
歳相応といえばギリギリ歳相応ですが、呪いが一般職にも適用されないとは思えません。
召喚の件について戻る方法などを調べるにしてもかなり余計なハードルになります」
「うわあ…地味に酷い呪いです…」
「まだ時間的には早いが森の中はそろそろ暗くなってきた。野営の準備を始めよう。
フヅキの件は後で余裕ができるから、それからにしよう」
「わかりました」と答えた瞬間、何もない所から体育倉庫位の木造の小屋を片手で|小屋を片手で引っ張り出しました《・・・・・・・・・》。
「おおう?」
「びっくりしたでしょう?
セレナの亜空間収納は私が知る限り最大だからね」
「亜空間収納は…?魔法ではなく?」
またわたしの知るゲーム知識と認識の祖語が出てきました。
ストレージはゲームで使用するモノしか入りませんでした。
「魔法、ではないと言われているわね。
容量は質量基準で魔法力らしき能力依存だけど、魔法を使えない人でもLv40を超えたくらいで紙2・3枚収納できた人は居るから」
うーん、ゲームではデフォルト機能で主人公補正かな?くらいに思ってましたけれど。
「わたしにもできるでしょうか?…っと、できたみたいです?」
試にイーターリザードの死体とそこらの石とか岩を何十個か入れてみて、印象的な色の石を意識して取り出してみます。
「…できたわね、あっさりと」
「…できましたわね、かなりの質量で」
メニューで昼はグレイアウトしてたアイテム欄をみるとイーターリザードの項目に食用部位・皮・骨・魔石・残り部位等のツリーが垂れ下がりました。
それらを一個ずつ選択するとキチンと解体されたイーターリザードが出てきます。
そう言えば、あのゲームでは敵を倒したら自動でにゲーム的に要る部分だけストレージに入ってたましたから、解体というプロセスが一切省略されていました。
「どうしようか」
「どうしましょう」
ヒクヒクと呟く二人。
「あれ?何かマズかったのですか?」
「フヅキ、一晩かけてでも学ばなければならない事がある」
「貴女は本当に異界よりの召喚者なのですね!常識が圧倒的に足りません」
…小屋を丸ごと引っ張り出すのに比べれば、まだ常識的…比べるのはやめましょう、わたしもできそうな気がしますし。
長い夜になりそうです…。