第四章 英雄への一歩 —4—
それから、どれくらい経っただろう。
シールド装置にアルネタイトを装填し終えたオルカは、マキーナに連れられて「伏魔殿」を抜け出し、街の最南端の道を歩いていた。
まだ正午になったばかりであるためか、太陽が強くさんさんと光を放っている。
更地の上に石畳を敷いただけのような街路には人がおらず、街の中央のような店の連なりはなかった。あるのは申し訳程度に少数立てられたシンプルなデザインの街灯だけだ。
進む少し先で石畳は途切れており、そのすぐ前には石車が通るための道路が遥か真横へ伸びている。そしてその道のさらに向こう側は崖となっており、その先に広がる大海原がここからでも視認できる。
オルカは歩を進めながら、前を歩くマキーナの背中を黙って見つめていた。
迷宮を出てからというもの、自分たちは一言も言葉を発していない。なので、彼女が自分をどこへ連れて行こうとしているのかも分からない。
さらに真っ直ぐ進み、石畳の終わりまでたどり着いた。
その前にある真横への道路に石車の通行が無いことを確認してから、向こう側へ渡る。
そしてさらに進み、とうとう先程見えていた崖までたどり着いた。
崖の最端は自分の腰ほどの高さの木柵でしきられており、その先には見渡す限りの水平線、群青色の大海が広がりを見せていた。空にはカモメがちらほら見られ、心地よい潮風が肌を撫でてくる。
木柵の前で、ようやくマキーナが足を止めた。自分もそれに合わせて停止する。
自分の二、三歩先で彼女は背中を見せて立ち止まっていたが、やがてゆっくりとこちらを振り返り始めた。
彼女はどんな顔をしているだろう。
アイアンクラスの分際で「第一級危険地帯」に潜り込むという愚行を犯した自分への軽蔑の表情か。
あるいは、怒気を孕んだ顔か。
――そのいずれも違った。
振り返った彼女は、これ以上ないほど悲しげな顔をしていた。
それを見た瞬間、心をえぐられるようなショックを受けた。
「ねえ、オル君……どうして、あんなことしたの?」
そう言葉を紡いだ声色もまた、悲壮感に満ちていた。
「「第一級危険地帯」って、ちゃんと書いてあったでしょ……? 入っちゃダメだって分かってたはずだよね……? なのに何で入ったの? バッチの色まで塗料で変えて……ねぇ、どうして? ねぇ?」
彼女の目に涙が溜まっていく。
「分かってるの……? もしも私が気づかなかったら…………オル君は死んじゃってたんだよ……?」
ボロボロと大粒の涙滴を溢す。
しかし、自分は何を言っていいか分からず、気まずそうに視線をそらした。
そんな自分に我慢ならなくなったのか、マキーナは衣服に掴みかかってまくし立ててきた。
「ねぇなんとか言ってよっ!! 私がどれだけ心配したと思ってるのっ!? オル君らしい男の子が「伏魔殿」に入ったって聞いて、私がどんな気持ちで走ったと思ってるの!? ねぇどうして!? どうしてそんな命を粗末にするような事をしたの!? 答えてよオル君!! ねぇ!!」
――心配。
どうして、心配なんてするんだ。
ボクは君にあれほど酷い言葉をぶつけたっていうのに、そんな相手をどうして心配できるんだ。
ボクは君から離れるために、断腸の思いで罵ったというのに。
どうして君は、ボクにすすんで近づいて来るんだ。
それを考えると、自分勝手だと分かっていても癇に障った。
「ボクの命はボクのものです。どう使おうが貴女には関係ありません」
「関係あるもんっ!!」
「ありません。駄々っ子もいい加減にしてください。キモいって言ったはずですが」
「気持ち悪くたっていい!! とにかく私はオル君が心配だったのっ!! オル君が死んじゃうかもしれないって思ったら、いてもたってもいられなくなるくらい心配だったのっ!!」
「――なんでっ!!!」
とうとう堪えきれず、オルカは怒鳴り声で吐き出した。
「なんで放っておいてくれなかったんですか!! こんなボクをどうして助けたんだ!! ボクが散々酷い事を言ったこと覚えてるでしょう!? なのに嫌いこそすれ、どうして貴女はボクの身を案じたり、助けたりなんてできるんですか!? 頭おかしいんじゃないんですか!?」
暴言の形をとった本音が、口をついて出てくる。
「おかしくないよ!! だって私は――」
だがマキーナはそれに怯みもせず負けじと息巻くと、吐息がかかるほどまでに顔を近づけてきた。
そして、言った。言ってしまった。
「私は――オル君のこと、大好きだもん」
目を見開く。
あれほど口汚く言われてもなおそんなことが言えるのかという戸惑いと、彼女に抱く好意ゆえの「嬉しい」という気持ちがないまぜとなり、心臓が嫌な高鳴り方をした。
間近には彼女の顔。
白磁のようにきめ細やかな頬にはうっすらと朱が浮かんでいる。髪色と同様の漆黒の双眸は涙で潤んでいるが、その奥底には驚くほどしっかりとした意志の輝きがある。
先ほどの告白以上に、彼女の好意を言外に突きつけられた気がした。
途端、オルカは何と返せばいいかわからなくなる。
水あめ状になったかのように四肢から力が抜け、するすると体勢を崩して地面に両手両膝をついた。
「なんで……なんでそんな事が言えるんですか…………変ですよ、貴女……なんで……」
蚊の鳴くような声で呟く。
『ライジングストライカー』に包まれた両手がふるふると震えていた。
「……変なのはオル君の方だよ」
「ボクが……変?」
呆然とした声で疑問を呈するオルカに、マキーナは「うん」と頷くと、こちらと目線を合わせる形でしゃがみ込んできた。
「久しぶりに会った時からなぜかすっごく他人行儀だし、昨日まで普通に話せてたのに、今日になってから一転して冷たい態度取って避けようとして、挙句の果てには「伏魔殿」に潜るなんてバカな事するなんて……不自然だよ。オル君の考えてることが全然分からない」
彼女の瞳からは哀切さとともに、こちらの心情を理解しようという懸命さが伝わってきた。
「もしも何か理由があるなら、話して欲しいな。オル君は今、何に苦しんでるの? 無理にとは言わないけど、少しでも話したいって思ったら話して? ほら、私はお姉ちゃんなんだからっ」
そう笑って、可愛らしく力こぶを見せる仕草をするマキーナ。
――オルカは自分が恐ろしく卑小で、狭量な人間に思えた。
あれだけ毒を吐かれたというのに、彼女は自分が好きだと堂々と告げ、なおかつ親身に相談にまで乗ろうとしてくれている。
ここで煙に巻くことは許されない。そんな気がした。
「……分かりました」
そこから、オルカはゆっくりと順を追って語り始めた。
自分がこれまで歩んできた軌跡を。
そして、彼女との別離の日となった――「あの日」の事を。
話は八年前に遡る。
オルカは八歳、マキーナは十歳、二人がパライト村で一緒だった頃の話。
二人は非常に仲が良く、いつも一緒に遊んでいた。
今よりずっとお転婆で元気者だったマキーナの後ろを、オルカはいつもくっついて歩いていた。それこそ、「マキーナあるところにオルカあり」と村の大人に言われるほど。
友達からは「早く結婚しちゃえー!」とはやし立てられていた。その言葉をぶつけられるとオルカとマキーナは決まって一緒に真っ赤な顔をしたが、二人のうちどちらも拒否はしたことがない。そんな共通した態度が、なんだか通じ合っている気がしてオルカは心地がよかった。
そう。それだけ二人の距離は近かったのだ。
だがある日――そんな関係が壊れる事態が起きてしまう。
それを語るには、まずマキーナの生い立ちについて説明しなければならない。
マキーナはパライト村で生まれ育ったわけではない。元々はここから数百キロ離れた王都に住んでいて、マキーナが八歳の時にこの村へと引っ越してきたのだ。
家は父子家庭で、肉親はシルバークラスのベテラン冒険者である父親だけだった。
しかも、マキーナはその父親と血は繋がっていない――拾われっ子なのだ。
父親はかつて、王都の近隣で行われた未踏査迷宮の調査に参加し、パーティメンバーとともにその最深部へと一番乗りした。
そこで待ち受けていたラージゴーレムを仲間とともに命からがら撃退し、そいつが守っていた扉の向こう側へ足を踏み入れた。
その部屋にあったのは、巨大な透明の結晶で作られた壁面。
その結晶から向こうには空間が見えるが、その全てが透明の液体で浸されていた。
そして、その中には――赤ん坊が一人いた。
四方八方から触手のように伸びた無数のケーブルが、赤ん坊の全身のいたるところに刺さっている。そんな姿を痛々しく思った父親はなんとか中から出してやろうと考えて結晶壁を発砲したが、傷一つつかなかった。
だが結晶壁の近くの壁面にパネルのようなものを見つけ、それをアバウトに数度押すと、突如赤ん坊のいる空間を浸していた液体が引っ込んでいった。それから結晶壁がゆっくりと下に降りていき、とうとう赤ん坊の姿が外界に露わになった。
父親はその柔肌に刺さっていたケーブルを全て取り払い、赤ん坊を抱き上げた。
その後、父親はその赤ん坊を引き取り「マキーナ」と名付けて大切に育て始めたのだった。
――そう、マキーナは迷宮の中で拾われたのだ。
どうして迷宮の中にいたのかは分からない。だがそんな不思議な生い立ちを彼女は持っていた。
さらにもう一つ、彼女には不思議な特技があった。
それは――古代語を読む能力。
村の冒険者が迷宮からアリ型ゴーレムの頭部を持ってきて見せてくれたことがあったが、それに小さく刻まれた古代語をマキーナは「せいひんめい:ちかきょじゅうくけいらようがーどぼっと めいどいんちゃいな せいぞうばんごう128561332493380――」と読んで見せたことがある。
それだけではない、他のゴーレムの残骸を何度か見たが、それに書かれた古代語も次々と読み取っていったのだ。
周りの大人は「子供の知ったかぶりだろう」と微笑ましげに見ていたが、古代語を諳んじる彼女の声色には淀みがなかった。なので当時のオルカはそれを信じ、そしてそんな彼女を賞賛した。
迷宮の中で拾われ、古代語を読むスキルを生まれつき持っている――そんな普通の子供にはない非凡な要素を幼いオルカにはとても凄いことのように感じ、そして自慢のお姉ちゃんを持った気分になって誇らしかった。
オルカは嬉々として、マキーナの非凡さを友達に触れ回った。
悪気はなかった。自分と同じように「凄い」と感嘆して欲しいと思っていた。それだけだったのだ。
だがそんなオルカの浮薄な行動は――最悪の形で裏目に出ることとなった。
ある日、マキーナと二人で近所の子供達がやっていたかくれんぼに混ぜてもらおうと駆け寄った瞬間、彼らは突然遊ぶのをやめ、自分たち二人を避けるように何処かへ行ってしまった。
最初はただの気のせいだと思った。マキーナにかくれんぼをやらせると、予想もつかない場所に隠れるからいつまで経っても見つからなくなることが多い。それが嫌だったからだろう。そう考えていた。
だが次の日も、その次の日も、そのまた次の日も同じようなことが続いた。オルカとマキーナが近づくと決まって友達は何処かへ移動するのだ。
ある時、オルカはたまたまマキーナと同伴せずに一人で外を歩いている途中、遊んでいる子供達と遭遇した。
また逃げられるかと思ったが、予想は外れた。「ようオルカ、お前も一緒にやんねー?」そう気さくに声をかけて来てくれたのだ。これまでの忌避が嘘のように。
狐につままれたような心境になりつつも、オルカは今まで自分たちを避けていた理由をなんとか尋ねることができた。
すると彼らは使う言葉はそれぞれ違えど、同義にこう言ったのだ「お前じゃない。ハブってるのはマキーナだ」と。
その理由をさらに突き詰めて聞いた瞬間、オルカは金づちを後頭部にスイングされたようなショックを受けた。
原因は――オルカが軽々しく言いふらしたマキーナの出自だった。
自分は小さい頃、寝る前母によくおとぎ話の本を読んでもらっていた。その登場人物は巨大な桃の中から生まれたり、月からやってきたなどいずれも不思議な生い立ちを持っている。それと同じように奇妙なバックグラウンドを持っていたマキーナを、オルカはなんだか恰好良く思えたのだ。
しかし、他の子供達はそうではなかった。
気味が悪い――そう思っていたのだ。
「迷宮で生まれるのはゴーレムだけだ」「人間が生まれるわけない」「ゴーレムは虫とか動物の形をしてるらしい」「人間だって広く考えれば動物の一種だって父ちゃんが言ってた」「つまり、人型のゴーレムだっているはずだ」「だったらマキーナはその人の形をしたゴーレムなんじゃないのか」、幼い頭はそのように論理を展開していった。
もちろん周囲の大人たち、特に本当のゴーレムを知る地元の冒険者たちは可笑しげに笑った。こんな肌のぬくもりと柔らかさを感じさせるゴーレムがいるはずがない、と。
だが子供達は本気で疑いを持っていたのだ。古代語が読めるという稀有な特技も、その信ぴょう性と不気味さを高めるための燃料でしかなかった。
マキーナに対する子供達の対応は、日が経つにつれてシカトの域を脱していった。
近づいた瞬間、子供達は決まって彼女に石を投げつけるようになった。
子供達が木の枝で武装し、集団でマキーナを追い掛け回したりしていた。
その他にも、あらゆる行為でマキーナは心身ともに痛めつけられていった。
子供達は「退治」と称していたが、女の子一人を集団で責め立て、痛みと痛罵を浴びせるその行為は完全にイジメだった。
元気いっぱいだったマキーナは日に日になりを潜め、やつれたように消沈することが多くなった。
そんな彼女を、オルカは見ている事しか出来なかった。
できることなら男らしくマキーナを庇うように立ち、いじめっ子に果敢に立ち向かって行きたかった。だがまだクランクルス無手術を学んでいない当時の自分は恐ろしくケンカが弱かった。立ち向かったところで一度も手を出せないで終わりだ。そんなのは惨めだし……痛いだけだ。
彼女は会うと、決まって泣きながらすがりついてくる。オルカも何も言わずに胸を貸し、ただ黙って背中をさすってなだめるくらいしかしなかった。
見捨てるでもない。かといって助けるでもない――そんな中途半端な立ち位置をオルカはたゆたい続けた。
しかしとうとう、それが許されない局面に遭遇する事となる。
――そう、それこそがずっとオルカの心を苛んできた「あの日」だった。
夕方。
よく遊びに使われる小さな公園。
その中央に彼女――マキーナはいた。
擦り傷で血の滲んだ膝小僧を地面に付き、両目を擦りながらしゃくりあげている。両膝の間では涙で水たまりができかけていた。
そして、その周囲を取り囲む子供達。
「近寄って来んじゃねぇよ、機械女!」「人のフリして何企んでやがる!?」「村から消えろメカ野郎!」「石車の材料にすんぞ!」、罵詈雑言を浴びせ、時に投石する。
違う、違う、違う。マキーナはしきりにかぶりを振った。
不意に体格の良い男の子が「てめぇ、この手の中にミサイルでも仕込んでやがんだろ? オラ出せや!」と言い、マキーナの片腕を乱暴に掴み上げた。
「嫌ぁ! やだっ! 離して!!」
マキーナが泣き叫びながら身を揺らす。だが男の子は離そうとはしない。
その男の子の表情にはどこか愉悦が混じっている。見ると彼以外にもそういう顔をした者が何人もいた。おそらく、みんながイジメているのを見て祭り感覚で参加したクチだろう。本当に彼女がゴーレムだと信じているわけではなさそうだ。楽しいからやっている、そんな感じだ。
――オルカはその様子を、少し離れた木の陰から覗いていた。
そして、連中のやっていることに対して、強い憤りを抱いていた。
でも、義憤に駆られたところで自分なんかに何ができる?
一対一でも怪しいのに、あんなに大勢に向かって行ったって勝ち目なんか全くない。ボコボコにされて醜態を晒すだけだ。いや、それで済めばいい。もしかしたら次の日から自分もマキーナと一緒にいじめられるかもしれない。
そのように木陰で押し問答している時だった。
――マキーナと、目が合ってしまった。
生まれて初めて、彼女の視線に怯えた瞬間だった。
切なそうな、それでいて何か言いたげな目。そんな眼差しが取り囲む子供達の隙間を縫って、真っ直ぐ自分へ注がれている。
我知らず歯の根が合わなくなってくる。
今の彼女の視線は、とても耐え難いものだった。イジメが終わるまでここで傍観者を決め込むほどの持久力には自信がなかった。
――何やってるんだボク、早く行けよ。
――でも、行ったって敵うわけないよ。
――好きな子があんな目にあってるんだぞ?
――行ったって助けられない。仲良く一緒に殴られるだけだ。
――お前それでも男かよっ?
――怪我人が増えるだけで非合理的だって言ってるんだ。
――合理的? そんなつまらないことを気にしてる場合じゃないだろ。
――つまらなくなんかない。マキちゃんの目の前でみっともない姿を晒したいのか。
――なんだと?
――ボクが行ったって、奴らに敵わないのは明らかだろ。それを分からずに突っ込んでボコボコにされて、膨れ上がった顔をマキちゃんに「カッコ悪い」とでも思われたいのか。
――それは……
助けたいという思いと自己保身の感情。自分の中でその二つが闘うが、時間が経つにつれて後者が心を侵食していく。
だがその時のオルカには分かっていなかった。ここで立ち向かわないことほどの醜態はないのだと。保身に走れば走るほど、それは醜態になるのだと。
結果的に、オルカは最大の醜態を晒してしまった。
逃げてしまったのだ。
衝動的な行動だった。
踵を返し、マキーナの視線から避けるようにその場を走り去っていた。
走って、走って、走って、走って……自宅のベッドに飛び込んだ瞬間、ようやく自分が逃げてしまったことに気がついた。
体温が氷点下に達したような悪寒に襲われる。
――やってしまった。
―――逃げてしまった。
――――見捨ててしまった。
自分のお姉さんのような存在を。そして、大好きな女の子を。
後悔、自責、呵責、悔悟、悔恨、罪悪感。それらの負の意識が雪崩よろしく襲ってくる。
ボクは、最低だ。
自分勝手だとは分かっていても、涙が際限なく溢れ出てシーツを濡らしていく。
あそこで連中に飛びかかって返り討ちにされるよりも、今のように逃げ出してしまう方がよほど格好悪く、そして最低なことなのだ。オルカは今更ながらそれに気がついた。
だが、後悔してももう遅い。時間は戻ってはくれないのだ。その日オルカは夕食を食べず、一睡もせず、ひたすら自分自身を責め続けた。
そして翌朝、生まれて初めて徹夜をしてしまったため、眠気を引きずりながら外ヘ出ると、マキーナとばったり遭遇してしまった。
オルカは眠気も忘れて思わず身構える。軽蔑されると思った。虫を見るような目を向けられ、思いつく限りの言葉を総動員して罵られる。そう思っていた。
だが彼女は「おはようオル君。今日もいい天気だね」と、笑顔で挨拶してきたのだ。まるでいつものように。
オルカは呆然とした。なぜだ? なぜ彼女はこんな普通に接することができる? 昨日見捨てられたことを忘れたわけじゃないだろう?
昨日のことが夢であるという仮説を立てたが、一秒足らずで否定された。痛めつけられるマキーナの姿、泣き顔、そしてこちらへ向けてきた眼差し、それら全ての映像はしっかりと脳裏にこびりついていた。そもそも一睡もしていないのだから夢など見ようはずもない。
だというのに、目の前の彼女は好意的な態度を一切変えず、なおかつ「これから一緒に遊ばない?」と手まで握ってくれている。
いつもは当たり前にその手を握り返していたのに、今ではそれがひどく身の程知らずなことのように思えた。
……薄々気づいている。彼女が自分に弟分以上の気持ちを向けてくれていることに。
でも、その気持ちに答える資格は自分にはない。いや、そもそも隣に存在することすらはばかられる。当たり前だ。見捨てて逃げるなんて最低なことをしたのだから。
自分のような意気地なしでは、きっとまた同じことを繰り返してしまう。
だから、オルカはその手を振りほどき、その場から駆け去った。
――それ以来、オルカはマキーナを徹底的に避け続けた。
かけっこでは勝てないので、彼女の姿を発見したら見つかる前に逃げた。あるいは日が沈むまで一定の場所に隠れたりしていた。
そうやって、触れ合う機会を徹底して潰した。
嬉しいような悲しいような、その努力が功を奏し、二週間逃げ続けた時点でマキーナが来なさそうな場所がなんとなく分かるようになっていた。そうして遭遇しない期間はさらに続いた。
だがそんな最中、とんでもない事が起きた。
マキーナの父が、突如病で息を引き取ったのだ。
十歳の娘の父親と名乗るには、彼は少し年を重ね過ぎていた。時々具合の悪そうな所を見ていたためその身を案じていたが、まさかこのタイミングで他界するとは思わなかった。
当然、マキーナは外出せず一人泣いていた。その様子をこっそり見たが、いじめられていた時とは比べるべくもない、悲痛な泣き顔だった。
流石に不憫に思ったのか、子供達は父親が亡くなって以来マキーナいじめをやめていた。
だが、自分は泣いている彼女に慰めの言葉一つかけられなかった。そもそも近づく勇気がなかったのだ。
本当は言ってあげたかった。「大丈夫」「泣かないで」「ボクがマキちゃんのことを守るから」「ずっとずっと一緒にいてあげるから」「だから寂しくないよ」そう言ってあげたかった。
でも、それは出来なかった。自分にはそんな資格はなかった。
それからすぐのことだ。貴族の一つにしてクラムデリア兵器術の宗家である、クラムデリア家の当主が村を訪れたのは。
マキーナの父親とクラムデリア家当主は、身分を超えた友情関係にあった。なので彼の訃報を聞いて訪れた当主がマキーナを哀れに思い、家に引き取りたいと言ってきた。
当然、彼女は逡巡した。今まで家族ではなかった人たちを家族と呼ぶことになるのだから迷いもするだろう。当主も「強制はしない」と考える余地を与えてくれていた。
だが彼女は孤児状態だ。今の状態で生きていくことなど現実的に不可能。マキーナの引き取り手となることが可能かどうか聞くと、村人たちは皆例外なく苦い顔をしていた。引き取り手が向こうから現れてくれるならば、渡りに船だろう。
マキーナはクラムデリア家の養女となることに決めた。
それを決めた翌日、彼女は当主の用意した石車に乗ってパライト村に別れを告げた。
結局、最後の最後まで、オルカは彼女と一言も言葉を交わさなかった。
でも、これでいいと思った。
これで彼女は特権階級の仲間入りだ。満ち足りた生活と、約束された将来。自分のような小汚い野良犬が近づくなど望むべくもない。
彼女と自分の道が重なることは永遠になくなったのだ。
彼女との別離を悔いたりはしない。
オルカがやるべきことは、もう二度と彼女の時のような醜態を晒さぬよう、勇気を持つ事だと分かっていた。
オルカの過ちは全て、その勇気の無さが招いたことだった。
だから、強くなりたいと思った。
それが、勇気のなさで傷つけてしまったマキーナへの、せめてもの償いになるような気がしたのだ。
そんな決意の最中、タイムリーに母がある英雄の話をしてくれた。
――拳の勇者、ガイゼル・クランクルス。
鋼鉄の怪物ゴーレムに生身で立ち向かい、拳一つで迷宮を駆け巡った太古の英雄の武勇伝の数々。
それを聞いたオルカは、天命を与えられた気がした。
ゴーレムのことは、村に住む冒険者から聞いたためある程度知っていた。人間を一発で木っ端微塵にできる武器を持っていることも。
考えただけでゾッとする。そんな存在と戦う冒険者たちが、とても勇敢に思えた。
しかしガイゼルは、その恐ろしい怪物相手に拳一つで立ち向かったのだ。
それは、この世の何よりも勇気に溢れた行いのように感じた。
そう思い立ってからの行動は早かった。オルカはガイゼルとの類似性を求めて、彼の創始したという武技、クランクルス無手術の道場を探し始めた。
だがさらに情報を集めると、クランクルス無手術はエフェクターの登場以来すっかり零落し、本部以外の全ての支部道場が閉鎖されてしまった事が分かった。それを聞いた時は青ざめそうになったが、天の采配か、その本部はパライト村から四キロほどの距離の場所にあった。少し無茶をすれば自分の足で行けない道のりではなかった。
オルカはなんとか母の許可を得ると、貢物を持って早速その道場へ入門を願い出た。素質を量る試練のようなものをやらされるのではないかと最初は不安だったが、門下生の少なさゆえか、むしろ快く迎え入れられた。
そうして、オルカは修行を開始した。
修行は想像以上に厳しく、時に泣きそうになったこともあったが、カシュー含む兄弟子たちの支えがあったおかげで耐え抜くことができ、とうとう奥伝『瘋眼』を授かるまでに至った。
そして時が経ち、十五歳の誕生日を迎える。
オルカは晴れて念願の冒険者となり、迷宮に潜り始めた。
ゴーレム相手に最初は悪戦苦闘しながらも、だんだんとその姿や攻撃を見るのにも慣れていき、そして順調に倒せるようになった。
冒険者になって一年後、オルカはさらに上を目指そうと、迷宮都市アンディーラの未踏査迷宮調査に参加することを決意。
そうしてこの街に単身やってきて、八年ぶりにマキーナの成長した姿に出会ったのだ――。
「…………オル君、あなた……」
――これまでの軌跡を聞き終えた目の前のマキーナは、目を丸くしていた。
一体どういう気持ちを抱いているのかは分からない。
だが、少なくとも肯定的な反応ではなかった。
「…………その時の事、ずっと気にしてたんだ」
マキーナは切なげに呟いた。
「ばか……バカだなぁ、オル君。そんなことで自分を追い詰めて……自分で自分をいじめて…………本当、バカだよ。死んじゃったらそれこそ無意味じゃん。私は、そんなこと気にしないのに。そんなこと忘れて昔みたいに「マキちゃん」って呼んで、仲良くして欲しかったのに」
「それじゃダメなんです」
オルカは追い立てられているような口調でそう断じた。
「貴女の好意に甘えたらダメなんです。もし甘えたら、またあの日みたいな事を繰り返すかもしれない。もう、そんなのは嫌なんです。だからボクは、強くならなきゃいけないんです」
「オル君……」
彼女は心苦しそうに目を細める。
オルカは一刻も早くマキーナに離れて欲しかった。だって、そんな悲しそうな顔をもう見たくないから。そうさせているのが自分だと思うと、余計に辛くなるから。
だが不意に、マキーナは複雑そうな笑みを浮かべて再度口を開いた。
「でも、あの日の事をずっと気にしてたのは――私も同じかな」
オルカは虚をつかれたような気持ちになる。
『気にしていたのは、私も同じ』
それはやはり自分が見捨てて逃げ帰ったことに恨みを持っているということだろうか――一瞬浮かんだその予想は、目の前のマキーナの表情を見てすぐに消えた。
憎しみなど一欠片も見受けられない。
あるのは、まるでかけがえのない宝物を見るような眼差し。その宝珠のような濁りのない漆黒の瞳が、一層高貴に輝いて見えた。
場違いであると知りつつも、胸が高鳴った。
「私がこんなに強くなれたのはね、オル君のおかげなんだよ」
だがその心地の良い動悸は、それ以上の驚愕の鼓動でかき消されることとなった。
ボクの、おかげ…………?
「いじめられた頃のことは、私もちゃんと覚えてる……今まで仲良く遊んできた子達が、突然化け物でも見るような目を向けてきて、仲間はずれにしたり石を投げつけてきたり、木の枝で叩いたり…………みんなすごく怖くて、それにショックだった。友達って思ってたのは私だけだったのかな、って。でも、それ以上に辛かったのは――オル君が苦しそうな顔で私を見てたこと」
マキーナがその苦痛を表現するように、胸の前で両手を握り合わせる。
「「助けたいけど、どうすればいいのか分からない」、泣きつく私を見る目からはいつもそんな気持ちが感じられた。極めつけはあの公園での事。私と目が合っちゃった木陰のオル君、これまで以上に苦しそうな顔してた。まるで私のせいで、いじめられてないはずのオル君まで苦しめてた気がしてすごく嫌だった。だからもうそんな風に苦しめないために、いじめられないように、理不尽を強いられても真っ直ぐ立って歩けるように、強くなりたいって思ったの」
彼女はさらに語り続ける。
「クラムデリア家に引き取られてからも、決して楽とは言えない毎日だった。義姉様たちは平民からポッと出の私が目障りで、手酷いいじめをしてきたの。それも義父様が気づかないよう巧妙に。手段も村の子みたいに直球じゃなくて、もっと陰湿なものだった。本当のお父さん所に逝きたいって思ったことも、一回だけだけどあった」
オルカはあらゆる意味でショックだった。
貴族の一員になったからといって、彼女が決して楽な日々を過ごしてきたわけではなかった。彼女なりの苦労があったのだ。「満ち足りた人生」などと世迷言を考えた昔の自分を殴ってやりたい気分だった。
それに彼女もスターマンと同じように、元々貴族ではなかったからという理由だけで冷遇されたのだ。もしかすると貴族の大部分の人間は、自分が思っていた以上に人情に欠ける者たちなのかもしれない。
「でもね、もし頑張って生きて、それで大人になれたら、動き回れる範囲だって増える。そうしたら、いつかまたオル君に会えるかもしれないって思ったの。そしたら不思議と力が湧いてきた。頑張ろうって気持ちがすごく強くなったの。いつかまたオル君に会えた時、その時はすごく強くて綺麗になった私を見せてあげたいって思えたの。だから私頑張った。家伝のクラムデリア兵器術を一生懸命練習して強くなって、義姉様たちを見返していじめをやめさせた。それからさらに修行して、免許皆伝して、それから冒険者になった。それでいろんな場所の迷宮を巡りながらオル君を探し続けた。そして――それがやっと叶ったの」
そう言って、マキーナはこちらを直視してきた。
視線が固定されていて、全く余計な動きがない。真剣さが容易に伺える眼差しだった。
「オル君は……私のことをどう思ってるの?」
躊躇いがちで、その一方で聞かずにはいられないといった声色でマキーナが問うてくる。
「もう一度言うよ。私はオル君が好き。弟分としてじゃなくて、一人の男の人としてあなたの事が大好きです。オル君は――私の事が好きですか?」
「…………ボクは」
オルカの唇と指先がワナワナと震え出す。
今まで懸命に築き上げた心の城壁にヒビが生え、それが血管のごとく無限の広がりを見せていた。
「もしもオル君が本当に私のことを嫌いだって言うなら、すっごく悲しいけど、受け入れるよ。でも、もしも……本当は私のことが好きなのに、過去のことに負い目を感じてそれを押し殺してるっていうなら――そんなのは、嫌だよ」
マキーナの声が最後の方で澱んだ。
泣いていた。
本当の思いを我慢して生きている自分を想像しただけで涙が止まらない。そんな感情がはっきりと読み取れる泣き様だった。
そう、彼女は、泣いていた。
――オルカは凄まじい既視感に殴りつけられた。
この状況は、あの日とよく似ていた。
今の自分は、泣いているあの娘に歩み寄ってあげられなかった、昔の自分と一緒だった。
昔の自分が痛みと醜態を恐れて立ち向かえなかったように――今の自分は、臆病さで彼女を昔のように見捨てる可能性を恐れてしまっていた。
八年という時を経て、あの頃のシーンが違う材料で再現されていた。
――お前は一体どうしたいんだ、オルカ・ホロンコーン。
ここでまた逃げ出したいのか?
それとも何も考えずに、彼女への好意に素直になってその肩を抱き寄せたいのか?
――否。
その二元論では足りない。
もう一つの選択肢を作り、それを選びたい。
茨の道となるかもしれない。でも、本当の意味で自分の願いが叶えられる選択肢を。
オルカの体を支配していた震えが――消えた。
不思議と、気分は悪くない。
迷いのない瞳でマキーナと視線を合わせる。
そして、開口した。
「クラムデリアさん。ううん――「マキちゃん」」
マキーナは深々と息を飲んだ。
照れる気持ちを抱きながらも、オルカは先の言葉を紡ぐ。
「ボクも、マキちゃんの事が好きだ。同じようにお姉ちゃんとしてじゃなく、「愛してる」っていう意味で」
「――――!」
大きくしゃくりをあげる声とともに、目元にぶわっと一気に涙液が溜められた。
白くなめらかな手指で雅に口元を押さえ、雨のように雫を目からこぼす。だが先ほどまでの悲痛な涙ではない。嬉しさが流させたソレだということは一目瞭然だった。
そんな彼女に若干の申し訳なさを感じつつ、オルカはその先を口にした。
「でも――今はマキちゃんの気持ちに応えられない」
マキーナが唖然とした。
彼女は何も言わなかったが、唇だけが動く。「どうして」と。
オルカはそれに答えた。
「ボクはまだ全然弱い。今回「伏魔殿」で散々やられて、それを嫌というほど思い知らされたよ。あんなんじゃ、マキちゃんを守れない。守れる自信がない」
「そんな、私は守って欲しいわけじゃ――!」
「うん知ってる。でも、これはボクの意地なんだ。だから、待ってて欲しい」
「え……?」
不意をつかれたような表情で、マキーナは押し黙る。
「ボクまだアイアンクラスだけど、これから先もっと頑張ってランクを上げる。頑張ってマキちゃんと同じくらい――」
オルカは一旦言葉を切った。
いや、同じくらいじゃダメだ。
それでは覚悟がまだ足りない。
もっと、もっと風呂敷を広げてやるんだ。
「ううん、マキちゃんよりも上――クリスタルクラスになってみせる」
そんなオルカの大言壮語に、マキーナが信じがたいといった風なリアクションをしつつ、
「そ、そんな! 無茶だよ! クリスタルはゴールドよりも、ずっとなるのが難しいんだよ!? 「神の領域」って呼ばれてるくらいなんだから!」
「そうだね。無茶なこと言ってるって自覚はあるよ。でも、そうしないと嫌なんだ。それくらい強くなりたいんだ。だからそれまで待ってて欲しい。それで、その、ボクがクリスタルになれたら、そ、その時は…………」
オルカの語の流れに断絶が生じる。
これから言おうと思っていることを考えると、それだけで火がつくんじゃないかってくらいに顔が熱くなる。鼓動も天井知らずに高まり続ける。
だが、やがてオルカは腹を括って言い放った。
「マキちゃん――――ボクと結婚してください」
転瞬、一際強い潮風が心地よく肌を叩いた。
マキーナは目を皿にして、硬直していた。
四肢どころか、視線すら全く動かさず、物言わぬ彫像と化している。
そんな彼女の様子に不安を感じたオルカは、照れがあっという間に引いてしまう。
今更ながら、自分が無茶苦茶な条件を出した事に気づいてしまった。
「ダメ……かな?」
恐る恐る返答を求めた。
きっと普通の女性ならば、こんな手前勝手な条件に対して迷わずかぶりを振ることだろう。
だがマキーナは、固まった表情をみるみる明るくしていく。その様子はつぼみが花開く光景を彷彿とさせた。
やがて――満開となった。
「はいっ。待ってます、いつまでも」
マキーナは輝くような笑顔を浮かべ、幸せそうにそう頷いた。
刹那、オルカの鼓動が今までにない勢いで跳ね上がった。
今まで彼女の笑った顔を何度も見てきたが、これほどまでに綺麗で、心を奪われるソレは始めて見た。
きっと自分は、今の彼女の笑顔を二度と忘れないに違いない。
マキーナが勢いよく、オルカの胸に飛び込んで――もとい、突進してきた。
だが昔と違い、今は倒れずに受け止めることができた。
すぐ前にあるマキーナの顔が、くすぐったそうな小声で言う。
「えへへ。昔はあんなに可愛かったのに、今じゃすっかりたくましくなっちゃって……」
そのまま、こちらの腰に手を回してきた。
オルカも彼女の背中に両手を回し、より深く抱き寄せる。
彼女の体温を感じる。
とても心地よく、そのまま眠ってしまいそうだった。
「言っておくけど……私すっっっっっっっっっっっっっっっっごく執念深いよ?」
マキーナが言葉を発すると、吐息がかかってくすぐったい。
「うん、知ってる。幼馴染だし」
「もうオル君のこと、絶対逃がしてあげないんだから」
「うん。むしろ束縛してほしい」
「おばあちゃんになっても、杖付きながらずっとずっとしつこくつきまとっちゃうんだから。もし死んじゃってもネコかなにかに取り憑いて、オル君のお家に居着いちゃうから」
「後半はちょっと怖いかな」
「いじわる」
くすり、とマキーナが笑みをこぼす。
そんな愛しい女性に、オルカは再度、大事な言葉告げた。
「――愛してる」
「うん。私も……」
互いに唇を重ね、そして離す。
それからついばむように、何度も、何度も、何度も重ねる。
――夕日が差すまでの間、二人は時間を忘れて数え切れないほどのキスを交わした。
読んで下さった皆様、ありがとうございます!
UPまでもう少しかかると予想してたのに、まさか僅かな空き時間で六千文字も埋められるとは思わなんだ……
いつもこのくらい書ければいいのに(´・_・`)
さて、このSSも佳境に突入しつつあります。
あと第四章を一、二話ほどUPしたらラストストーリーに移行する予定ですので、お待ちのほどを……