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ー2015年ー
大学構内にある私に与えられた一室で私はコマとコマの合間を縫って
私は昼食をとっていた。
コンコンコン
規則正しいノックが私室に響く。
「どうぞ」
私はドアの外にいるであろう人物に声をかける。
失礼します。という一言と共に入ってきたのは聡明そうな青年だった。
「心理学科一年の堂島泰我です、お時間があればご相談があるのですが・・・」
相談?この私に??不思議なものだ。
相談であるのならそれこそ学内に設置してあるカウンセリング室にでも行けば良いだろうに。
「丁度昼食を食べ終えて暇していた所だ。良いだろう、相談とは何かな?」
我が学校の善良な生徒の為だ相談ぐらいなら乗ってやろう。気が向いたらだがね。
「教授は担当なさっている自然科学以外にも様々な分野に精通していると聞いています。それに入学式の時に夢に興味があると仰っていたのでお伺いしたいことが」
「夢に関して?悪夢でも見るのかな?快眠方法でも提示しようか?」
「いえ、悪夢みたいなものですがそれほど寝覚めの悪い夢ってわけじゃないんです。ただ不思議な夢で。」
「ほぉ、不思議な夢とは?」
「毎年決まって見る夢があるんです。体験していると言っても良いほどにリアルなのでずっと前から気になってて・・・」
「明晰夢ではないだろうか?」
「明晰夢?」
「あぁ、知らないか。明晰夢っていうのは簡単に言ってしまえば自分の欲求の通りに夢の中を変えられるんだ。」
「なるほど・・・でも違うと思います。」
「何故違うと思ったのかね?」
堂島は少しの間を置いて答えた。
「その夢はある行動をしないと覚めないんです。」
「・・・ある行動とは?」
「あるものを探してそれに触れるんです。それが覚めるための条件なんです」
夢の中であるものを探しそれに触れることで覚める夢?
「不思議な夢だな」
「はい、だからこそ教授にご相談しに来たんです。」
「ふむ・・・では私は何について答えればいいのかな?」
「・・・じゃあまずこの夢はなんの意味があるのでしょうか?」
「もう少し詳しく知ってから答えるべきであろうが・・・
そうだな過去のトラウマだったり潜在的欲求を表しているのではないだろうか?」
「でもトラウマとなるようなことなんて体験してないんですよね・・・」
「ふぅむ、謎だなぁ」
私は顎を擦りながら答えた。
彼は夢についてどうにもはっきりと喋らない。
答えは聞きたいが詳しくは喋りたくない。
彼はジレンマを抱えているようだな。
結局彼の夢については分からず終いで
堂島の助けとなることは出来なかった。
「すまないな、あまり力になれなくて。」
「いえ、俺としては相談に乗ってくれただけでも充分です。少し気持ちが楽になりました」
「そう言ってくれると助かるな、まぁ君の夢についてはこっちでも少し調べておこう」
「有難うございます。」
「授業か?」
「はい、次は必修科目があるのでそろそろ失礼させて頂きます」
「頑張ってくるんだぞ。」
堂島はこくりと頷くと急ぎ足で去って行った。
この時教授、シリウスは堂島が鍵を握る人物になるとは、異常気象の原因を知る手がかりとなるのは全く思いもしていなかった。