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koimayuです。
······、うーん特にこれと言った話がないので続き、行きましょうか。
それでは、再開です。
「え、それ本当?」
中学2年になって半年は経過した頃、ある噂が流れてきた。
『葛野に彼氏が出来た』
小百合はそれなりに美人だったことに加えて、それくらいの思春期の少年・少女はそういう恋愛に関しては興味津々だったから告白が行われた次の日には噂になったようだ。僕が小百合のいる教室に行くと、恋人となったその二人は随分と持て囃されていた。彼氏の方はともかく小百合の方はそんな風にされることをあまり好んでいるようには見えなかったけど、それでも幸せそうな表情が垣間見えたような気がした。
ただ、そんなことを思ったのは初めの一瞬だった。自分がアタックを一度たりとも出来ていない内に、小百合はある意味手の届かない場所に行ってしまった、そんな風な軽い絶望に陥ったのはすぐだった。僕自身の甲斐性なしな性格の行く先がそこなのだと、気づかされてしまった瞬間だった。
「お前、良かったのか?」
友達に言われた。そいつは俺が小百合に好意を抱いていることを知っていた。
「あー、いいんじゃないの」
僕は、あくまで冷静を装った反応をした。けれど、そいつにはそんな嘘が通じていなかったことように思える。やがて、僕はその場を後にした。バトルのリングに立つのを拒んだ。それは自分が弱いことを理解していたから。そして、何より小百合には僕では釣り合わない。そんな自己否定の心情が僕を支配していた。けど、実際のところ、そうなんだろうって思う。この前も「平凡なお前こんな美人の奥さんを手に入れやがって」と小突き回されたし。
ポカッ。
うぅー。頭に小百合の軽い拳骨が落とされた。
「あなたは私を幸せにしてくれている。それだけでも十分に格好良いと思うわよ」
小百合はそう言って慰めてくれる。
まあ、ただいずれにしろ逃げたのは間違いがない。それが正しかったのだろうか。正しくなかったのだろうか。僕には、それから10年近く経っている今でも明確な答えは出せていない。けれど、最近は正しかったのだと思うようになってきている。そう思う理由の1つがその騒動の余韻が冷めきらない内に起こった。
『葛野が別れた』
その噂が流れてきたのはまだ告白騒動から1週間が経ってもいないある日のことだった。