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koimayuです。


今回はいつもに比べて、少し長めです。


それでは、再開です。


 


 中学へ進級する入学式の日は、式以外に掃除とホームルームがあるだけだ。12年生と6年生では小学校から進学校として教育されていた僕らの間には少なからず差が存在していた。でも、今から考えると6年生の方が中学編入試験を経ている分だけ賢かったように思う。いや、僕らも受けたのは受けたのは受けたんだけどエスカレータ式に進級することは小学校入学当初から元々決まっていたから合否に関わらず中学生になった。ちなみに、テストには受かっていたから安心したけれど。


 知っての通り、僕らの学校は市街から離れていて交通の便から考えると非常に立地が悪かった。だから、大抵の生徒が電車で通っていた。1時間にたった2本、多い時でも4本で快速という文字なんか見たことがなっかたというくらい不便すぎる、そんな絶望的な路線だったんだけどね。


 そういうわけで、授業が終わって明日の予定とかが担任から教えられるホームルームが終わると駅まで歩いていくと電車が来るまで大体10分くらい余裕ができるように学校側が設定していた。


 だから、入学式の日もホームルームが終わって駅に着くと幾らか時間があった。僕は小学校の時から仲の良かった奴とベチャクチャと下らない事を喋りあっていた。まあ、それでやっぱりその話が出てきたんだよね。女の子の話が。他の奴らは、あの子可愛かったとか、あの子の胸が大きいとか、そんな話をしていた。すると、僕だけが会話に参加していないことにそいつらは遅からず気付いたわけ。


「おい尚和なおと、お前はどうなんだ?」


 どうなんだ?とはもちろん誰か気になる女の子はいたか?っていうこと。


 だけど、その時の僕はそのセリフが辛うじて聞こえるくらいで反応することができなかった。金縛りの軽いバージョンのようなものに拘束されてしまっていた。


 肌は雪のように真っ白で、肩くらいまでの黒髪はその肌とのコンビネーションが絶妙なくらいに似合っていた。現代風の女の子が憧れるようなめちゃくちゃ細いスタイル、ではなくてどちらかと言えば少しふっくらしているかな?というくらいのレベルでそれが僕に好印象を与えた。


「お~い尚和、どうしたんだ?」


 僕が話しかけてきた奴の肩越しの空間を見つめているのに気が付いて、目の前で手を振ってくる。


「お前、あの子知ってる?」


 その女の子は幸いそんなに遠くに行かなかったので、軽く指を差すだけでわかる。


「うん?あー、あの子は確か……葛野くずの 小百合っていう名前だったかな?」


 僕が問いかけた奴は顔と名前を女子ならばすぐに覚えてしまうという情けない特技を持っていた。


 まあ、今回はそのおかげで小百合の名前をすぐに知ることが出来たから意外と役に立つのかもしれないね、と笑う。小百合も少しばかりそいつのことを哀れんでクスリと笑う。だって、未だに結婚していないし。まあ、その特技が大方邪魔しているのかもしれない。


「ふうん、尚和ってああいう子がタイプなんだ。へ~」


 そんなことを言って僕の脇を突っついてくる。


「え、いやそんなんじゃない」


 図星だったので咄嗟に動揺してしまったのは言うまでもない。周りの奴らから見ればバレバレだったに違いない。


「ふーん、じゃあ言い触らされても大丈夫だよな~、LINEとかで」


 イジッてくる友達に対抗するのは本当に大変だった。ちょうどホームに電車が入って来たから話を反らせることができたけど。何にせよ、これが僕と小百合の初めての、遭遇だった。





 朝御飯を食べ終わって、美澄はエレクトーンを弾いている。まだ3歳なって間もないから文字を書くことが出来るようになる年齢なのだけど楽譜の音符はもう既に読むことができていて、こうして暇があれば弾いている。右手だけなら耳の感度がとても良いのか、僕が弾いているのを聞いただけでエレクトーンを弾くことができる。またほとんど間違っていないことも親ながら驚いているのだけど。


 だから、娘を見守りながら親はまったりと寛いでこうして今朝の続きをしているのだった。


 


「それにしても、小百合がお嫁さんになってくれる人なんて思ってもみなかったな」


 うーんと伸びをしながら小百合が言う。


「私もそもそもそうよ。尚和が私を迎えてくれるなんて」


 幸せな笑顔を僕に向けてくれる。小百合が幸せを感じてくれることが僕にとっての幸せだから、それは付き合い始めた時から今も、そしてこの先も決して変わらない。って何か自分でもクサいなって思う。でも、本当の気持ちだから、まったく恥ずかしいという思いは無い。








 運命なんて、本当にわからないものだ。僕と小百合が付き合うまでにも越えなければならない数々の困難が待ち受けているなんて、誰が想像できただろうか。それでも僕はその道を進みたい、そう決心したから現在いまに至ってるのかもしれない、少しばかり格好よく振り返ってみるのだった。










突然、「尚和」という名前が出てきましたが、

主人公の名前です。分かりにくかったかもしれませんので、注釈を入れました。


基本的に一人称視点で書き、個人名は「小百合」のみで構成しています。



今日はここまでです。


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