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初めまして、koimayuです。
この作品は、私が執筆している「俺恋」の考案中にふと思い付いたものです。
主人公の僕がある日、小百合に聞かせてほしいと言われて回想しながら話したものです。
基本的に回想録という過去の話がメインとなっていて、所々に現実の話を挟んだ文章構成にしています。
それでは、回想録をスタートします。
僕が初めて彼女に逢ったのは中学1年の時だった。雪のように綺麗な肌に艶やかで程よく伸ばされた黒髪。胸は控えめの方で良い具合に括れた腰。その姿を見たとき、僕は胸の当たりが疼くのを微かに感じた。その時は恋という自覚はまったく無くて、ある意味新鮮味を感じていたのだと思った。
新鮮味というのは、僕の過去に関わっている。僕が通っていた小学校は私立で、小学校だけでなく中学、高校までをも完備している進学校だった。小学校から入った生徒は所謂エスカレータ式で高校にまで進級する。
だから、学生生活12年の内の半分は毎日同じ面子と会うことになる。さらに言うと、中学あるいは高校からへ編入学してくるメンバーはいるので生徒が増えるものの当然のことながら減ることはない。つまり、小学校からのメンバーとは12年間ずっと会い続けることになるのだ。正直な所、見るのは飽きたなんて思い、言い合ったこともあったものだ。
小学校が私立だったので公立の小学校とは異なり、歩いて行けるような距離ではなかった。毎日、登下校だけで2時間は悠にかかった。加えて、進学校だったから授業の終わる時間は遅く、土曜日までの繰り返しだった。家庭でも習い事が毎日、月曜日から日曜日まで水泳や書道、ピアノあるいは算盤が途切れることなく日程に組み込まれていた。極めつけは進学校ということで宿題は多く、親は習い事が終わると先のことまで勉強させようとした。その時は世間から見ればあり得ないかもしれないが、ゲーム機というものを知らなかった、と言うよりは興味がなかった。勉強を泣きながらこなしたこともあった。小学校の低学年で中学3年の漢字を覚えさせられた時はどうして覚える必要があるのかと疑問に感じていた。でも、覚えなければ説教が降りかかり、夕食も食べられないこともあった。とまあ幼少時代の辛かった記憶を書くのはこれくらいにして······補足しておくけど別に親に対して怒っているわけではない。先取りしていたおかげで漢検を踏破して英検もそれなりに持っているのだし良い大学に入れたのだから。最もそう思うようになったのは大学に入った頃だったけれど。
話が脱線してしまったけど、そういうわけで近所の子と遊ぶというような経験は残念ながらまったくなかった。なので、友達であり僕が知っているという学校の同級生だけだった。だから見飽きるようになるのは理解してくれると思う。
そんな可哀想と今の友達にも言われる学生生活の半分を過ごしていた僕だったけど、その六年間でも好きな子はできていた。その子とは幼稚園からの幼馴染みで僕達も仲が良かったし、親同士の付き合いで二週間に一度ほどその子の親に僕の親が招かれて僕も行ったのだけど、その女の子と一緒に遊んだときは本当に楽しかった。
けれど、小学校の高学年になるに連れて自分の心がある程度理解できるようになった頃、その女の子に僕が向ける「好き」が恋愛的に好きではなく友達として好きなのだと気が付いた。だから勿論のことながら告白することなんてなかった。ちなみにその子は今ではとても美人なことで有名な内科医としてになっている。
「その子に告白していたら、逆輿でも起きていたのかな······痛い、痛い!!ゴメンって、小百合」
いずれにしろそんな過程は成り立つははずがなかったのだけど。別にお金目当てで結婚するなんてとてもつまらないし、僕自身が好きな女の子と一緒になりたかったのだから。