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4,『いつも雄々しくイケメンらしく』

 今現在、グラハムは真っ暗な部屋にいた。

 ただ一人、真っ暗な部屋で真っ白なテーブルの前に真っ白な椅子を置いてそれに座している。

 足を組んでさも、その真っ暗な『空間』の主とでも言うようにその場に居座っているのだ。

 彼は表情一つ変えることなく、ただ“ソレ”を待っていた。


「……お待たせしました」


 やってきたのは一人のメイド。

 白と黒の服に、胸はほぼ無いにしろ綺麗な顔だちであることには変わらない。

 いつもならば抱きつくやらなにやらしているところなのにも関わらず、彼は全くと言っていいほど動かなかった。

 やってきた少女を見て、グラハムは片手で頭をおさえるのみで無表情。


「またハズレか」


「これでグラハム様のご訪問は32回目となります」


 目を伏せてため息をつくと、グラハムは立ち上がる。

 彼女はただの“端末”でしかない。だからこそ人間ではなく道具である“メイド”の姿をしているのだ。

 ―――これが人間だというならイエロースポッドサイドネックタートルだって人間になるさ。


「グラハムさま」


「なんだ“見かけだけは最高の、いわば肉便器”」


「私は人間です」


「そう言うと思ったがそれだけは否定させてもらおう、プエルトリコヒメエメラルドハチドリ」


「貴方は何をお探しですか?」


「もちろん貴様だ」


 その言葉にメイドはただ黙るのみ、呆れているのかなんなのか、だがその表情に答えはない。

 白と黒のコントラスト、部屋はただグラハムという異色イレギュラーだけを浮かし、弾いていた。


「本当に探しているものとは?」


「それはここよりいくつか高い次元の話になる、肉便器にはとうてい理解できんさ」


「私は―――」


「それは聞き飽きた」


 だが、グラハムが呼び方を変える気がないのと同様、メイドもあきらめはしらない。

 また同じことを言えば同じことで返すのだろう。

 この“肉便器メイド”はそういうものである。

 無益なやりとりをこれ以上繰り返すことは無いのか、グラハムはそれ以上しゃべることなく立ち上がった。

 最初から最後まで変わることなき無表情。それは“いつも”のグラハムとは違うと言い切れる。

 だが“いつも”のグラハムが“通常”のグラハムとは言い切れない。


「今回も破壊しないのですか?」


「中身はともかく“綺麗な女のカタチ”をしたものは壊したくないんだ。理解わかれよ肉便器」


「……そのように扱っていただいても問題はありませんが」


「考えておこう」


 そう言ってグラハムが指を鳴らすと、ライトが消えて部屋は真っ暗な闇へと変わる。

 足音も、息遣いすらも聞こえやしないその闇の中。

 ただ―――なにもない。




◇◇◇◇◇◇




 杏澄が一人、歩いていた。

 今日の晩御飯の材料を買いに行った後、グラハムが突然別れると言い去っていったのだ。

 荷物は全部彼が持っていったが……。


「(よりにもよってまだ家で暮らす気だとは……)」


 リア充とは常にあんな感じなのだろうか? だとしたら自分はならなくていいと思った。

 ―――あれがリア充? もしやただのDQN?

 などと思ってみるも頭を振って考え直す。

 あれはそういうのじゃない、下手をすればもっと厄介な何か……な、可能性だってあるのだ。

 考えるだけ無駄だろう。

 そう思い歩くが、どうにも外というのは苦手だった。


「光がっ……」


 真冬にもかかわらず、直射日光が降り注ぐ中を歩くのは『引きこもり(弱)』の杏澄にはひどく強力な兵器だった。

 それはもはや新手の熱兵器、ソーラーレイ。焼き殺される寸前だ。

 CIAが新たに開発した兵器かと疑うほどのものである。

 これで目など出していたら間違いなく、失明だったと―――杏澄は確信した。


「で、ここ……」


 気づけば、知っている道ではなかった。引きこもり体質の杏澄だが、この街のことぐらいはすべてわかる。

 だがそれでも、この道は知らなかった。

 ふとした瞬間わけのわからない道に入っているなんてことはあるだろうか?

 あるならばそれは杏澄がやっているようなゲームの中でだけ……だがそんなことが起きたのだ。昨晩、松田グラハムという男がやらかした。


 ―――ならこれは……。


「一名様、ごあんない」


 そんな声と共に、現れたのは漆黒の全身タイツ。

 だがその体は間違いなく女性。まったくもってわけのわからない状況に、杏澄はただそれを『変態』と以外に考えられなかった。

 声はその黒タイツから聞こえてくる……わけではない。


「お嬢さんお嬢さん、貴女がここに呼ばれた理由がわかる?」


 そんな声に戸惑う杏澄。


「わからないわよね。理由は一つ、私が貴女を血肉にしたいと思ったからよ」


 現れたのは黒いセーラー服を着た女性。

 大人の女性らしいオーラが出ているのがわかるが、そのロングスカートのセーラー服は似合っている。

 それだけで充分異質なのがわかるが、女性のその目は赤く輝き、その口下には不敵な笑みが浮かんでいた。


「き……」


「叫んじゃだめよ、うるさいと殺してしまうわ」


 杏澄は言葉を飲み込む『きれい』とはとてもじゃないが言える雰囲気ではない。

 目の前の女性は杏澄のストライクゾーンど真ん中であった。

 グラハムのような性格でありたいと、思ってしまう。

 ―――ストライクゾーン、願うならば彼女を私のものにして、啼かせたい!!

 だが、杏澄は内心で恐ろしくおぞましい考えをしている。この時点でグラハム級の変態だ。


「さて、貴女はその右足を引きちぎったらどんなふうに泣くのかしら?」


 ―――貴女はどんなふうに啼くんですか?

 なんて聞けるわけもない杏澄はただ無表情で待つのみだ。

 女性はそっと近づいてきて、杏澄との距離は一メートルもない。

 その瞳や髪を見て、杏澄は生唾を飲んだが―――瞬間、その気も失せる。


「さて、まずは目玉をくりぬくとしましょう」


 一瞬で冷や汗が吹き出した。伸ばされる腕、叫ぼうにも叫ぶほどの度胸すらない。

 ただ恐怖で黙るのみだ。


「そうはいかない」


 そんな声が聞こえた。

 再び少女の声と共に、一本の剣が真上から降って来て、女性の伸ばされた腕を肘から切断。

 驚愕した表情の女性。落ちる腕、吹き上がる血飛沫。杏澄は唖然としてその光景を見るのみ。

 間もなく、一人の少女が上から降ってきた。

 ―――お、親方、空から女の子が!

 などと思っても口に出せない。

 少女は両足で着地する。それと同時に女性は足で地面を蹴って距離を一気に離した。


「間に合った!」


 振り返った少女に、杏澄は見惚れる。まさしく美少女、綺麗な金髪を赤いリボンでポニーテールにした少女。先ほどの女性よりもずっと美しく輝く碧眼。口元にきらめく白い歯。凹凸のついた体。

 杏澄を釘付けにするには十分すぎるものだった。

 向き合う少女と杏澄。


「て、んし……」


「そ、そんなふうに言われたのは初めてだな」


 少女の背後から女性が残った片腕を振り上げる。


「だが私はそんな風ではない」


 碧眼がギラリと輝き、その瞳は眼光を残す。少女は瞬く間に振り返り、女性の顎を下から殴る。

 通称アッパーと呼ばれるその一撃は、女性を吹き飛ばすに値する威力であり、杏澄はゾッとした。

 ―――プリチーな瞳だなぁ。

 ゾッとした直後にそんなことを思えるのだから相当能天気である。


「ッ、小娘がっ!」


 女性が叫ぶが、少女は一切表情を変えることはない。ただ凛々しい表情で、しっかりと敵を見据える。

 叫ぶ女性の爪が鋭く伸び、それは人間と言うにはおぞましいものとなった。鋭利なそれを振るう女性だが、少女は華麗にその爪を避けていく。

 綺麗に背中を反らせたり、回転しながら後ろに跳んだり、まるで舞うような動きに杏澄は見入っていた。


「ハズレか……ハッ!」


 つぶやいた少女は、女性の攻撃を避けた後に右足を振るう。高くに上げられた足が女性の横顎を打ち、嫌な音があたりに響く。そんな音と共に女性は倒れるが、今度は少女が“攻撃”をやめない。

 どこからともなく、少女の手に現れる剣。


「ハアッ!」


 その剣を―――女性の喉元へと突き立てた。

 死人に鞭打つような行為かと思った杏澄だったが、違う。女性は断末魔をあげた。先ほどの砕けた顎は元通りになっていて、それにより人間ではないことを理解できる。

 少女が剣を振り上げ、女性の顔を真っ二つに切り裂く。


「――――――――!!?」


 杏澄は口元を押さえて俯く。まともに見ていればきっと嘔吐する。

 音が止んで、しばらくするとあたりの景色は変わって人通りの少ない路地裏へと変わった。

 なんだか見覚えのあるような、やっぱいないような状況だ。視線を恐る恐る女性の方に向ければ、女性はすでに消えていた。


「大丈夫か、そこの女の子」


 その少女から、なんだか自分のやるようなゲームに出てくるヒロインのようなオーラを感じた。

 今回は寸でのところで命を助けてもらったという感覚でいいのだろう。

 だからこそ軽く頭を下げる。


「大丈夫か、と聞いている」


「……だ、だいじょう、ぶ……」 


 杏澄のそんな返事に、目の前の少女はその顔に笑みを浮かべる。


「ほう、お前か」


 そんな声と共に、真上から降りてきたのは松田グラハムだ。彼は軽く前髪をかきあげて笑みを浮かべる。

 相変わらず人外とも言えるような動きをするグラハムだが、驚けない自分がいる。いや、この動きを見ても驚けないのは自分だけだろう。グラハムが十メートルぐらいの場所から飛び降りても同じ学校の人間は驚きもしないはずだ。

 そう考えればこの男が魔法使いであることには何の疑問もしょうじない。

 というよりなぜ皆最初からこの男が“特別な何か”と思っていなかったのか謎でしょうがないというものである。


「ほぉほぉ、相変わらずいいおっぱいではないか」


「貴様ッ!」


 少女は剣を持ち、その切っ先をグラハムへと向けた。

 杏澄の心情的には男が死のうがどうでもいいのだが、面倒なことになりそうな予感がしたのでやめてほしい。


「オーライ、俺という存在が無くなるのは宇宙規模の損失だ。だがそのおっぱいだけは揉ませてもら」


「断る!」


「ならば致し方ない……かっ!」


 グラハムが先に動く、素早い動きで懐に入り抉るように下から手を伸ばすも、少女が跳ぶと三メートルほど離れた場所に立つ。

 その姿をしっかりと見た杏澄だが、杏澄が突如鼻を押さえた。

 ―――現実の女の子の下着が見えるなんてなんてなんてなんてラッキー!

 跳んだ時に見えたのだろう。あきらかに動揺している杏澄であるが、鼻を押さえたのは口元のニヤケを隠すためでもある。


「フハハハッ! 相も変わらず良い回避性能だな、だが下着は目視した!」


「このブレジネフ、女はすでに捨てている!」


 ―――うっはぁ! たまらない! 女を捨ててるのにスカートとか、キタコレ!

 脳内でハイテンションな杏澄だが、これが家であればまもなく転げ回るところであった。

 睨み合う二人。否、睨んでいるのはブレジネフと名乗った少女だけだが……その雄々しい名前に見合うだけの強い眼でグラハムを睨む。


「<Spell magician>今日こそ斬らせていただく!」


「スペルマ? なんてやらしい女だ」


 ―――スペル・マジシャンです。と言いたい! けどスペルマとか言ってるブレジネフちゃん可愛い。

 杏澄、意外と大物なのかもしれないかと思わされるまでの能天気。だがその内心を感じさせないほど杏澄は黙っている。

 ブレジネフが地を蹴り、走り出す。そのスピードは本当に剣を持っているのかと疑うほどのスピード。 グラハムの眼前まですぐに走り寄り、剣を振り上げるように振る。だがそれでもグラハムを斬ることはできない。流れるように背後に数歩移動して、剣を避けていたグラハム。


「いつもそうだ。お前たち“武装の魔術師”は“俺”を敵視する。まったくわけがわからんぞ」


「お前は私の兄を殺した!」


 何度も剣を振るが、グラハムは最小限の動きで剣を避けていく、それを見ていた杏澄はわけがわからないと思うも話しかけられる雰囲気ではない。

 特に身内を殺したとなっては話がだいぶ違う。そもそも魔法使いが二人も三人もいる時点で彼女の“常識”のキャパシティでは内容を処理できなかった。


「人聞きが悪い。天誅だ」


「ならば私が人誅を下す!」


 眉を潜めて、グラハムはそこで始めて面倒そうな表情を見せた。銀色の剣を振るう彼女の上からの一閃を回避すると、グラハムは左足を上げる。


「まったく、戦う女の子もまた嫌いじゃないがな?」


 少女の振り下げられた剣に対して、グラハムは左足を降ろした。地面に触れそうな片刃の剣に足を乗せ、踏む。

 剣は地面に刺さり、グラハムの力で押さえつけられて抜けることはない。 

 口元に笑みを浮かべるグラハムは、軽く指を鳴らす。


「じっとしておいてもらおう」


「断る。貴様を倒すまでは!」


「美少女相手に魔法は使えんからな」


「舐めるな!」


 ブレジネフは剣から両手を離すと、再びどこからともなく剣を出すが、今度は両刃だ。両手で持った剣を横に振る―――その刃の振られる先は間違いなくグラハムの首。

 だが彼は表情一つ変えることなく両足で跳ぶ。しゃがんだ方が間違いなく安全なのにも関わらず、跳んでその剣を避けた。

 グラハムは少し離れた場所に着地して、髪を軽くかきあげる。


「まったく、モテる男はつらいな」


「<Spell magician>覚悟してもらおう!」


「スペルマスペルマと、なんていやらしい女だまったく!」


 何度も振られる剣を紙一重のところで回避しながらも、グラハムは余裕な様子で攻撃を回避していく。

 まったくもってふざけた態度ではあるものの、その余裕っぷりは確かなものである。

 それが余計に相手の苛立ちを買うのだろう。段々とその刃の振りは勢いをますもののキレを失っていく。


「<シールド>」


 つぶやいたグラハムが、その手でブレジネフの剣を掴んだ。斬れる―――そう思っていた杏澄は意表を突かれ驚く。まったくグラハムの手は斬れることなどなく、むしろその刃を止めてすらいた。

 よく見れば剣を掴んだグラハムの手のひらには薄い膜のようなものが張られている。間違いなく先ほどつぶやいた『シールド』なのだろう。

 ブレジネフ、彼女は彼女でそれをわかっているのだろう、忌々しいという表情でグラハムを睨む。


「くっ、はじめたな<Spell magician>!」


「俺は<言葉の魔術師>じゃなく<魔法使い>だ。“お前たち”はいつもいつもわかっていないな、俺は所詮魔法使いなんだよ」


「まったく意味がわからないが、お前は兄の敵だ! アームズ・ガントレット!」


 叫んだ彼女が剣から左手を離すと、左手を光が包み込み……光が散ればその手にはガントレットが装備されていた。

 その指先一つ一つの先は鋭い爪になっていて、銀色のガントレットは鋭利な光を反射する。

 ガントレットのついた左手を振るブレジネフ。その指先がわずかにグラハムの制服、その肩部分を切り裂く。


「まったく、裁縫しなくてはな」


 確実にガントレットの爪は当たる距離だった……それでも避けられたのは体をそらしたからだろう。恐ろしいまでの反射神経と冷静さと判断能力。

 すでにその能力は杏澄の持つ常識の範囲はおろか、剣を出したり手甲を出したりなどできるブレジネフの常識の範囲すら超えていると言っても良いものだ。

 彼は左手で剣を握ったまま、右手を拳に変える。

 ―――ダメ! そんな美少女を殴るなんてどうかしてる!

 叫びたい杏澄だが、そんなことができれば苦労しない。だがそんな杏澄をわかってか、グラハムは杏澄に向かってわずかに笑みを浮かべた。


「安心しな杏澄ちゃん、この俺松田グラハム。美少女を傷つけることなんて最大限しないのだ」


 そう言うと、グラハムは右拳を左手で掴んでいる剣にぶつける。


「バレット!」


 そんな叫び声と共に、グラハムの周囲、というより剣を中心に衝撃波が奔る。

 衝撃故にブレジネフは体勢を崩して地面にお尻から倒れこむ。確かに怪我もしていないし乱暴なこともしていない……松田グラハム。あなどれない男だった。

 そして、杏澄はグラハムに親近感を覚えていた。彼からは自分と同じ匂いがすると……男以上に女の子が好きな自分より女の子に優しく女の子が好きなグラハムという男。この男となら“友情”なんてものが築けるかもしれないと、わずかに思ってしまった。


「おっと、大丈夫か?」


 そう言って剣を放り投げると、手を差し出すグラハムだがブレジネフはキョトンとした顔だ。まだ驚きの感情がどうにもできないのだろう。

 先ほどまで杏澄が恐怖していた“敵”を一瞬で倒したと思えないほど簡単に弄ばれているブレジネフを、いとも簡単に文字通り倒して、あげくに手を差し出す始末。

 瞬間、彼女ブレジネフは表情を先ほどのように戻し、その碧の瞳にて眼前の敵を睨みつける。


「<arms magician>として……斬らせていただくと言ったはずだ!」


 そう叫んだ瞬間、少女が左手を振りかぶって真っ直ぐに突き出す。その爪先はまっすぐ、グラハムの胸の左寄りの場所を狙う。しかし……その爪はグラハムを貫くことはない。

 貫くことすらできないのだ。それが今の彼女の実力ということだろう……。


「うむ、予想通りだよ」


「な、に……!?」


 驚愕するブレジネフだが、グラハムはその顔に殺されようとしたにも関わらず笑う。

 まるで自分を殺すことが当然と言うように笑みを浮かべている。杏澄はその姿になにか背筋がビリビリと震えた気がした。これは恋やら愛やら一目惚れやらという浮ついた気持ちではない。ないはずだ……そう、これは尊敬や敬意のそれに近い。


「やはり俺のような男には命を狙う女の二人や三人は必要だな!」


 笑いながら彼女から数歩離れると、身を翻すグラハム。自らの命を狙う少女に背を向けながら去っていく。

 そこに残るのは、二人。ブレジネフと名乗った少女と天宮杏澄のみであり、片方は一般人で片方は“武装の魔術師”である。

 尻餅をついていたブレジネフが立ち上がり、体についたほこりを払うが杏澄がその“美少女”に話しかけるなどできるはずもなかった。できていたら今頃友達ぐらいいる。


「君は、一般人のようだがSpell magician……いや、アイツは魔法使いと名乗っていたか、アイツとどういう関わりだ?」


「あ、その……えっと、あまり仲がいいってわけじゃなくて、その……ま、巻き込まれたって言っていいのか、その……」


 初対面の人間と喋る挙句、長文を話させれば杏澄はあたふたしてしまう。まぁ人見知りの彼女としてはあたりまえのことなのだが、これも相手がどう思っているかと思いあたふたとしてしまう。

 コミュ力はレベルにすれば1。自信を持って杏澄は言えるだろう、自信を持って言える相手がいないのが問題だ。


「そうか、なら先に言っておく、私たちとは深く関わらない方がいい。君が非常識というものに憧れているならば余計に、だ……好奇心でこちらに足を踏み入れれば絶対に後悔をする」


 そう言うと、ブレジネフは跳び、横の壁を蹴ってビルの上へと移動するとそのまま見えなくなってしまう。

 名残惜しいと思いながらも、スカートの中身がまた見れたのでまったくもって問題ないと頷く。

 ―――今日はたまらない日! ここ数年でもっともたまらない……やっぱり体育の授業前に着替えている時とスカートから見える下着では格が違うなぁ~。

 杏澄は鼻から上が前髪に隠れてまったく見えないのだが、口元がかなりニヤけているので簡単にわかることであった。いつもはニヤける口元を隠すところだが、今は誰もいないので隠さないで済む。

 ―――最高にハッピー! できればあの人がいなければもっとハッピーだったのに! 堂々とエロゲできるしぃっ!!

 内心超ハイテンションのまま杏澄はいつもの雰囲気で帰る。一目で根暗とわかる杏澄だが……内心もいい感じに根暗であった。







あとがき


今回はこんな感じでござったでござるよ。

新キャラでござるが、まぁまさにそれっぽい新キャラになっているで候。

そして今回は新しい単語が一杯出てきたでござるが、これはそこまで難しいことでも無いでござる。故合って面倒にかいているでござるがまとめればものっそい簡単で候。

まぁその話も後々、になるでござるが……次回もお楽しみにしていてくださればまさに僥倖!




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