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0,『彼こそが……』

かのゲーテはこんな言葉を残したそうだ。『人間こそ人間にとって最も興味あるものであり、おそらく人間のみが人間に興味を感じさせるものであろう』つまりはこの世で最も興味深いものは人間ということらしいが、そのままだな。

まぁそれはともかく、俺個人としても同意見である。だからこそ誰かと繋がっていることはとても飽きないし楽しいことだ。

他の人間だってそうだと思う。誰かと繋がっているからこそ、人生はおもしろいのだ。




◇◇◇◇◇◇




さて、今現在、俺の視線の前には一人の少女。

少女は長い黒髪、長さは腰から少し上ぐらい、髪型は『ハーフアップ』別名『お嬢様結び』と言ってもわかりにくいだろうから説明すると『髪の毛の上部分だけをうしろで結び、下の髪はそのまま垂らした髪型』もっと詳しく知りたい場合は検索推奨。

左側のもみあげを含めた横髪を黒いリボンでまとめている。お洒落と言えばお洒落だな。前髪で表情が見えない少女のボサッとした髪は、こういうのも失礼かもしれないが『似合っている』とすら思わされた。


「ゲーテ曰く、といったところか……」


学校の屋上で、俺はつぶやいた。この『風音原学園』の数ある進入禁止エリアのうちの一つである屋上。そんなところで俺は目の前の少女をみつけた。別段なにかがあるわけではないが、ただ一瞬だけでも見惚れてしまったのだ。

この俺『松田グラハム』は五日に一回は女に見惚れる。しかしこの女は別だ、見惚れるとかそれ以前に、俺の興味をそそるのである。それはその少女が結構な巨乳だからとか、絶対領域だから、なんて不純な理由ではない……やっぱそこもあるかも。

ただ、その少女は不思議な魅力があった。今までの女たちには感じたことのないような、そんな雰囲気だ。


「ここは立ち入り禁止のはずだが?」


そうつぶやいて、俺は少女へと近づいていき、設置してあるベンチの、少女が座るすぐ横に腰を下ろした。

母親譲りの金髪が風によって揺れる……俺、今、カッコイイ。

話かけた俺は隣の少女へと目をやるが、おどおどした雰囲気をかもしだす少女。何も答えが帰ってこないところをみると……そういうことか、俺が素敵すぎて言葉も出ないのか、うむ。

緊張することはない。俺はフレンドリーでいて性格の良いイケメンだからな?


「お昼休みに一人とは、どうしたんだ?」


声をかけてみるが、答えは帰ってこない。なるほどぼっち……つまり友達がいないというわけだな、気の毒なことだ。今頃俺のおっかけが学校中走り回って俺を探していることだろう……ふぅ、イケメンは疲れる。

横の少女からは一向に声は聞こえてこない。視線だけを横に向けると、少し話そうとしている様子は見て取れるのだが、なるほどぼっちの典型的なパターンだ。


「と、友達……居ない、から」


うん知ってる。

ようやく絞り出した言葉は、消え入りそうなものだった。まったくもってぼっちのパターンである。それにしても声は案外可愛かったので実に啼かせたい。『んほぉ!』とか言わせたい俺は罪か? 否、俺はただ純粋なだけだ。


「ふむ、ならば俺が友達第一号に立候補しても?」


キター! これはグラハムさんの四十八の口説き技の一つ『崩壊するベルリンの壁』だぁ! とか解説してくれる可愛らしい後輩が欲しい。……欲しい。

少女の方へと目をやるが、なんだか何も言わずにいる。まったくどれだけ根暗なのだ、このイケメンがここまで言っているのに無反応とは、実に悲しい奴である。だが、体が目当てなのでそんな反応はまったく興味無い。とりあえず結果だ。


「友達……ぼっちこじらせて、とうとう幻覚、が……」


ぽつぽつと言葉をこぼす少女。まったくもってぼっちの極みである。

なにか独り言を言いながら立ち上がると、そそくさと去っていく少女。その背中姿を見ながら俺は溜息をつかざるをえない。

少女が屋上から去っていくと、次に屋上に一人ぼっちなのは俺になるのである。まぁクラスに戻ればダチだっているしほかにも俺に惚れてる女子生徒だっているのだ。


「戻るか……」


まったくもって無駄な時間を過ごしてしまった。これで『失敗』ならばまだその人間に俺という対象を記憶させるという意味があるのだが、まさか『幻覚』扱いとは思わなんだ。

こんな経験先にもここだけにしてほしい。『美人薄命』みたいなものでイケメンの一生は短いのだ。老いることもある。

いかんせん、ナーバスになってきた。まさかこういう形で失敗するとは……とりあえず教室に戻ろう。一人でここで昼食というのは完全に“残念な人”だ。




屋上から階段を降りて六階まであるこの校舎の四階までやってくる。

『2‐B』という札があるのは俺の所属するクラスであり、わいわいとしているのはどこの高校も一緒だろう。

俺は窓際後ろから二番目の席について屋上からずっと持っていたビニール袋からいくつかのパンを出す。


「グラハム君、さてさて! 今日のお昼はな~にかな♪」


歌を歌いながらやってきたのは俺に惚れている女の一人。


「通称俺の嫁三号」


「いや、全然違うから」


真顔で否定するあたり照れている証拠だな、間違いない。イケメンがいうのだから間違いないったらないのだ。


「この朱莉ちゃんは、ファンのみんなが恋人です!」


この頭にお花が咲いた女は『紅乃こうの 朱莉しゅり』と言う。新聞部所属の通称『パッパラパーパパラッチ』である。

ぶっちゃけ俺もコイツは『グラハムハーレム』にはいらない。入りたいと懇願してきたら入れない気もないが俺からいれようと思わない。もしかしたら俺の罪が天元突破したら挿れるかもしれないが……。

容姿も悪くはない。赤い髪で短いツインテ二つに赤い瞳。小柄な……というより身長が普通で胸がないからただのぺたんこ。

そう、俺個人としては容姿は嫌いではない。というより結構良いと思う。だからこそこの性格が残念すぎる……基本『見かけさえよければどうでもいい』思考の俺がなぜコイツがダメなのか、わからんところである。


「お前にファンなど、お笑いだよ」


「ヒュー、言ってくれるじゃないですか、これでもモッテモテですよ?」


「コアなファンだな」


まぁ特に口喧嘩というわけではない、いつものことだ。


「今日はこのパン~」


朱莉は適当に俺のパンを一つ取ると隣の席につく。まったく、その体を使ってパン代を……いや、やっぱりいい。

とりあえず隣の席に座るそいつが椅子を俺の机のそばに寄せると、小さな弁当箱を出した。

昼休みもまだまだ時間はあるしゆっくりと食事をしよう。

俺は俺でパンの袋を開けるととりあえず焼きそばパンから食べる。

隣の朱莉が弁当箱を開いて箸を持つと小さく『いただきます』と言って食事を始めた。お互い適当に昨日のテレビの話などをしながら食事を続けていくと、朱莉が一つの卵焼きを掴んで俺の顔の横に持ってきた。


「はい、あーん」


「おう」


その卵焼きを食う。この卵焼きを作ったのは誰だ! まぁ無論朱莉なわけだが、実に美味である。これがパンの見返りというわけだ。この俺がパンをやる理由はそこである。

まぁ卵焼き一個というわけじゃない。二段の弁当箱の片方にはおかずがつまっている。卵焼きはもちろんスクランブルエッグと小さな目玉焼き、そして半分にされたゆで卵が二つ。

朱莉は大の卵好きだということだ。そのいくつかの卵をもらうのだが、こう卵ばかりだと死にたくなる。

中学の頃からこうということもあり、最初は俺と朱莉が付き合っているなんて噂も流れたが、そんなことは一切ないので気にせず生活してたらそんな噂はすぐ消えた。お互いがお互いをまったく意識していないとはずいぶんだなとは思うが、コイツは無理だ。


「そういえば朱莉、お前巨乳で黒髪の子わかるか?」


「山ほどいるです、巨乳憎い」


「根暗」


「ピンときた」


そう言うと、箸を咥えながら朱莉は胸ポケットからメモ帳を取り出す。パラパラとページをめくると、開いたまま俺の方に向けた。

そこには、間違いなくさきほどの少女だ。それにしてもなぜか隠し撮り、さすが朱莉。捕まったら『いつかやると思った』って証言してやろう。


「話しかけてもあまりいい返事は返ってこないので最近は喋りかける子なんていないし、いじめは無いにしても二人組を作ったら先生と一緒か三人組を解体して恨みを買うか、まぁ残念。あと巨乳だからすぐ死ぬ」


こいつは巨乳に恨みがあんだ、気の毒なやつである。とりあえず名前もわかったし文句はない。

スリーサイズまで記入してあるのは、さては身体測定の情報を得たな。絶対にこいつが事件を起こしても他人のふりをしよう。

うむ、しかし巨乳である。俺好みのムチムチ感はやらしくて良いと思う。ただ根暗なのはかなりネックだな、これは難易度が高いが、その方がテンションが上がるというものだ。


「クッククッ……」


「美形なのは認めるけど気味悪いから笑うのやめて」


「うむ」


笑うのをやめて考えてみる。それにしても朱莉は嫉妬すらせんのか、まったくもってつまらん。幼馴染の一人や二人いれば俺だってもう少し……いや、考えるのをやめよう。

そして俺は、考えるのをやめた。

まぁこの貧乳のおかげで今回はいい収穫があったというものだ。

動いてみるかと……俺は脳内にてアプローチの仕方を思考する。こんなイケメンがやる気になっているのだから、もしその前髪を上げと時、俺に残念な思いをさせるなよ?


天宮あまみや 杏澄あすみちゃん?」


再び笑う俺にその後、隣から酷い言葉が飛ぶのは言うまでもない。だが実際のとこクラスの女子生徒の七割は俺に見惚れているのだ、俺の美貌は本物である。


これでも俺はいつも本気である。だからこそ、美少女のためなら面倒ごとに巻き込まれるのも嫌いじゃない。むしろ美少女のためなら、たとえ朱莉のためであろうと面倒事に巻き込まれるのは本望だと思っていた。


だが、それも天宮杏澄との日々を過ごすまでの話である……。




あとがき

とりあえずプロローグはこんな感じでござる。

まだプロローグなので細かいことは気にしない!

では次回で!

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