小さなミラの助けを求める声
その隣に、別の違和感があった。
木の根元——葉に半分埋もれるように、カメラが転がっている。
途中で落とされたみたいな角度。
そして、低い枝にひっかかっている——小さなリボンのヘアピン。
アドリアンは息をのみ、視線をさらに落とした。
そのとき——聞こえた。
風の揺れと間違えそうなほど小さな声。
か細く、震えて、でも確かに呼んでいる。
彼はもう一枚、葉をそっと押し分けた。
そこに——いた。
大きな葉に包まれるように縮こまり、親指ほどの大きさになったミラがいた。
震えて、目を見開き、涙の光が青い輝きと混ざって滲む。
一瞬、声が出ない。
恐怖と混乱で、動けない。
そして——声が裂けた。
細くて、高くて、必死な声。
「……アドリアン…?」
喉が詰まり、言葉が形になった瞬間、全ての恐怖が一度に噴き出した。
涙混じりの叫びが、夜の闇を切り裂く。
「助けて!!」
その刹那、根の陰が動いた。
ミラに比べれば巨大なカエルが、舌をねっとりと伸ばす。
アドリアンは反射の速さで手を伸ばした。
葉を守るようにミラを包み込んで掬い上げる。
掌の中心に、小さな体がふわりと落ち着いた。
青い燐光が手のひらに滲むように染まる。
アドリアンはその手をゆっくり顔の高さまで上げ、見つめた。
呼吸が揺れる。
信じられない、けれど目が離せない。
どんな論文よりも静かで、どんな仮説よりも優しい声で、彼は呟いた。
「……ミラ?」




