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昼休みは爆発した

授業はそれ以上、言葉を交わすことなく終わった。

ミラはゆっくり荷物をまとめながら、頭の中で思考がぐるぐる回っていた。

混乱というより——信じられない、という苛立ちで。


昼下がりのカフェテリアはいつものように賑やかだったはずなのに、

とあるテーブルの周囲だけ、空気が一瞬止まった。


ミラが、折りたたまれた紙をバンッと置いた瞬間だ。


「怒ってる。いや——ブチ切れてる。」


友人たちは、ちょうど食べかけのまま固まる。


「え、ちょっとどうしたの?」

カミーユが瞬きをする。

「私たちはただ“アドリアンの件どうなったの”って聞いただけでしょ?

なんでいきなり戦争宣言みたいになってるの?」


「だって当然じゃない?」

ミラは腕を組む。

「私はちゃんと敬意を持って話したのに。

優しくしたのに。

でもあの男、あの男は——」

息を鋭く吐く。

「一体自分を何様だと思ってるの?」


ルカが椅子にもたれ、にやりと笑う。

「いやいや、待って? ついさっき“二人組になった”って聞いたばっかりなんだけど。

もう喧嘩モード?」


ナオミが眉を上げる。

「なにか失礼なことでも言われたの?」


「もっとタチ悪い。」

ミラは紙を掴み、ビッと開いて、ぐいっと差し出す。

「これ見て。」


エリアスが紙を受け取り、ざっと目を走らせて、低く口笛を鳴らした。

「……すげえ。

課題が出て数分で、ここまでまとめたの?」


ミラが返そうと口を開く前に、カミーユが息をのみ、大袈裟に身を乗り出した。


「はいちょっと待った。」

彼女は紙を指さす。

「二人、授業中に”交換ノート”してたってこと?

ねえ、やばくない?

それってもう、ロ・マン・ス!」


ナオミが頷く。

「プロジェクト案に偽装された秘密のラブレター?

最高じゃん。」


ルカは胸に手を当て、芝居がかった声を出す。

「ミラ、いつから“学園恋愛モノのヒロイン”になったんだ?」


ミラはむせそうになった。

「なっ……! ちがう! 絶対ちがう!!」


友人たちはくすくす笑う。


その空気を、ヴァレリアがすっと切る。

ミラの表情を一番よく見ていた彼女が。


「で——彼、本当にそう言ったの?」


ミラは一瞬、言葉に詰まる。

「え?」


彼女は紙を軽く叩く。

「ミラは“自分を弱い学生扱いされた”と思ってる。

でも——本当にそう書いてある?

それ、ただの“推測”じゃない?」


ミラは固まる。


カミーユがにやっと笑う。

「私から見るとこれは侮辱というより、戦略メモよ。」


ルカが吹き出す。

「むしろ、ミラなら分かるだろ?って思ってる感じじゃん。」


「理解しろって?!」

ミラはショックに目を見開く。

「私は“相方”がほしいの。

頷くだけの人形じゃない。

なのに“完成した設計書”だけ渡されて、はいこれでいいよね、って?

それは違う。」


カミーユ:

「つまり怒ってる理由は——“有能すぎる”ってこと?」


ミラは頭を抱える。

「そうじゃない!!」


ナオミが穏やかに訊く。

「じゃあ、何がポイントなの?」


ミラは深呼吸し、少しトーンが落ちる。

「私はこの授業から学びたい。

もし全部が最初から“終わってる”なら……

私がグループにいる意味は?」


カミーユはニヤッと笑う。

「じゃあ、この紙……私、使っていい?」


ミラはじろっと睨む。

「どうぞご自由に。」


ヴァレリアが前のめりになる。

「ミラ、あなたは賢いよ。

他人の完成品に乗っかるタイプじゃない。

そこは私たちが一番知ってる。」


ナオミもうなずく。

「うん。ミラが怒ってる理由、分かる。

でもアドリアンっていつも……そういう感じの人じゃない?

なんていうか、濃度が高い。」


エリアスがぼそっと言う。

「“濃度”じゃすまないだろ。」


ルカがにんまり。

「でもさ——この船、まだ沈んでないよ。」


ミラは勢いよく顔を上げる。

「その“船”の例えやめて!」


ルカ:

「何言ってんの。

“最初の衝突”ってだけだろ?

名コンビほど、最初は噛み合わないもんだよ。」


ミラは食トレーをずるっと押し出す。

「ほんと、みんな性格悪すぎ。」


エリアスは肩をすくめる。

「かもな。

でも——間違ってはいない。」


ミラは頬をふくらませて睨んだ。

……でも、心のどこかで

“もしかして”と思っている自分もいた。


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