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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第一章 女魔王編

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おっさん魔王、肉じゃがを作る

肉じゃがの代わりを囲み、ゴブリンたちと笑う夜。

そして次なる挑戦は――水の確保。

小屋へ戻ると、ゴブリンたちは手際よく火を熾し、

肉を解体していた。


野島は森で掘り出した芋と

 玉ねぎに似た根菜を並べる。

「よし、ここからは俺の出番や」


魔王の身体で熱さは感じないが火加減は分かる。

鍋に油をひき、肉を炒め、根菜を投入する。


水を張り、岩塩と森で取れた甘い樹液を加えると――

「これで……肉じゃがの代わりや!」

湯気が立ちのぼり、甘辛い香りが小屋を満たす。


「……めっちゃええ匂いやん」

思わず唾を飲む野島。

ゴブリンたちは恐る恐る鍋を覗き込み、

匂いに目を輝かせた。


「ほな、いただきます!」

木の器に盛りつけ、一口食べた瞬間――

熱々の芋がほろりと崩れ、

肉の旨味が口に広がる。


「う、うまいっ! 肉じゃがや! 

 ち、ちょっと違うけど、

 肉じゃがっぽい何かや!」

女魔王の涙腺が緩み涙が頬を伝う。


ゴブリンたちもがつがつ食べ始め、「ウマイ!」

「マスター、スゴイ!」と叫んだ。

小屋の中は笑い声で満ちる。

野島は空になった器を抱え、天井を見上げた。


「……畑が腐った時は絶望したー

けど……悪ないな」

こうして小さな小屋は、食卓を囲む

温かな居場所へと変わった。


肉じゃがもどきを食べ終え、

満足した野島はふと気づいた。


「……そういや、水ってどうしとるんや?」

今は森の小川まで汲みに行っている。


だが距離が遠く、雨が降れば濁流になり危険だ。

「ゴブリンも10匹はいる、水の確保は最優先やな」

ゴチが首をかしげる。


「水、マスター、ツクル?」

「作るっちゅうか……掘って探すんや。

サラリーマン時代にやった研修でな、

井戸の話聞いたことあるんや」


ゴブリンたちは興味津々で耳を傾けた。

野島は地面に棒で線を引きながら説明する。


「木がよく育ってるとこや、苔が多い場所。

そういうとこに水脈が近いんや」

翌朝、野島とゴブリンたちは森を歩き回った。


大木の根元に湿った土を見つけると、

野島は指で触れた。

「おっ、ちょっと冷たいな

……ここ、当たりかもしれん」


ゴブリンたちが我先にと土を掘り始める。

しかし、すぐに硬い岩にぶつかり、槍が折れた。


「ギギ……ダメ、ホレナイ!」

野島は汗を拭き、腕を組む。

「……やっぱ人力は限界か。

せやけど俺、魔王やったな」


試しに瘴気を指先に集中させ、岩へ押し当てる。

じゅう、と煙が上がり、黒い穴が開いた。


「おおっ……ドリルみたいや!」

感動していると、ゴチが慌てて止めに入る。

「マスター、アブナイ! ホドホド!」


どうやら瘴気の使い過ぎは体を蝕むらしい。

野島は苦笑しつつ頷いた。

「……せやな。力に頼りすぎたら、

また倒れてまうわ」


日を改め、野島はゴブリンたちに

簡易的な井戸掘りを指示した。

木の杭を使い、少しずつ岩を砕き、

泥を運び出す。

まるで小さな工事現場だ。


「よっしゃ、掛け声合わせろ! 

せーのっ、おーきなカブが、うんとこどっこいしょ!」

汗だくで作業するゴブリンたち。


野島は現場監督のように見守りながら、

時折瘴気で硬い部分を削ってやる。


数日後、ようやく地面の奥から水がにじみ出した。

「で、出たぁぁ!」

歓声と共に泥水が溢れ、

やがて澄んだ水がたまり始める。

野島は両手で掬い、口に含んだ。

湧き水のようで冷たく、甘い。


「……うまいっ! 

 水が、こんなにうまいなんて!」

ゴブリンたちも次々に飲み、はしゃぎ回った。


小屋のそばに井戸ができたことで、

生活は格段に楽になった。

その夜、焚き火の前で野島は呟いた。


「これで……俺らもちょっとは人間らしくなったな」

女魔王の赤い髪が風になびき、

何とも可愛いらしく微笑む。

ゴチがその様子に静かに見惚れていた。


天を見上げると、星々が瞬いていた。

会社で徹夜した夜に見た、トラバーチンの天井とは違う。

全員死んだ魚の目をして、終電過ぎでも一人も喋らんかった。


「俺、ほんまに魔王やけど

 ……こっちのほうが、生きてる気ぃするわ」

こうして逃亡おじさんは、

 確かな一歩を踏み出した。


食卓があり、水があり、仲間がいる。

野島は心の底から笑い、肩を震わせた。


ご飯を食べ、井戸ができて、

水に感動する野島のおっさん。

次話、楽しみにしていただければ嬉しいです!

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