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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第三章 魔王城編

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エピローグ:村への帰還

強くなりすぎた者と、

生きることを選び続けた者たちが、

「どこで生きるか」を決めた。

丘を越えた先で、見慣れた煙の匂いがした。

あの、畑の湿った土と、煮込みの優しい匂いが、風に流れている。


野島は深呼吸した。

胸の奥が、ようやく元の形に戻るようだった。


「……帰ってきたんやな」


ルルカはまだ片腕に包帯を巻いたまま、その横で静かに笑う。

リディアは少し照れたように視線を落としていた。


村の入口には、人が並んでいた。


盗賊団、村人たち、農夫、子供、そして

最後まで野島に付いて来たあの連中も。


「おーい! 帰ってきたぞー!!」


「レイジさんよぉ、俺達を巻き込んどいて

置いてくなやボケェ!!」


「かんにんやで、俺の悪いとこ全部出てしまったな。

 自分のことしか考えられんかった」


野島は頭を掻いた。


「チャックみたいにずぶとく生きる方法教えてや!」


「ひでぇな。これで恨みっこなしってことか

 こいつは貸しだぜ、貸し!」


「俺達、丈夫に鍛えて貰ったからな」

ゴチとコウが笑って拳を突き合わせる。


そのあと、抱きしめられ、背中を叩かれ、

米袋を持たされ、なぜか宴会が始まった。


鍋が煮え、火が赤く揺れ、笑い声が重なる。


野島は気づく。

戦場よりも、魔王城よりも

ここが、自分が居たい場所だった。


《リディアとの結婚式》


季節が変わり、田畑が黄金色に満ちた頃。

村の中央に、白い布が張られた。


リディアは花嫁衣装を纏っていた。

 絹のヴェールが肩口から背へと流れ、装飾は最小限


野島を見つけると頬を染め、くるりと回り、

レースを持っていた村の老婆が慌てて追いかける。


でも、王に持たされた青の宝玉だけは外さなかった。


「……これだけは、私の覚悟の証ですから」


リディアは一転、不安そうに野島の様子をうかがった。


「いつでも封印できるってか。

 そういう生真面目なとこが、好きになったんかな」


「生で言った!!!!」

「ぎゃははははは!!!」


盗賊達がはやし立てる。


ルルカは少し離れ、

式が終わるまで丘の上から二人を見ていた。

風に揺れる赤髪と稲穂の旗。


彼女は笑っていた。

泣かない。泣かないと決めているから。


リディアは式の最後に丘に登り、

 ルルカへ小さく手を伸ばした。


「……あなたも、来てくれてありがとう」


ルルカは微笑む。


「私は、見守る。あなたの時間を妨げたりしない。

だって――私は魔王だから」


風が稲穂を揺らし、三人の影が並んだ。


野島は言葉を選ばない。

選んだら壊れてしまう気がしたから。


「ルルカ。

……もう、土下座はせんで。こんな生き方しかできんから」


「うん。わかってる」


その返事は、優しくて、強かった。




リディアは人として生き、老いて、終わる。


ルルカは不死で、ただ、それを見届ける。

野島も死ぬことは出来ない体。


あとは、ずっと一緒だ。




ただし。


今は、今だけは。

三人で同じ時間を生きている。


村では今日も米が育ち

盗賊団はチャックに怒鳴らながら、ちゃんと汗をかき


魔王も聖女も勇者も、大差ないように笑う。


「ねぇ、今日の夕飯どうする?」


「スープな。シシリはたっぷり入れてくれ」


「じゃあ……うん。あのときのやつだね」


三人の声が重なる夕暮れ。

それは戦いより重く、奇跡より確かだった。


そして物語は、一度幕を閉じる。

完璧な救いも、

永遠の幸福も描けませんでしたが、


「今を生きる」ことを選んだ三人に感謝を込めて終わります。

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