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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第三章 魔王城編

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壊したくない勇者と、守りたい二人 ~戦場で結ばれた最後の約束~

王都軍と魔王軍、ついに衝突。

悲しみが引き金となり、野島の中で眠っていた力が目を覚まします。

それは救いか、それとも破壊か――。


ルルカは、その光景を見た瞬間、

全身が凍りついた。


幼い体を思わず縮め、

抑えきれなかった瘴気が、

ほんの一瞬だけ、うねる。


「……やめて……」


声にならない声が、

喉の奥から漏れ落ちた。


その瘴気は野島に呼応するように、

水面の波紋のように広がっていく。


一方、リディアは完全に凍りついていた。


祈りの形を作った両手が、

意味もなく宙で止まる。


――違う。


これは浄化でも、罰でもない。


制御されていない力。

放置すれば、戦場にいる皆が死ぬ。


彼女の瞳に映るのは、

倒れた若い兵士と、

その周囲に静かに広がる破壊の輪。


恐怖はあった。

だがそれ以上に、

使命が胸を焼いた。


――止めなければ。


聖女と魔王。

二人の視線が、一瞬だけ交差した。


敵も、味方も、

その境界が消える。


そこにあったのは、

同じ“恐れ”。


言葉は要らなかった。


野島はゆっくりと膝を折り、

両手を顔の前で握りしめる。


何かを必死に抑え込んでいる。


その表情に、

憎しみも、迷いもなかった。


ただ、

虚ろな静けさだけがあった。


リディアが、先に動いた。


《神聖結界》


祈りの言葉を紡ぎ、

吹き荒れる力の奔流を遮ろうとする。


パリンッ!


一瞬で結界が砕け、

指先に鋭い痛みが走った。


血が滲み、

視界が揺れる。


「……まだ……!」


《神聖結界》!

《神聖結界っ》!


砕かれながらも、

一歩、また一歩。


野島へと近づいていく。


ルルカも足を踏み出した。


野島の傍らに駆け寄り、

小さな手で、

彼の袖を掴む。


「のじま……目を覚ますのじゃ……」


低い声。

だが、揺るぎはなかった。


「……あの姿が、見えんか……!」


傷を治癒しながらも血を滴らせたリディアは顔を上げ、

二人を見据える。


そこに敵意はない。

覚悟を持った、視線だった。


戦場の喧騒が、三人を取り囲む。


だが、

確かな事実が一つだけ浮かび上がる。


野島は、

一人で抱えるには、

あまりにも危険な存在だ。


ルルカの“守り”。

リディアの“救い”。


理由は違えど、二人は同時に、

お互いを認め合った。


リディアは、

血に染まった手のひらを見つめ、

言葉を絞り出す。


「……協力しましょう」

「あの人を、導くために」


「戦場にいる多くの命を守るために」


ルルカは小さく頷き、

野島の手を、ぎゅっと握った。


野島は目を閉じ、

初めて、かすかな声を漏らす。


「……離れろ……」

「何も……壊したない……」


再び、

野島の中心に力が収束していく。


「やめて!」


ルルカは叫び、

野島の胸へと手を伸ばした。


握りしめた手の平


――その温もりから。


瘴気が、吸われる。


奪う意志はない。

だが、力は止まらない。


――生きてほしい。


かつて、あの村で。

ルルカが願った、たった一つの祈りが、


野島の中へ、流れ込んでいく。


「っ……ぁ……!」


ルルカの身体が、崩れ落ちた。


膝をつき、地面に手をつく。


息が、できない。

視界が、揺れる。


野島の顔が、

泣いているように見えた。


言葉にならない声。


「だめええええええええっ!!」


リディアが野島を突き飛ばす。


そして、ルルカを抱き上げる。


その体温の、

あまりの薄さに、息を呑んだ。


ゆっくりと、野島を見る。


聖と魔を超越したヒーローではない。


ただ――


世界に捨てられて、

壊された者の顔だった。


「野島……聞こえる?」


「このままじゃ……

 あなたは、自分を許せなくなる」


「それでも……私は、そばにいる」


野島は、応えない。


ただ、

風だけが丘陵を走り抜けた。


その風はまるで、

世界そのものが、


彼を恐れて、

息を潜めているかのようだった。

力は、必ずしも意志に従うものではありません。

野島、ルルカ、リディア、それぞれの選択が交差する回でした。

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