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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第二章 勇者編

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泥に根ざす恩返し ~盗賊団の畑守り~(前編)

盗賊団の末路と、少女の涙が残した「畑」。

罪を背負いながらも根を張る者たちの、

ささやかな再生の物語です。

夕暮れの畑に、瘴気の残り香が黒い霧のように渦巻いていた。


黒ずんだ葉が風に揺れ、作物は傷つきながらも、

泥の下で根を必死に張っていた。


ゴチは鍬を握ったまま、空を睨むように眺めていた。

土臭い手が、汗でべっとりと濡れている。


「魔王様の約束……守る。畑が泣く前に」


ゴチの低い声に、コウが隣で鼻を鳴らす。


コウはいつも軽口を叩く男だ。

だが今日は、言葉が重い。


「盗賊団が逃げ出して、畑もこの有様だからな」


◇   ◇


瘴気に蝕まれた畑から逃げ出した盗賊団は、

村の端で一時的な隠れ家を探していた。


勇者レイジ――盗賊団に耕すことを教えた男

――が不在の時、畑を魔物が襲った。


「くそっ……」チャックが独り言のように呟く。

記憶がフラッシュバックする。


小さな少女が、畑の前に立ちはだかっていた。

ぼさぼさの赤髪に、角が生えかけた頭。


「人間のはたけに、踏み入ることは許さぬ」

魔物は少女など目に入らず、畑に迫っていた。


「ここはダメっ、壊さないで……畑の芽が……」


ルルカの声は震え、指先に瘴気が集まっていく。

心臓が、妙にうるさく鳴った。


「逃げろっ……ガキ一人で、何やってんだよ」


チャックが吐き捨てるように言ったが、誰も動かなかった。

少女が瘴気を暴発させ、倒れかけた瞬間――魔物が逃げ出していく。


「あなた達は来ないで! 瘴気は毒だから」


黒い瘴気が畑に漏れ出す中、

それでも畑を守ろうとする姿に、盗賊たちは凍りついた。


結局、何もせずに立ち去った。

いや、嘘だ。怒声を浴びせた。


「俺達の畑に何てことしやがる! 盗賊だからって嵌めやがったな!」


少女の姿に振り向きもせず、畑を後にした。

だが、あの光景が胸に棘のように刺さっていた。


「わらわは畑を守りたかっただけじゃ……」

ルルカの声が、風に混じって今も聞こえるようだった。


「なぁ、俺ら格好悪いよなぁ。

魔物からも畑からも逃げ出して、村のはずれでびくびくしてよぉ!」


チャックの言葉に誰も反応しない。

ただ、俯いて息をひそめている。


「何とか言えよ!!」


その時、森の方角から。魔物が現れた。


村人たちは顔を見合わせ、家へと逃げ込む。

勇者はいない。


「……行くか」チャックが静かに言った。


誰もが頷く。

鍬を、鎌を、槍代わりに手に取る。

かつて略奪で使った手つきだ。


だが、胸の中は違う。

熱く、泥のように重い。


魔物は巨大だった。

猪のような体躯に、瘴気の棘がびっしり。

牙を光らせ、畑をなぎ払うように突進してくる。


森からも人影が飛び出してくる。


「ゴチ、このままじゃ村に被害が出る」


「魔王様トノ、約束守る」


ゴチが先陣を切る。

【土壁鍬撃】――鍬を振り上げ、棘の隙間に叩きつける。

瘴気の棘が弾け飛び、黒い霧が散る。


「グォォオォ!」魔物の咆哮が夕暮れを裂く。


コウが横から鎌を滑り込ませる。

【雑草の舞】――脚を狙い、刃が肉に深く食い込む。

黒い血が噴き出し、土を染める。


「野島さんの教え、活きるぜ!」

コウの声が、重く響く。


「俺達も行くぞ! いつものやつだ。囲んで仕留めろ」


本当は違う。

哀れな旅人と獰猛な魔物では比べ物にならない。


チャックは後衛で、投げナイフを放つ。

棘の一つを削ぎ落とす。

誰も叫ばない。


怖さを言葉にすれば、崩れてしまう。


泥だらけの足で踏ん張り、息を荒げて応戦する。

ゴチの腕に棘が掠め、血がにじむ――


それはルルカの瘴気に似た、黒い疼きを残した。


コウの鎌が折れかかり、チャックのナイフが尽きる。



人は弱くても、根は生きようとする。

奪う者たちが「守る側」に変わる瞬間を書きました。

後編は明日投稿します。

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