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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第二章 勇者編

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勇者、スパイス革命を起こす ― 聖女と弟子とピリ辛の朝

勇者レイジの修行は、今日も筋肉と根性から始まる。

だが、ひょんな一粒の“白い実”が、村に新たな風を呼ぶ――。

「――はい、もう一回!」


朝日が昇る畑の端。コウは木剣を握り、

汗を滴らせながら素振りを続けていた。


「はっ、はっ、はっ!」


「いいぞコウ君! その調子や! 腕がちぎれるまで振れ!」


「えっ!? ちぎれるまで!?」


「ちぎれたら、鍛え直せばええ!」

野島は腰に手を当て、やけに偉そうに頷いている。


でも本人は、一切木剣を持っていない。


「野島さんは振らないんですか!?」


「俺はそのレベルにおらん」

「え、そうですよねっ、俺も早くそうなりたいです」


「そうそう。スキルは後から付いてくるもんや。

 ――知らんけど」

コウは顔を引きつらせながらも、必死に素振りを続けた。


その隣では、野島がのんびりとスクワットを始める。

「筋トレも大事やぞ! 素振りの合間に腹筋百回!」


「ひゃ、百回!?」


「修行ってのは根性や!

 スキルより根性! 精神力が全てや!」


「精神論ですか!?」


「そうや! 魂が燃えとれば何でもできる! 」


太陽が昇りきる頃、コウは地面に倒れ込み、動かなくなった。

「はぁ、はぁ……ぼく……これで強くなれるんでしょうか……」


「もちろんや。明日は二倍やな」


「……二倍!?」

コウは地面に倒れ込みながらも、拳を握りしめる。


「……わかりました。

 明日も、勇者様について行きます!」


「筋肉は裏切らん。聖剣より信用できるで」


野島は満足げに頷き、どこからかカエルの声が聞こえた。


◇ ◇


そして、昼の市場。

野島は野菜の値札を眺めていたところ、

見知らぬおばさんに声をかけられた。


「ねえ兄さん、ここでシシリは取り扱ってないのかい?」


「はぁ……シシリ? なんやそれ」

首をかしげながら、おばさんを見送る。


そのまま畑へ戻り、コウに聞いてみた。

「なあコウ君、シシリって知ってるか?」


「ああ、これですよ」

コウは懐から、白い小さな実を取り出した。


「へぇ、見たことないな

 ……ちょっと試しに齧ってみてええ?」


「どうぞ」


――カリッ。


「……うぇっ!? これ、胡椒や! ピリピリして辛いやつ!」

野島は思わず叫び、目を輝かせる。


――この世界、スパイス文化がないんか。チャンスや!


「胡椒?」


「そうそう、肉とかスープに振りかけると最高に旨くなる調味料や!」


コウは目をぱちくりさせた。

「えっ、そんな使い方を?

でも、王都では防腐剤として使うだけですよ。


普通の食事にかけたら、刺激が強すぎて“毒”だと思われます」


「毒ぅ!?」野島は大げさに後ずさった。


コウが慌ててフォローする。

「それに、稲の代わりにシシリを作付けしたら、

もうその畑は他の作物が育ちません。


意味がない上に、リスクが高すぎます」


「なるほどなぁ……この世界じゃ、スパイスは毒か」

野島は腕を組んでうなった。


そして、にやりと笑う。


「でもな、コウ君。レシピと一緒に売り込んだら

――いけるんちゃうか?」


彼の目が、不思議と商人みたいに輝いていた。


「シシリを、料理に使う……ですか?」

リディアは少し驚いたように目を瞬かせた。


けれど、野島が作ったスープをひと口すすった瞬間


――その表情がふっと和らぐ。


「……あら……おいしい……!」


「そうやろ?」野島は得意げに笑う。

「肉の臭みも消えるし、香りもええ。


ちょっとピリッとするけど、寒い夜には最高や」


「まるで……体の中まで光が通ったみたい」

リディアは胸に手を当てて、小さく息をついた。


「レンジ様、これ……王都で流行ると思いますわ」


「マジで? でも、誰に売り込むかが問題やな」


「でしたら、わたくしに任せてください」

リディアは微笑みながら、金色の髪をそっと払う。


その姿はまるで、聖女ではなく一人の王女の顔だった。


「商人の家に嫁いだ従姉がいますの。

珍しい香料や薬草の取引に詳しいはずです」


「なんや、めっちゃ頼もしいやん。

そしたら、俺はもう少しレシピを改良して――」


「――わたくしも、味見係として協力します」


「え、ええのか? 辛いでこれ」


「構いません。レンジ様が作った料理なら……」

リディアは頬を染め、スプーンを口に運んだ。次の瞬間――


「っ!? か、辛ぁっ!!」


「言わんこっちゃない!」野島が慌てて水を差し出す。


涙目のリディアが、それでも笑顔を浮かべる。

「でも……不思議ですわ。舌は痛いのに、心は温かい」


その言葉に、野島は少しだけ赤面した。

――この聖女、意外と根性あるな。


シシリのピリッとした刺激で、俺の心も熱くなったかも。


今回は畑よりも“味”の話でした。



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