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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第二章 勇者編

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おじさん勇者、盗賊団と交渉する。――剣ではなく干し肉で

勇者に盗賊討伐の初任務が訪れる。

無事に盗賊団を更生できるのか?


 まだ夜明けの光が、霧の向こうでかすかに揺らめくだけだった。

 リディアは、白い外套の裾を整えながら、

 祈りの言葉を胸の奥で結ぶ。


 村の広場では、野島の元に、ギルドの冒険者たちが集まった。

 馬ではなく、荷車と徒歩。貧しい村にできる限りの装備だ。


 野島が聖女に近づいてきて、短く言う。

「ここで待ったらええ」

「いえ、レイジ様……」

 リディアは微笑んだ。

「“加護”は使うためにあるのです。命を守るために」


 その言葉に、野島は短く息を吐いた。

(勇者の姿で土下座は見せられんからな

 出来れば置いていきたかったんやが…)

 そんな思いが胸の奥をよぎる。


 やがて出発の合図が鳴った。

 ルルカは荷車の影で、リディアの姿を見送っていた。


 野島と親しく談笑しているように見え、

 彼女は唇を噛んだが、結局言葉にはしなかった。


 森へ入ると、空気が変わった。

 湿った匂い、腐葉土の感触、そして――人の気配。

 一人の冒険者が手を上げ、全員が静止する。


「……この先、奴らの縄張りだ。斥候の足跡が新しい」

 低い声に緊張が走る。


 冒険者の一人が剣を握りしめ、野島に囁く。

 「勇者様、俺たちが先陣を……」


 リディアはその場に膝をつき、掌を地にかざした。

 聖印が淡く光り、微細な気流が周囲を包む。

「加護を付与します。恐怖を沈め、呼吸を整えてください」


 やがて前方から、鳥が飛び立つ音。

 全員が一斉に構える。

 ――敵は、もう気づいている。


 矢の影が一瞬、霧を裂いた。

 その直前、リディアの結界が光を放ち、数本の矢を弾き返す。


 粗末な皮鎧を着た男たちが十数人。

 笑い声の奥には、獣のような殺気が潜んでいる。


 ――こいつらが盗賊団か。


 野島は、額の汗をぬぐった。

 背中の荷車には、干し肉と水袋“交渉”のための供物だった。


 (思ったよりゴツいやん。

 でも、うまく話を持っていけりゃ……)


 焚き火の向こう、酔い潰れた連中の奥で、

 ひときわ大柄な男が椅子代わりの丸太に腰掛けていた。

 背中には獣皮のマント。腰には血錆びた大剣。

 噂の頭領〈チャック〉だ。


「……誰だ、てめぇ」


 野島は深呼吸し、歩み出た。

 乾いた枝がぱきりと鳴る。

 瞬間、全員の視線がこちらに突き刺さった。


「レイジ様、盗賊は毒を用います。危険ですわ…」

「大丈夫、聖女の加護はまだ効いとるし!」


野島は冒険者に武器を構えさせず、

両手を上げて堂々と呼びかけた。


「すんませ~ん、村の代表で来ましたぁ!

話、聞いてもらえますかー!」


そのあまりの調子に、盗賊は唖然とする。


「俺が首領のチャックだ。

俺たちはちょいと、食うために旅人を脅したかも知れねぇが

勇者様が直々にお越しいただくようなことはしてねぇ」


「旅人脅した時点で犯罪やけどな」


「お前達はすでに囲まれている。有り金置いて帰るんだな」


「まあ待て、あんたらも腹減ってるんやろ?」


野島が荷馬車に手をやると、影から矢がスッと飛んで地面に刺さる。

洞窟の湿った風が頰を撫で、土と腐葉の臭いが鼻を突く。


背後の冒険者たちに緊張が走った。


「アカン、早まるな!」

野島はそのまま荷袋を開け、村の干し肉と野菜を差し出す。

干し肉の塩辛い香りが、盗賊たちの鼻をくすぐる。


「腹の減った辛さはわかるーー。俺も森で何日も野宿したことがある。

つらいよなぁ。だから更生のチャンスや、うちの畑手伝いに来い。

報酬は飯と寝床や」


盗賊たちは顔を見合わせ、

やがて一人が呟いた。


「命の保証はあるのか?」

「そんなもんはない。俺も同じや!

ここにも殺されるかと思って来たんやで!」

油汗が額を伝わり、目に染みてくる。


「……勇者って、もっと怖ぇもんだと思ってた」

静かな沈黙のあと、数名が武器を置いた。


野島はほっと笑い、手を差し出した。

「まあ、誰でも腹減ったら悪さもするわ。

人間なんてそんなもんや」


 盗賊たちは呆然とした。

「……殺さないで生きる道、か」


 チャックの声は低く、掠れていた。

 やがて剣を引くと、唇の端を吊り上げた。


「おもしれぇ。試してみる価値はあるな。

 だが、裏切ったら首を刎ねるぞ」


「お互い様やで。首の保証書、なんて持っとらんし」


 野島は口の端を上げた。

 血の味を噛みしめながら、胸の奥で小さく呟く。


(――これで少しは、人が死なずに済むかもしれん)


その夜、焚き火の前でリディアが小さく呟いた。


「レイジ様……貴方は随分変わられましたね。

戦わずに勝ってしまうなんて」


「いやいや、勝っとらんよ。

実際、これからが大変やで」

まさか、全員村に連れて行くわけにもいかんしな。


「お前ら全部で何人おる?」

「こないだの襲撃で2人死んじまったから、17人か」

チャックが指折りしながら答える。


(多いわ!今更ダメでしたとは言えんしな。

ゴブリン集落しか考えられん。

 問題はルルカと聖女…いよいよ腹くくらなアカンか)


野島はリディアの笑顔を見ながら大きくため息を付いた。

ご愛読ありがとうございます!

おじさん勇者のドタバタ更生劇、いかがでしたか?



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