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追われる女魔王は39歳おっさん! 関西弁で村と共存すんねん   作者: ふりっぷ
第二章 勇者編

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おじさん、勇者としての初任務へ

魔王を討ったはずの勇者は、実は中身がおじさん。

肩車する幼女魔王と畑を耕しながら、

村での“第三の人生”を歩み始める。


翌日。


「勇者さまが魔王討ったのに畑仕事?」


村の青年コウは複雑な表情を見せた。


「せや、何もせず村に居候するつもりなない。手伝わせてくれ」


畑を耕していると、女魔王ルルカはさっそく畑に遊びにきた。


コウが追い払おうとするのを静止して、

野島は魔王を両手で抱え上げる。


「こらっ、さっそく約束を破りおってからに」


「だって…」


野島はそのままルルカを肩車する。


「ほら、畑や。見てみぃ?」


「……ばか、ばか者……」


幼女の頬が、ほんのり赤く染まった。


秋の陽射しが畑を照らしていた。


野島は肩の上の幼女魔王──ルルカを見上げ、

柔らかく笑った。


「ここは人と魔が一緒に耕した土や。

ゴブリンも村の若い衆も、みんなで作った畑やで」


ルルカはそっぽを向いたまま、

かすかに指先を震わせていた。


「くだらぬ……魔王たる我が耕すなど……」


「せやけど、うまいもん食えるで?」


その言葉に、幼女の腹が鳴る。


「……ゴブリンの飯は酸っぱかった」


二人のやり取りを見ていたコウが、鍬を担いで声をかけた。


「勇者さま、その子は?」


「えーっと、まあ……親戚の娘や」


「へえ、赤毛にマントの可愛い子だ。

何故だか、この娘には愛着が湧きます」


コウは笑って畑に戻る。


その日からルルカは、時に畝に座り込み、

時に苗を抜いて怒られながらも、畑に通うようになった。


村人たちは奇妙に思いつつも、

勇者の連れた子供として受け入れた。


夕暮れ、赤く染まる畑。


野島は鍬を置き、空を見上げた。


あの魔王も最初から冷酷非道だったわけでもない。


――最初は誰でも幼子や。


今のルルカを見ていればわかるわ。


……でも、村で暮らす以上“勇者”の顔を被らなあかん。


ただの農夫では許されん。


ルルカの小さな足が、野島の胸に軽く当たる。


土埃と汗の匂いが混じり、草の匂いが二人を包む。


「なぁ、ルルカ。やり直せるなら最初から農夫がよかったわ」

「ルルカ様と呼べ。それに、余は……農民にはなれん」


幼女は年齢に相応しくない皮肉な微笑を浮かべ

細い腕が野島の首にそっと絡まる。


風が吹き、遠くで鐘の音が響く。


***


次の日、野島は聖女リディアに腕を引かれ、

冒険者ギルドまで来ていた。


「レイジ様、この村に逗留するのであればギルドに登録せねばなりません。


そうでないと、せっかくレイジ様が退治した魔物が

他の冒険者から《横取り》と見られてしまいます」


「いや、この村の見回りだけで、ええーーいや、いいんじゃないか」


冒険者ギルドには村長が訪れていた。


今朝、ギルドに王国から討伐依頼が届いたのだ。


「勇者殿、北の街道沿いに盗賊団が出たようです。

人数も多く、お力をお借り出来ませんか?」


村長は断られるとは夢にも思っていない。


だが野島の顔は引きつる。


(盗賊討伐?

いやいや、いきなり人斬りミッションとか勘弁してぇな……)


かつての会社員魂がうずく。


相手の話も聞かずに殴り込むなど、営業的にあり得ない。


「とりあえず、話し合いの席は持てるんやろか」


「……は?」


村長が固まる。


「勇者様はお受けになると仰っています。

いらぬ心配は冒涜にあたりますよ」


リディアが後ろから割り込んでくる。


その視線は村長を射抜き、

俺には柔らかく――

聖女の仮面の下、貴族の棘がチラリと覗く。


「はっ、それはもちろん」


村長は平伏しかねない勢いでかしこまった。


***


「ふぅ」


村長と別れた後、尚も後ろを付いて来ようとする聖女を振り切って畑へ向かう。


野島は誰かに視られていないかきょろきょろした後、

そっと聖剣を握ってみた。


――手がピリピリした。


まるで静電気を浴び続けてるみたいだ。


ギルドの喧騒が遠くに響き、

野島の背筋に冷たい汗が伝う。


(……ヤバい、やっぱり俺、聖剣と相性悪いんちゃうか?)


でも、勇者が聖剣を持てへんなんて言ったら、

流石に怪しまれる。


野島は急いで農作業をしている青年を見つけ出す。


「なあ、コウ君。革手袋とか持ってないか?」


麦わら帽を片手に青年が首をかしげる。


「レイジさん、最初は手の皮が剥けるかも知れませんが、

だんだん硬くなってきますよ。農業はそういうもんです」


「いや、そうやない! 防具として使いたいんや!」


「ああ、そっちですか。なら――父の形見の防具一式、差し上げます」


「ホンマか!? 助かるわ!」


「ただし、一つだけ条件があります」


「ん?」


「僕にも、剣技を教えてください」


その目は真剣だった。


野島は少しだけ考えて――そして、にやりと笑う。


「よっしゃ。勇者の剣技、叩き込んだるわ」


そして、肩をすくめて一言。


「……知らんけど」


農村に、気の抜けた風が吹いた。


その背に、幼女魔王が不満げにしがみつく。


「勇者が盗賊退治など滑稽な、余なら一撃で片をつける」


「アカンアカン。そういう“片”の付け方したら、また畑荒れるやろ。

ルルカはお留守番やで」


「また甘いこと言って命を落とさぬようにな」


幼女魔王は背後で腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。


「俺も何度も死ぬのは勘弁だ。ルルカを悲しませたくない」


「なら、いざという時は武力。肝に銘じておくのじゃな」


ルルカは腹にパンチを打って来た。


結構痛かった。


――でも、その小さな拳の温もりが、野島の胸に残る。


「わかった、ルルカ。約束や。」


幼女魔王はふんと鼻を鳴らし、そっと背中に寄り添った。


気の抜けた風が農村を吹き抜ける中、

野島は遠くの街道を見つめた。


――話し合いが決裂したら?

聖剣が俺を拒むなら?


第三の人生の、最初の本当の“戦い”が、

静かに迫っていた。


勇者ボディでも、聖剣より鍬が似合うおっさん野島。

どこもかしこも綱渡り状態です。

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