【96】安全なレベル上げ 後編
「……数が多すぎたな。」
複数のゴーレムからの猛攻を受ける黒蓮。レベル差とサイズ差があるため、黒蓮の攻撃は基本かすり傷だがゴーレムからの攻撃は致命傷。黒蓮がゴーレムにまともにダメージを通すには強力なスキルを発動する必要があるが当然そんなものは後隙が大きく、一撃が致命傷になる可能性があるため、今はそういった物が使いにくい。
この状況を打開しうる属性増幅系のスキルが使える金華は三体のゴーレムと必死に追いかけっこ中で、到底それらのスキルを発動出来るような隙がこのままで生まれるとは思えない……
そんなふうに一度止めるべきか考えていると黒蓮の方で変化があった。ゆっくりとではあるものの、黒蓮に魔力が集まって行っているようだった。
いやそうか、それがあったか。【乾坤一擲】確かにそれが発動出来れば状況はひっくり返せる。けど、現状だとチャージ中に併用は不可能……【乾坤一擲】をチャージしながら【回避】【受け流し】が使えないからあんなに追い詰められている状況でチャージし切るのはかなり厳しいはずだ。
少なくとも、自分が黒蓮と同じ状況に置かれたらそんな決断を降す前にやられちゃっている。さすがの運動能力と言わざるおえない。
ほんと、あのデカ乳でよくあんなに激しく動けるな………うん。
「ハァァァ!!!!!」
驚異的な事に、黒蓮は何度か危うい場面こそあったものの攻撃を全て凌ぎ切り、なんと【乾坤一擲】の発動可能な状態までこぎ着けて発動させて見せた!
【乾坤一擲】と〈幽桜の鞘〉の能力である【チャージ】のバフが乗った状態で黒蓮【居合】【飛斬】を発動!放たれた斬撃は膨大な魔力を含んでおり、極光を伴って斬撃を飛翔しその道中あるものを全てを切り裂いた!
斬撃の軌道は完璧であり、黒蓮の事を攻撃してた近接型二体と金華を攻撃していた近接が一体を上下に両断してみせ、そのまま奥にいる遠距離型に迫ったが、さすがに距離があるため回避されてしまった。
そして斬撃は部屋の壁に着弾……まぁこの程度ならダンジョンは問題ない。
「ふぅぅ」
残心、黒蓮が玉のような汗を流しながら深く息を付いている。【乾坤一擲】をチャージしながら敵の攻撃を回避しながらタンク型以外が一直線に並ぶように誘導するなんて並大抵の事じゃない凄いことをして見せたら、肉体的にも精神的にも疲弊してそうなってしまうのは分かる…けどまだ敵が残っている中でその隙は致命的だ。
黒蓮の近くまだいるタンク型が、黒蓮の事を叩き潰すように上から盾を叩きつけた!
ーーーガシャン!!
「ぐっぅ!?」
「お姉ちゃん!!」
激しい音が鳴り響いた、しかし黒蓮は潰れて地面のシミにはなっていなかった。本当にギリギリで反応したのか、スキルでやり過ごす事は出来なかった見たいだけど、それでもしっかりと両手で受け止められており、すぐさま潰されてしまうことは一件無さそうに見えるが、受け止めた時の衝撃でやられてしまったのか体の節々から出血している様子が見て取れ、もしかしなかくても骨もやばいかもしれない。
そんな黒蓮を心配して金華が狐状態のまま敵の間を縫って移動。タンク型の移動速度が遅い事と狐姿の金華が小さい事もあってするすると移動して黒蓮の元に簡単に金華はたどり着いた。
「『回復』」
「ちょっ、金華!離れなさい!」
「いーやーだー!『攻撃上昇』これでもうちょっと頑張ってお姉ちゃん!」
金華は黒蓮が負ったダメージを『回復』で回復し、『攻撃上昇』で黒蓮の耐えをサポート。そしてその場で【魔力開放】【環境改変】【天候改編】の順で発動し、周囲の環境を激変させた。
元はただのだだっ広い訓練場だった場所が一瞬で灼熱の地へと変化し、あらゆるものを干からびさせんとばかりに強烈な光で太陽は煌々と当たりを照らし、地面は融解を初めマグマへと変化していく!
「き、金華?」
そんな急に一変した周囲の状況を見て黒蓮は慌てた様子で金華に話しかける。先程の運動と疲労から来る汗とは違う、熱せられた事による汗を滝の様に黒蓮は流している。
まぁ、熱中症どころか全身火傷を追ってもおかしくない環境に激変したわけだから、さもありなんだ。
「お姉ちゃん【属性付与】は?」
「無理に…決まってるでしょ」
息も絶え絶えの様子で黒蓮が答え、金華は残念そうにしょんぼりした様子を見せた後矢筒から取り出した矢を弓につがえて黒蓮を押し潰そうとする盾目掛けて真上に放った。放たれた矢は属性効果増幅-大の効果によって轟々と燃え盛る炎を纏って飛翔し、押し潰そうとしてきていたゴーレムを盾ごと焼き貫いて見せた!
溶解し溶け落ちゴーレムの残骸を黒蓮が力任せに押し退けて横に降ろした。これで後は遠距離型4にタンク型2だ。黒蓮も金華も大技を撃った事もあって魔力が大きく目減りしており、スキルや魔法の発動はあと1回が限度に見える。属性系の維持は何もしなかったとしても三十秒ぐらいが限界のはずだけど……ここからどうするのか。
黒蓮はフラフラした足取りではるものの立ち上がり、金華は次の矢を弓に番えて、最も近くにいるタンク型に向かって矢を放った。放たれた矢は先程と同様に燃え盛る炎をまとって飛翔、タンク型はこれを盾で防いで見せたが、盾もろとも焼き貫かれてしまった。
しかし、先程の様に死角から密着状態で撃たれた訳では無いためか、矢の軌道が反れて盾の上部こそ破壊出来たもののタンク型本体を破壊するには至らない。
矢で射抜かれたタンク型は金華の事を脅威の認識したからなのか、簡単に倒せそうな黒蓮を無視して盾を持っていなかった方の腕を金華目掛けて薙ぎ払った!
「わわっ!」
床を削るように振り払われるタンク型の腕。慌てて金華はゴーレムから距離を取り攻撃を躱そうと試みたものの、一番近くにいるタンク型を攻撃したのが仇となり間に合わずに攻撃を食らう……かに思われた。
しかしなんとここで、疲労困憊のはずの黒蓮が素早い動きで金華とタンク型の間に割って入り【受け流し】でタンク型の腕を弾き上げ、金華を助けた。
「お姉ちゃん!」
「早く…片付けなさい」
黒蓮に助けられた金華が嬉しそうに声を上げた。黒蓮は本当に限界が近いらしく片膝をつきながら早く倒し切る様に焦った様子で金華を急かす。
「うん!【三連矢】」
【三連矢】のスキルよって連続的に放たれた三本の矢は一本が最も近くにいたタンク型を破壊し、もう二本は少し離れた位置いるタンク型を二射目で盾を三射目で本体を撃ち貫いた。
これにより2人は近接型のゴーレムを全て撃破することに成功したが……まだ遠距離型が四体も残っている。
四体の遠距離型ゴーレムから離れた無数の矢が二人を襲った。二人はこれを撃破したゴーレムの残骸を盾に防ぎきり、金華が反撃で矢を放って一体倒したところで【環境改変】と【天候改変】の効果がきれ、ダンジョンの自己修復機能によって変化した環境が急速に元の状態に戻って行く。
これによって二人の火力は大幅にダウン。二人の魔力はもう底を付いているだろう、タンク型や近接型と比べれば耐久性で劣る面があるとはいえ腐ってもゴーレム、耐久性は折り紙付きだ。二人はこの局面をどう乗り越えるのか。
黒蓮はもうほんとに動けなさそうだし、果たして金華だけどうにか出来るのか…一応弓矢にはデフォルトで神属性が着いているからダメージは通るはずだけど。
金華は残骸から勢いよく飛び出すと、すぐさま遠距離型から矢が放たれる。しかし金華は飛来する矢をものともせずに時にゴーレムの残骸を盾にし、時に回避しながらゴーレムに迫る。
順調に迫り来る金華から最大限距離を取るためかゴーレム達は部屋の角へと移動していく。
金華はその事がわかっていたがかのように移動を続け、遠距離型同士が邪魔で斜線を通しにくい場所まで移動すると、遠距離型の射撃部位目掛けて矢を放った。
放たれた矢は遠距離型の矢を放つ機構になんと見事命中してそのまま破壊!遠距離型一体から攻撃能力を奪い取った。
金華はそのままの流れで、他の個体の射撃機構も同じように破壊して見せ、そのまま遠距離から引き撃ちする形で倒しきってみせた。
金華ってこんなに弓矢の扱い上手かったけか?…改めて思い返してみると…うん、前からこれぐらい上手かった気がする。二人とも本当に凄いな。




