【95】安全なレベル上げ 前編
「それじゃ【命の生成】ドッペルゲンガー…」
今回の護衛依頼は街中…敵はほぼ間違い無く人だ。そして…思い返して見ると二人は直接人と戦ったことは無い、死体を目にした事はあって殺した事は自分が知っている限りではなかったはず……
いや、そういえば金華はトドメを刺したことはあったか?確か故郷の村の生き残りにトドメを刺してた、今思い返して見ると何か変だったような……
「ど、ドーン!なんか変なのが出てきたわ!?」
黒蓮が慌てた様子で床の上でグネグネと蠢く黒いゲル状のものを指刺してそんなこと言う。
「ドッペルゲンガーだ、姿形はもちろん種族や職業スキル構成までコピー出来る」
ドッペルゲンガーに命令して適当な人に化けさせる。具体的にはこの世界に来てから何度か戦った山賊共だ、本来ならこの程度の連中は2人の相手はならないが、ドッペルゲンガーのレベルと階梯は二人に合わせてあるから普通に戦えはするはずだ。
「…ドーン貴方人も作れたのね?」
黒蓮が山賊に化けたドッペルゲンガーを見ながら驚いた様子で言った。
「いや、ドッペルゲンガーは人じゃなくて魔物だ。そんな事より準備は良いか?」
「え、ええ…大丈夫よ」
黒蓮は少し動揺しているみたいだけど多分大丈夫だろう。
「それじゃ始めよう。ヤレ」
山賊に化けた五体のドッペルゲンガー達がそれぞれ武器を構えて二人襲いかかった!
ちなみに地形は訓練室…障害物が何も無いだだっ広いだけの部屋だ。
先制攻撃を仕掛けたのはやはり金華だ。【三連矢】のスキルを発動して連続して矢を放ち、一番近くにいたドッペルゲンガーを攻撃した。放たれたは正確にドッペルゲンガー身体を撃ち抜いたが、致命傷には程遠く…しかし怯ませるには十分なものだった。
とはいえ、相手は一人では無い。弓持ちが一人、攻撃を受けて怯んでいるのが一人、それでもまだ三人いる。
2人が黒蓮の方へ、もう一人の盾持ちが金華の方へ向かった。
黒蓮は敵全員を巻き込む様に【狐火】を放った。青白く冷たい炎が敵を襲った。しかし、黒蓮は魔法剣士のようなステータスになっている為、同格をどうにか出来るほど火力をこの【狐火】は有していない、つまり……
「キャッ!」
黒蓮の狐火の中を突っ切って来ていた敵に、黒蓮は気が付くことが出来ず良い一撃をもらってしまったが…同格と言ってもあくまでそれはレベルや階梯に置いてだけの為、装備には圧倒的な差がある。だから致命傷にはならないが…危ないから敵が見えなくなった時は気をつけて欲しい。
敵の攻撃をもろに食らってしまった黒蓮は一旦後ろに下がって構え直して【居合】で自分を攻撃して来た敵に反撃するが、これは後ろに下がって回避されてしまった、そしてもう一人が後隙を狙って黒蓮に切りかかったが、黒蓮はこれを【回避】で避けて反撃で切り付けた。
黒蓮が使う《《夜断の太刀》は山賊風情が使う皮の鎧で防げるものでは到底無く、通常攻撃で容易く切り裂かれ、赤い鮮血が舞った。
「お姉ちゃん光を!」
「わ、わかったわ!」
金華の呼び声に答え、黒蓮は【属性付与】を発動して光属性を金華と自分に付与した。そして、それと同時に金華は【環境改変】【天候改変】を発動させた……ところで金華へと近づいて来ていた敵が金華に辿り着いてしまった。
敵は金華目掛けて勢い良く槍を突き立てようとした。しかし金華はこれを軽く身体を捻って回避し、そのまま至近距離から矢を放った。
放たれた矢は正確無比に、攻撃してきた敵の頭に突き刺さって…強力な光と共に頭を消し飛ばした。
「すごっ」
金華が攻撃の結果に驚きの声を上げだ。
【環境改変】【天候改変】による属性補正プラス弱点補正のおかげで威力は通常の倍以上まで上がっているはずだからこの結果も当然だろう。
黒蓮は敵の追撃を【受け流し】で難なくいなし、返す刀で敵を切り裂くと、血を吹き出すまもなく真っ二つに両断!両断された敵は一瞬で蒸発した。蒸発した敵と共に黒蓮を責め立てていた敵はあまりの事に動揺した素振りを見せて動きが止まった。
その隙を見逃さずに、黒蓮が返す刀で敵を切り伏せ見せ、残すは弓矢持ち一人となった。その最後の一人は金華が放った矢をどうにか躱して見せたものの、その隙に一息で近付いた黒蓮が他と同じように倒して決着となった。
「二人ともお疲れ様」
そう2人に声をかけたが、二人とも心ここに在らずというか…なんか変な感じだ。
「…ドーンなんというか、弱すぎない?」
「二人と同格なのは階梯とレベルだけなら…このぐらいだ。スキルも魔法も知らなければ、装備も何でもない奴らだし」
「そういえば使って来なかったね!」
「そこら辺の山賊のコピーだから当然だけどな」
「ねぇドーンもっと強いの出せないの?」
「もちろん出せる」
相性とか数とか、色々考慮すると二人のレベル上げをするのに効率が良いのは弱点属性がしっかりとある第二階梯の四十レベルぐらいの敵のはず。効率を考えて一撃で倒せるぐらいの敵で……2人の反応的にある程度手応えもあった方がいいはず。
「【迷宮門】こいゴーレム」
【迷宮門】を使ってゴーレムプラントとここを繋げ、待機状態のゴーレム達を取り敢えず十機ほど引っ張ってくる。
ゴーレムは基本的に高い耐久性を持っているものの、弱点部位であるコアを攻撃されると脆い。弱点属性もある程度耐性を持たせているから瞬殺される事は無いはずだ。
「どうだ?」
「ずんぐりむっくりしてて可愛い!」
「大きいけど、あんまり強そうには見えないわね」
2人からの評価はあんまりって感じみたいだけど、実際に戦えばその強さが分かるはずだ。
「準備は良いか?………それじゃ行け!」
呼び出したゴーレムは十機、編成はタンク3、近接3、遠距離4になっている。
タンクの三体は大きな盾を壁の様に構えて二人に突撃し、遠距離はそれを飛び越えて二人に当たる様に
無数の矢が山鳴りに放たれた。
対する二人は冷静に、【鎌鼬】で飛来する無数矢をその風の刃で弾き飛ばし、迫り来るタンクから進行方向からそれる事で回避したが、後詰の近接が先程の時同様、黒蓮2、金華1で襲いかかる。先に交戦が始まるのは当然前衛の黒蓮だ。
近接のゴーレムは武器や防具を持っておらず、その鋼鉄の拳を持って黒蓮に攻撃するが、黒蓮は素早い身のこなしを活かして難なくこれを回避し、先程と同じように【居合】で反撃をしたが、これは事前に【コーティング】が施されたゴーレムの鋼鉄の身体を切り裂く事は出来なかった。
ちなみにこいつらのような量産型ゴーレムが使用可能なスキルは階梯とイコールになっている。つまりこいつらは2人と違ってたった二つのスキルしか使えない。
それでも素材補正とサイズ差補正と人数差を考慮すれば十分に戦える筈だ。
黒蓮は【居合】が殆ど通らなかった事に驚き、敵の反撃を今度は大きく距離を取って躱してしまい、そのその結果、遠距離攻撃に晒されてしまった。
黒蓮は飛来する追撃として放たれた無数の矢を【回避】で避けることに成功、もう一体の近接型の攻撃を【受け流し】でやり過ごし【牙折】を放って反撃するがやはりこれも致命傷には程遠い。
ちなみに弱点部位であるコアは胸部の中心にある為この調子だと少し厳しいか?いや、まだ属性系を使ってないから分からないか?
そう思って金華の方に視線を向けると金華は【変化】を使ってその身体を子狐へと変化させ、【幻影】も併用して逃げ回っているようだった。
しかもタンク型二体が金華を追い込む様に迫っており、止めどない遠距離攻撃も相まって持ち直すのはそう簡単な事では無さそうだ。
黒蓮も金華が追い詰められつつある事に気がついたようだが、動線を塞ぐように立ち塞がるタンク型と近接型二体による猛攻をどうにかやり過ごして金華を助けるのは困難を極めるだろう。
「……数が多すぎたな」




