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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
商人と月影祭
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【89】傭兵ギルド

「ここがこの街の傭兵ギルドか」


ルドさんから受けた…受ける予定の護衛の依頼を受ける為に、この街の傭兵ギルドに移動報告しに訪れていた。


傭兵ギルドの外観は、大きな街にあるだけあってか傭兵登録をしたフェルの町の傭兵ギルドよりも立派な物になっており、酒場が併設されているのか昼頃という事もあってかなり賑やかな声が聞こえてくる。


黒蓮を先頭に傭兵ギルドの中に入ると、中は想像通りの喧騒で……


「バカはてめぇらだろ!!」


「黙ってろ裏切り者が!!」


「そうだ!そうだ!」


想像よりも随分と荒れ果てている上、怒号の物が傭兵ギルド内で飛び交っていた。


「こ、これは…」


黒蓮が同様を隠せない様子でそう零すのも仕方がないと思える参上が目の前で繰り広げられており、武器が抜かれて居ないのが不思議なぐらいだった。目立つ見た目をしている自分たちの入場にも気が付かない程なのだからよっぽどだろう。


「あ、あの人馬車の…」


一旦出直そうかと、そう言う思考になった直後金華が()()()()と呼ばれていた方の集団をそう言って指差す。


金華に促された人物を見ると確かに見覚えがあって……そうだ、確かエドワードさんを護衛していた傭兵団だ、全く関わってないからパッと見じゃ分からなかった。


「てめぇらはよぉ!流って物を……あ」


そして思い出すためにじっと見ていたのが良くなかのか向こうもこっちに気がついたようだった。これで…引き返すのは良くないよな、傭兵は舐められたらおわりだし。


軽会釈して返し、黒蓮の背中をつついて先に進む様に促し…


「ひゃぁっ!?」


「こ、黒蓮?」


黒蓮の背中をそっとつつくと、予想外に随分と可愛らしい悲鳴が上がった。黒蓮自身も驚いていたのか少し呆然としていた様子を見せていたが、直ぐにこちらに振り向き、恥ずかしそうに赤く染まった顔で生きなりこちらを睨み付けてくる。


「ちょっと、どこ触ってるのよ!」


「えっとごめんなさい。」


「ふんっ」


見るからにご機嫌ななめな様子でそっぽを向かれてしまった。背中をつついたのは失敗だったか、素直に押した方が良かったか?それとも囁いた方が丸かっただろうか?保身的には黒蓮を追い抜いてカウンターに向かうのが良いんだろうけどそれじゃ示しがつかないし?


「…とにかく移動報告しに行こう、な?」


「….…わかってるわ」


黒蓮は不機嫌な様子だったが、わかってはくれたのか鼻を鳴らしてそっぽを向きながらをもギルドのカウンターへと移動し始めてくれた。ちなみにギルド内の喧騒のおかげでこの一幕を経てなお自分達は注目されておらず、むしろ気が付いている人の方が少なそうだった。


彼らの警戒心の低さが心配になると同時に、それ程熱中する争いの火種はなんなのか気になり、好奇心がくすぐられる…が、まぁわざわざ厄介事に首を突っ込む理由は無いし。


床に転がった謎の液体や料理を避けながらカウンターへ向かう。受付にはフェルの町の時とは違って美人の受付嬢が数人待機しており、彼女らは自分達の存在に気が付いているのか何処か緊張した面持ちだった。


「少しいいかしら?」


「は、はい!なんの御用でしょうか!」


黒蓮は入口から最も近い位置…正面の受付に話しかける。上手いこと気持ちを切り替えたらしく、その声には先程のような不機嫌な感じは含まれていなかったが、それでも受付嬢は緊張した様子だ。


「移動申請をしたいのだけど」


「依…移動申請ですね、わかりました。それではギルドカードを見せてください」


「わかった」


黒蓮ら受付嬢に促され、予め準備していたギルドカードを提出する。


「フェル…確認してまいりますので少々お待ちください」


そう言って受付嬢はバックヤードに下がって言った。


「どうしただろう?」


金華が下がって行った受付嬢をみて何を確認しに行ったのかと疑問を口にした。


「別の国からの移動だからな、ギルドカードが本物かどうか確認しに行ったんだろ。隣町とかならともかく、他国の隣接すらしてない町で発行されたギルドカードの真偽の判断には資料が必要なんだろう」


「なるほど!」


金華が納得した様子で頷く。


「あの…すみません」


金華とそんな話をしていると背後から声をかけられた。振り向くとそこには先程まで争いの渦中に居たはずの、例のエドワードさんの護衛の男が居た。男は何処か申し訳わけなさそうな様子だったが、それでも話しかけて来たという事は何かしら自分達に用事があるのだろう。


「あの時助けた人よね?私達になんのようかしら?」


「あ、いや、ようって程の事じゃないんですが。あの時助けて頂いたお礼をと思いまして」


ガタイのいい筋肉質な男が女性としては背が高いとは方とは言え、黒蓮にとてもかしこまった様子を見せるのは何処かおかしな感じがする。もちろん理由も行動も至極全うなものだけど。


「それなら別に気にしなくていいわよ?ルド商会からいっぱいもらったし」


ーーーザワザワ


黒蓮がルド商会の名前を出した途端、少し静かになって来ていたギルドの中がまた少しだけ騒がしくなる。反応に肯定的な物は殆どなくルドさんの言っていた通り商会の立場はあまりいい物では無さそうだ。


「…あんたらも大変だな?」


「?まぁそうね」


「もしかしてあの依頼を受けたのか?」


「あの依頼?踊り子の護衛依頼のことかしら?」


「!そうだ」


「それなら受ける約束をしたわ」


「そうか!…どうか彼女の事どうかよろしくお願いします」


男は黒蓮が依頼を受ける約束をした話を聞いて安堵した様子を見せた、直後に深々と頭を下げた。


「依頼の話をした時にきな臭い話は聞いたけどさ!そんなに酷いの?」


金華が頭を下げ続ける男に問いかける。


「そりゃもう…営業妨害は当たり前、暴漢が殴り込んで来る事もざらにあります。しかもだんだんと強くなって来ていて…情けない話ですが自分達では対処が難しくなって来ていたんです。彼女は…夢に向かって全力で本当にに良い子ですし……とにかくかよろしくお願いします。」


男の言葉から並々ならぬ熱量と願いが感じとれる。例の踊り子に常ならぬ感情を抱いている様にも、自らの不甲斐なさに憤慨しているにも見えるが。とにかく必死に自分達に懇願し、彼女の救済と庇護を願っている。


「まぁ私達が受けたからには安心しなさい、知っての通り私達は結構強いから」








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