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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
商人と月影祭
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【84】行商人

特に問題が起こる事もなく食材集めは滞り無く完了し、〈簡易拠点〉を設置した場所に戻って来た。相変わらず魔物が全く居ないのが不穏だけど、何かこれといってできる事があるわけじゃ無いし、危険な訳でも無いから気にしなくていい……筈だ。


最終的に採取出来た食材はつくしの他にニラ、シロツメクサ(クローバー)、芋っぽい根野菜、それと何処からか金華が持ってきたカブトムシの幼虫っぽい両手サイズの芋虫…金華の【魔物鑑定】曰く此奴も食えるらしい。

というか、森を出てから初めて出会った魔物が何も出来ない芋虫だとは…ここまでずっと魔物がいないからそう言う地域なかと思い初めていたけどそんな事は無かったらしい。


「それで…集めた良いけど、こんなの本当に食べれるの?」


食材集めで汚れた体をタオルである程度拭き終えた黒蓮がそんな事を聞いて来る。

正直自分も半信半疑だけど、つくしやニラはこの世界に来る前も食べれるって話は聞いた事あるし他のも多分大丈夫…


「食べる事自体は問題ない筈だ……もっと、味は分からないが」


「……私やっぱりお肉だけでいいわドーン」


何か嫌な予感でもしたのか、目を逸らしてそんな事を言う黒蓮。せっかく皆で集めたのに…と思わなくも無いが集めようって言い出したのは自分だしあまり強くは……


「ちょっとお姉ちゃん?」


「何よ金華」


「好き嫌いしないで食べなさいって私には言ったのにお姉ちゃんは食べないの?」


「うっ…そんな事言ってたかしら?」


黒蓮は金華質問に一瞬詰まる様子を見せたものの、まるで何事も無かったかのように惚けて見せる。


「言ってたよ!ねぇドーン!」


「あ、ああ」


「……」


ジィーーー


「わ、わかったわよ。私も食べるわ」


金華の視線に耐えかねた黒蓮は諦めた様子で自分も食べると宣言し、それを受けて金華は満足げに頷いた後くるりこっちを向いた。


「美味しい料理、期待してるねドーン!」


「…もちろん」


なんか、こっちに飛び火したような気がしないでも無いけど、元から美味しく作りはするつもりだったから問題は無い筈だ…実際にどうなるかは別として。


……こういうのは大抵揚げ物にすれば美味しくなると相場が決まってるけど、念の為レシピを確認しよ。



「ん〜まぁまぁね」


「私は美味しくと思うよ?」


「それは良かった」


アスパラは茹でお肉の添え物に。シロツメクサは花はお茶に、葉っぱ軽く湯煎してサラダに。芋虫は念入りに焼いた後に食べやすいサイズに切り分け、衣を付けて揚げ物にした。料理をするのは殆ど初めてだったけど案外何とかなって良かった、まぁ殆どレシピブックのおかげなんだけど。


しかし…なれない事はするもんじゃ無い、採取に料理と思ったより時間がかかってしまった。【命の生成(クリエイトオブライフ)】で料理系スキル持ちと採取系スキル持ちを生成して、次からは任せよう。


そんなこんなで昼食を終え、あと片付けを終えて一息着いた後に出発した。


相も変わらず草原がずっと続いている上に魔物もおらず代わり映えのしない光景が続いたが…振り返っても出て来た森が見えなくなった頃、ようやく人口物を発見した。まぁ人工物と言っても土が硬く踏み固められただけの道路を見つけただけだけど、人工物は人工物だ、最近使ったポイ形跡もあるし辿って行けば町や村に着くはずだ。


どっちに行くか、〈運命の緑糸(えんし)〉の指す方に道は伸びて無い…というか道がまっすぐ伸びて無いからどっちに進んだ方が良いのか分からないな。


「……?」


「どうした金華?」


「ん〜何かさ、あっちの方で戦ってる音がしない?」


そう言って金華が道が伸びる一方を指さす。金華の指さすを指す方向を改めて見てみるそこそこ起伏があるせいかそれらしき物は目視出来ない。黒蓮も金華が言っている音が聞き分けられたのか様子を伺うようにこっちを見ている。目視での確認を諦めて【魔力探知】の範囲を金華が指さす方向に伸ばし行く、するとそこには幾つかの人間の反応を見つけられた。


距離があり上に迷宮の補正も無いためはっきりとは見えないが一人が複数人に囲まれ、そして一人を囲んでいる複数人が激しく動き消えて行っている。金華の話からして恐らく中央の一人が護衛対象で激しく動いているのが護衛と襲撃者だろう。


「確かに向こうで殺し合いが起きている。場所を考えると馬車を盗賊が襲ってるのか?」


「大変じゃない!早く助けに行かないと!」


そう言うや否や駆け出して行く黒蓮。個人的には面倒事になる予感がひしひしと湧き上がって来るのを感じるから出来れば関わりたく無いが…まぁそう言う黒蓮だから自分も救われた訳だしここで文句を言うのは違うだろう。それに、面倒事が起こるのは遅かれ早かれだ、小事から慣らして行くのは悪い事では無いはず。


先を行く黒蓮を金華と追い掛けて行く、ものの数秒で件の場所に辿り着いた。そこでは予想取り集団での殺し合いが起こっており、争いの中心には予想通り荷馬車らしき物があった、戦いは現状護衛優勢で進んでいるようだが被害がそれなり出ており、何かの表示に形勢逆転してもおかしくない状況だ。それを見るや否や、勢いのまま突っ込んで行こうとする黒蓮を引き止めると、機嫌が悪そうに睨まれるがこのまま突っ込ませる訳には行かない。


「なにドーンっ早く助けに行かないと」


「助けるってどっちを」


「そんなの馬車の方に決まってるじゃない」


「まぁそれはそうなんだが…こう言う場面じゃ誰何と了承が必須だ、もしあの馬車が密輸なんかをやってる悪い馬車だった場合、俺たちは馬車の護衛じゃなくて襲撃者に協力するのが正道だろ?」


「それは…そうね。けど誰何だけでそんなの分かるのかしら?」


「悪いことやってる奴ら自分の所属を言えない物だし、所属が分かれば善悪の判断は大抵の場合出来るはずだ。」


「それもそうね、早速言って来るわ」


深く頷いた黒蓮は戦場に近付くとこの場にいる全員に聞こえる様なおおきな声で叫んだ。


「私、傭兵ギルド所属の黒蓮って言うのだけど助けが必要かしら!」


すると戦って居たほぼ全員が予想外の乱入者の登場に同様した様子を見せたが、戦いに必死になっているのか返答が得られず、黒蓮が何か「間違えたかしら」と思い初めた直後、騒動の中心にある帆馬車が動き、中の人がが頭だけ出しておおきな声でこう叫んだ!


「ルド商会のエドワードと言います!報酬はお支払い致しますので救援をお願いします!」


「わかったわ!ドーン!」


「あぁ『加重(ヘビーウェイト)


ーーーガクンッ!


「ぐっ!?」


「なんだ…こりゃぁ!?ゥゥッ」


重力魔法の効果で馬車の周囲で争っていた全て対象に対して発動した。そのリアクションは三者三様だった、レジストされるような事も無く全員が地に伏した、一般的な傭兵と盗賊の区別なんて付かないし、事故は起きない様に注意してやったからそこまで問題ないはず、まぁ印象は悪くなるかもだけど。


「それで、どれがアンタの護衛だ?」


「…え、あ、はい!」

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