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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第二章】呪われし国と無敵の天使
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【73】苗床の巫女と魔王

side るし


「やぁお嬢さん、久しぶりだな…まぁあれからまだ一週間もたっていないが」


例の砦、その内側にある大穴の底、その光さえ届かない深い深い穴の奥底で、ほのかに灰色の光を纏った赤黒い肉塊の上降り立ったるしは場の雰囲気にそぐわぬ態度でそう言った。


【あな…なたです…か、かあの…子は】


するとそれに反応するように、何処からとも無く微かな声が聞こえてくる。その声は一言でかすれかすれでとても聞き取りずらく、予め言葉が帰って来ると身構えて無ければただの唸り声にしか聞こえないだろう思える程だ。


「まだこの地にいる」


【ナゼ!】


るしがそう答えたの同時に足元の肉が激しく脈打ち、肉塊が帯びる灰色の光がその()()に呼応する様に強く輝きを増し辺りのおぞましい情景、声の主の姿顕にある。


先にも言ったが大穴の底には微かに灰色の光を纏った赤黒い肉塊があるのだが…輝きが強くなった事でその肉塊が半径数百メートルはあるであろう大穴の底、その隅から隅まで隙間無くミチミチに詰まってい居る上、それでも収まり切らないのか肉塊がまるで蔦のように壁を()()()()()()()()のが見て取れる。


そして大穴の中心、うずたかく積み上げられた赤黒い肉塊の上に居た。2、3m程度の体躯の赤黒い体を持った女性型のそれは下半身が完全に肉塊に埋まったその胸元、積み上げられた肉塊の頂点に、身体の隅々まで真っ黒に染まり、節々が歪に膨れ上がった身体の女性が、生贄を想起させるポーズで半ば埋まり込むように存在していた。


「まあまあ、これは彼女の望みでもあるんだぜ?」


るしは怒りに呼応してか目を紅く光らせる肉塊を操れるであろう、肉塊に埋まった女性に全く臆する話をつつげる。


「あの後、この亡国を彼女と一緒に巡って…なんであんたがそんな事になって居るのかとか、彼女が何者なのかとか、なんでこの国が滅んだのかとか色々なことを知って…その上で()()()()()()()()、この地に巣食う創世の時代から続く宿命に決着を付け、宿命に抗い志半ばで散って行った者達こ無念を晴らすとな」


【そんな…の、、むりに、きまっ、ぅぅ】


「そう無理をするな。まぁあんたの気持ちはわからなくも無い。まともにやったら魔王を倒すより先に、戦いの余波で撒き散らされるだろう呪いで世界が滅びる方が早いだろうしな」


【それ、な、ら…】


「ま、俺が信じられないのも無理は無い、1回失敗したしな。だから……今回はあんたを救う為に頑張ったあんたの仲間達の遺志と… あんたの娘達の事を信じてやってくれ、彼ら彼女らは向こう見ずな恩知らずでも無ければ、意気地無しの無能でも無いってさ」


一応頼りになる仲間増えたしな。るしは最後にそう付け加え、女性の紅く輝く見つめる。女性は上を向き何か考えるような素振りを見せた後、るしに向き直りこくりと確かに頷いた。


「決心したみたいだな、準備は出来てるぜ」


【よろ、しく、お願い、し、ます……ぁぁあああ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛!?!?!?】


その言葉を最後に、肉塊に埋もれた女性は苦しみを堪え切れないと言わんばかりに喉が張り裂けそうな程に絶叫を上げ、その身を捩り初めたかと思うと程なくして引きずり込まれるようにして女性形の肉塊の中に埋まって行き……完全に埋まり切ってから程なくして女性型の肉塊の目がゆっくりと開く……



side ドーン


るしさんが大穴の中に飛び込んでしばらく…突如として大地が激しく揺れたかと思うと大穴から強烈な呪いの奔流が天を衝く勢いで吹き上がった。遂に始まったかと、各々が武器を構え戦闘態勢に入った直後、るしさんが迷宮内に転移してくる。


「準備は…万端みたいだな、白心の準備は良いか?」


るしさんのその問いかけに対して白さんはこくりと頷いて返し、それを確認したるしさんはこちらを向く。


「戦いは手筈通りに頼むぞ。俺が本体を引きつけ、白が攻撃する、お前たち三人は白の防衛だ。間違い無く大量の敵が押し寄せて来るだろうけど頑張れよ!白がこのイベント戦の要だからな!」


そう自分達に念を押した後、勢いよく迷宮から飛び立ち、今なお勢いを微塵も衰えさせることなく吹き上がり続ける呪いの奔流へと向かった。


「金華、黒蓮、一応聞いておくけど、逃げるならここがラストチャンスだぞ?」


「バカ言わないでドーン!今更逃げ出したりなんてするわけないでしょ!」


「お姉ちゃんの言う通りだよ!ここまで来て逃げるなんて有り得ないよ!」


それを見送った後、かなり離れているにも関わらず感じられる超越的な力に、驚愕した様子で釘付けになっている二人に逃げなくて良いのかと問いかけると思ったよりも活きのいい返事が帰ってくる。正直もっとビビっていると思っていたからそう出なかったのは驚きだ。


「それにもしもの時はドーンが守ってくれるんでしょ?」


「まぁ…な」


金華は自分の事を信頼仕切った様子で、柔和に微笑みながらそう言ってくれたが….正直この規模の敵相手だとかなり怪しいと言わざる負えない。移動迷宮とはいえ、腐っても迷宮である為比較的防衛は得意な方だがそれでもこの規模の格上相手となるとさすがに…


「な〜にドーン?もしかしてビビってるの?」


その様子を見ていた黒蓮がニヤニヤと口元を歪ませながら自分をからかうように挑発的にそう言った。


「別に、そんな事は無い…はずだ」


ため息混じりにそう返した直後、迷宮核の近くで待機していた白さんから鮮烈的な白い光が辺りに放たれた、準備が整ったらしい。


「行きます」


短く白さんがそう言った直後、白さんから放たれていた光は天高くへと上り、それに呼応する様に各地から同様に白い光が打ち上がったかと思うと白さんが放った光を中心として国の上空全てを覆う様な極めて巨大な純白の魔法陣が形成が瞬時に形成された。


るしさんから話は聞いてたけど…これは凄まじい。基本的に魔法陣の効力は魔法陣の規模に依存して変動する、それが決して小さくは無い国の上空、山脈の内側全てを覆い尽くすように層となって重なり合った大小様々の魔法陣がただ1つの巨大な魔法陣を展開しているのだ、たとえ見た者がど素人でもこれが尋常ならざる効果を及ぼす物だと瞬時に察せるような規格外の魔法陣…ゲーム時代でもここまでの規模の魔法陣は見たことがない。


全ての魔法陣の展開が完了したのか巨大な本命の魔法陣がゆっくりと回転しながら白い輝きを増し始め……


次の瞬間!呪いの奔流から強く拍動し、弾き出されるように杭のような巨大な肉塊がこちら向かって射出された。防御偏重で展開している『魔力防護』で防げるだろうと余裕を持って待ち構えていると、突然肉塊の射線上にるしさんが現れ、肉塊とぶつかったと思った瞬間に青白い火花が飛び散り、肉塊を明後日の方向に弾き飛ばして見せた!


今のは…パリー?あれ猶予時間が滅茶苦茶短くて到底あんな風に使えたものじゃなかったはずけど…それを転移で射線に割り込んだ上で成功させるとは……さすがはトップギルドの長なだけはある。あるいは()()の2つ名の由来だったりするのだろうか?

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