【71】雷雲の竜VS移動迷宮
敵を発見したら正確に位置を把握出来るゴーレムをマーキング代わりに使って[中祭壇]の『大嵐』を敵に直撃させてやろうという魂胆だが…果たして上手くか…
「……キタっ!」
立ち込める暗雲の中、轟く雷鳴に照らされ…細長い影が微かに映る。〈中祭壇〉を片方だけ起動し雷鳴の輝いた位置と見えた影の位置から推測される本体の位置目掛けて『テンペスト』を発動させる!
暗雲の中で強烈な風が吹きすさぶ…最初、暗雲を晴らす目的で放った時よりも、内側で発動したせいか強く相殺され先程よりも弱めだが、それでも直撃させられていれば何らかの反応があるはず……
その予想に反さず、程なくして雷鳴に隠れるように微かに絶叫が聞こえ、俄に降り注ぐ落雷の数が増え…ん?何だ?雲が小さくなって…いや、違う一ヶ所に集まって行っている?
敵の声が聞こえてから、暗雲の密度が増したのか中に侵入しているゴーレム達の視界が悪くなり、それは敵がいると思われる場所に近いゴーレム程顕著なように感じる。
つまり暗雲は敵を中心に集まりつつある可能性が高く…それは大技の前兆のような気がしてならない。だからゴーレム達を全速力で敵の方向…暗雲の中心へ向かわせるが、中心に近付けば近付くほど激しい雷撃に襲われ、耐性こそ持たせてあったもののそれでも無傷とは行かなかった。
中心部はもはや視界はゼロに等しく、【魔力探知】による物もそこに充満する濃密な魔力によってままならない…が激しく駆け回る雷撃の明滅によってそこにいる存在の影がくっきりと見て取れる。
そこに居たのは鹿のような枝分かれした大きな角にゴツゴツとしたフォルムが特徴的な細長い蜥蜴…所謂東洋龍だった。大きさは影から推察だから際があるかもしれないが、おそらく黒蓮と金華が戦ったあのデカブツの二三倍程度の大きさであり、東洋龍にしては小さめだが…るしさんから聞いていたよりもだいぶ大きい。
というか、そもそもるしさんから聞いていた話ではこの山脈にいるのは西洋竜が少数とワイバーンが沢山って話だったんだけど…一体これはどういう事なのか。
まぁどんな理由にせよ、倒して経験値に変えることに違いは無いのだからそこまで気にする必要は無いはず、るしさんだってちゃんと探索した訳じゃ無さそうな話しぶりだった気がするし。
そんな事を考えながら、[中祭壇]の『大嵐』で暗雲の中心にいる敵を攻撃する。暗雲に遮られその様子を見ることは出来ないものの動きからして命中しているはずだ。
しかし敵の耐久力はかなりのものらしく、それだけでは責めきれず暗雲が一点に収束しきり、赤黒い結晶のような角が特徴的な漆黒の東洋龍の姿が顕になった。
東洋龍のとぐろをまくような形で空中に浮遊しており、大きく開けた口の中で元々暗雲だったと思われる球体が激しくスパークを放ってた。
これは….なるほど通常の落雷ではこっちの防御が抜けないと見て纏め放っつもりか、ドラゴン系に共通するブレスの威力補正を考えると少し不味いかもしれない。
ーーーGUOOOOOOO!!!!
くっ!
二つの[中祭壇]を『魔力防護』に変更した直後しゴーレム達にブレスの発射を阻止させようと向かわせたが時すでに遅く、激しい咆哮と共に稲妻を纏った漆黒のブレスが放たれ、迷宮を守る三枚の『魔力防護』とぶつかり激しい閃光が発せられる!
バリンッ!
バリンッ!バリン!
数瞬の拮抗の後、押し負ける様に『魔力防護』が砕かれ、ドラゴンブレスが迷宮に直撃し大ダメージを食らってしまった上に限界まで行使したせいで[大祭壇][中祭壇]共に破損状態になってしまい、しばらくは使えない…とはいえ、もう空に暗雲は残ってないし今の攻撃がもう一度飛んでくることは無いはずだから、ここからでも十分に勝利出来るはず!放っていた[大嵐]もしっかり敵に命中していたようで無傷じゃないし。
さっきの攻撃で魔力が尽きたのか体をうねらせながら接近してくる敵の迎撃ために全ての[小祭壇]から『大嵐』を放つが流石に威力が足りていないあのか小動もせずに迷宮核目掛けて突っ込んで来る。
敵に『減速』自分に『加速』をかけ『短距離転移』で突進を回避し、敵に取り付いているゴーレム達に【攻撃指示】【攻勢指揮】をかけて攻撃させる。【攻撃指示】による固定ダメージ【攻勢指揮】によるヒット数上限の無効化、これらにより実現可能な固定ダメージによる大ダメージ…今いるゴーレムはこのレベルのドラゴンに通用する程の攻撃力を持ち合わせて居ないが…全てに攻撃力が低い代わりに大量の多段ヒット効果が期待出来るノコギリ系の武器を装備させている、ゴーレムはまだ半分近く残っているからダメージはそれなりに期待出来るはずだ。
ゴーレムは期待通りの働きをし、敵の硬い鱗に守られた体を固定ダメージを活かして削り取り始めたが、当然それを敵が黙って見過ごすはずもなく、体をよじって取り付くゴーレム達を振り払い、尻尾を打ち付けてその大半を破壊し尽くされてしまった。
折角のダメージリソースが減少した事に残念な気持ちになりながらも、敵がゴーレムに気取られている隙を逃さずに【迷宮創造】で、山を焼き払った際に手に入ったポイント使用して[儀式祭壇]を生成、[呪胎炉]から呪いを引っ張って来て敵を呪う、黒蓮と金華が新たに倒した分だけだから量も質も大したことは無いけどそれでも十分な効果期待出来るはず。
ちなみに状態異常、《呪い》の効果は被ダメージが1.5倍になると言うもの。
咆哮と共に再び突っ込んできた出来た敵を[小祭壇]×5の『拒絶』で逸らしつつ[ゴーレムプラント]で再生産したゴーレム達を敵に取り付かせる。
ヒット数上限の無効化、固定ダメージ追加、被ダメージ1.5…そこに波状攻撃が合わさればかなりのダメージが期待出来る、ダンジョンの防衛兵器にも指示と指揮の効果は乗るからなおのこと。
敵は再びまとわりついてきたゴーレム達を振り払おうと体をよじったが、簡単に振り落とされないようにフックを装備させてあるから殆どは振り落とさずに攻撃を続けている。
そして天候を操るような巨大なドラゴンと言えどもこの猛攻に耐えられなかったようで最後の足掻きと言わんばかりに周囲に激しい雷撃を無闇矢鱈に打ちながら墜落して行き、そのまま地面に激突し大きな砂埃が舞い上がった。敵は落下の衝撃で絶命したらしく、レベルが上がったのが感じられた。
この感じ…50ぐらいから60後半ぐらいまで上がったか?取得ポイント段違いだし…第六階梯…80レベルぐらいか?とにかくこれだけポイントがあればダンジョンの素材を全部変えても良いかもしれない、さっきのドラゴンブレスの影響で多くの部分が融解してしまっているし良い機会かもしれない。
【迷宮創造】で迷宮の材質を[鉄]から[隕鉄]に変更、隕鉄は物防、魔防共に大したことない割にめちゃくちゃ重いとこれだけ聞けば大した事の無いダメ素材に聞こえるかもしれないが、これは基礎素材としては最も高い耐久力を誇っている。移動迷宮の制約により弱点である迷宮核の大部分が迷宮外に露出していなければ行けない関係上、基本意味の無い防御力よりも耐久性の方が重要。
もちろんゲーム時代に使っていた最上位の物と比べれば比べ物にならないぐらい弱いが…まぁそれでも今までのものよりかなりマシになっている。……この後の強敵戦を考えるともう少し稼ぎたかったけど黒蓮と金華のレベルがMAXまで上がったみたいだし『長距離転移』で迷宮ごと向こうに飛ぼう。




