【68】特訓・目指せレベルカンスト!
ーーーピピッーーーーー!!
「随分便利な物を持ってるじゃん」
「迷宮だからな」
『次元収納』から〈魔笛〉を取り出して吹き鳴らし、るしさんとそんな会話を交わしている間にも〈魔笛〉によって呼び覚まされた敵に呼応してか周囲に漂う呪いの気配が俄に濃くなって行く。
「俺たちは少し離れた所で見ているが、ピンチになったら助けに入るから……頑張れよ」
「任せなさい、直ぐに終わらせて見せるわ」
「そんな心配そうな顔をしないで、大丈夫だよ!ドーンから貰ったアレもあるし!」
そんな会話の後『短距離転移』で金華と黒蓮の二人を残してその場を離れた直後、周囲…金華が展開している【環境改変】の外側に赤黒い霧のような物が立ち込み初め、ギュッと幾つかの塊になったかと思うと霧の中から鎧を身にまといミイラを彷彿とさせる見た目をした存在が次々と出現し始め、それらは即座にこちらに襲いかかって来た!!
「【狐火】」
黒蓮が先手必勝と言わんばかりに即座に【狐火】を発動して迫り来る敵達に攻撃を加えるが、呪いと言う性質故か敵は怯むこと無く【狐火】の中を突き進み武器を振り上げて攻撃を仕掛けて来る。
「【居合】【大切断】!」
【狐火】を突っ切って迫り来る複数の敵に、黒蓮は怯むことなく【居合】【大切断】の組み合わせてスキルを発動して迫り来る敵を一撃で切り伏せて見せた。本来は黒蓮の階梯、レベルではこのレベルの敵を一撃で葬るのは不可能だが【属性付与】【環境改変】等による通常よりも強烈な相性有利とその他バフが合わさったことによってこのような芸当が可能になっていた。
「くっ!」
とは言え振るわれたのは所詮刀であり、如何にスキルによる補正を受けようとも攻撃範囲などたかがしれており、【居合】があってこその黒蓮の強さに見合わない高火力だった面もあるため、無数に迫り来るこの状態で【居合】を発動する為に納刀する猶予を捻出するのは難しいそうに思える。
ちなみに敵と戦っているのは黒蓮と金華の二人だけで自分とるしさん白さんは2人にバフをかけた後、直ぐに助けに行けるが先頭に巻き込まれ無いだろう位置で見守っており、経験値効率を考慮してギリギリまで戦闘には参加しないことになっている。
「一応、砦を背にして戦ってるから囲まれる事は無はずだが…思ったりキツそうか?」
「そうぽいな〜火力は何とか足りてるものの攻撃範囲と攻撃頻度が足りて無いって感じする。」
「黒蓮は一撃必殺系で能力を伸ばしてるから、攻撃頻度が少ないのは仕方がないだろう」
「ん〜それじゃ金華の方はどうなんだ?信仰系とはいえ魔法職なんだから何かしらあるだろ?」
るしさんが首を傾げながらそう自分に聞いてくる
「金華は見ての通り有利環境を押し付ける事に特化しているし武器は弓矢だから戦闘能力は差程だ、領域の奪い合いに慣れて無いから戦闘に参加するのにもまだしばらくかかるはずだ」
「なるほど、つまり対多数戦に向いたスキルをどっちも持ってないってことか…それならわざわざ敵を呼び出さずに1匹づつの方が効率が良かったんじゃね?一撃必殺、辻斬りみたいな感じでさ」
「それも考えたけど、この環境であの二人ならこうした方が効率が良いはずだ……そろそろ使うみたいだ」
そんな感じでレベル上げを行っている金華と黒蓮の様子を見ながらるしさんと話していると近くの敵を退けた黒蓮が懐から手の平サイズの水晶玉を取り出してそれを掲げた。すると水晶玉から強烈な浄化の光が放たれ辺りを照らした、するとその光に照らされたミイラ兵達は次々に浄化されてその姿を塵へ返して行った。
「ま、眩しい…」
「あれは…〈属性玉〉か?なるほど【属性付与】【環境改変】【天候改変】+弱点属性で本来かなり低い威力を補完して広範囲高威力にしてるって訳か、なるほどこれなら確かに野良湧きを狩って回るより効率は良さそうだな」
「いい考えだろ?まぁ…多少威力は足りなかったみたいだけど」
唐突に放たれた強烈な光に目をしばしばさせる白さんを横目にるしさんとそんな会話を交わしていると、浄化され塵へと帰って行く敵の間を縫って1つの影が猛然二人へと迫り、浄化の光をものともせず大剣を振り上げて二人に飛びかかった!
「ちっ【受け流し】」
当然二人もそれに気が着いており、黒蓮は〈属性玉〉を仕舞うと金華を庇う様に前に出て【受け流し】で飛びかかって来たの攻撃を逸らし、そらされた大剣は地面に叩きつけられて僅かに土埃をあげた。
ーーーぐぉぉぉぉぉ!!
大剣による攻撃を黒蓮にそらされた錆び付いたフルプレートを来た騎士らしき敵はくぐもった咆哮を上げるとバックステップで一度距離を取ると勢いを付けて再び突貫して来た!
膂力を示すかのように地面を削りながら斜め下から振り上げるように振るわれた大剣を黒蓮サイドステップで回避すると攻撃の合間を縫うように【居合】【速斬】の組み合わせで素早く敵を切り付けてから後退し、即座に振り下ろされた大剣を回避する。
敵の攻撃はそこでは止まらず、力任せに大剣を持ち上げると棍棒でも振り回すように乱雑に振り回しながら黒蓮に迫ったが、黒蓮はこれをまるで意に介して居ないかのように敵に素早く近付くと敵の攻撃をすり抜ける様に【回避】を発動して最短距離で素早く敵の背後に周り【大切断】で敵の背中を強烈に斬り付けると、敵の鎧が錆び付いている事もあってか容易く切り裂き、切口からどす黒い血のような液体が集中に飛び散る。
ーーーギェェェェェ!?!?
背中を切り裂かれた敵は金切り声を上げてバタンと地面に勢い良く倒れこんだ。最後の一体が倒れ、一回目が終わったと思い一息着いた直後、〈属性玉〉が放った浄化の光に制圧されて尚周囲にまだうっすら赤黒い霧が、地面に倒れて塵へと還ろうとしていた敵に集まりその姿を覆い隠してしまった!?
まだ終わっていない、或いは最後の悪あがきが始まると考え誰もが身構えたその直後、集まった赤黒い霧を切り裂く様に勢いよく何かが飛び出し、金華へと迫ったがちゃんと身構えていた事が項をそうし金華はすんでのところでこの攻撃を回避する事に成功したが集中を切らしたことで【環境改変】【天候改変】の効果が無くなり、そのせいか何処からともなく集まって来た赤黒い霧が集合し始めの二三倍程のサイズまで肥大化した直後に放たれた咆哮と共に霧が晴れ、その姿が顕になった。
ーーーGAAAAAAAA!!!!
もはや当初の姿は見る影もなく…体躯は3メートルを超え、背中から生える枯れ枝のような二本のうでは不気味に小刻みに揺れており、頭部は人の面影を感じさせる物からトカゲのようなひし形の頭におちくぼんだ四つの目、鋭い不揃いの牙が生え揃った口と、最初の姿からかけ離れた異形の姿に変化してしまっており、所々に残った鎧と大剣が僅かにその痕跡を示すばかりである。
正真正銘怪物とかした敵は水蒸気を思わせる白い息を吐きながら呼吸を整えるような様子を見せた後、その大剣を地面に突き立てると間を置かず地面が淡く光を帯びて……
「早くその場を離れるんだ!!」




