【63】練習試合
自分に何らかの用があったと思われる黒蓮と金華だが2人揃って要件も言わずに去ってしまった。金華に「待ってて」と言われたためにこっちから行くことも出来ず、迷宮になにか不備があったのかと思い攻撃を受けた部分と二人の居住空間を中心に調査していた。
「想定していたよりも攻撃が当たった外壁の耐久値が削れてる….が直ぐに修復出来る規模、迷宮の機能は勿論設置してある施設も問題なく機能してる」
ちゃんと全部確認したはずだけど特に問題は見当たらなかった。迷宮を調べても二人が尋ねてきた理由は分かりそうに無い。
トイレは勿論他の設備の使い方も教えたし…ご飯にはまだ早い時間だ、別にふたりははらぺこキャラじゃないし。
他にも思い当たる節に思考を巡らせて見るがこれだと確信出来る物が思い浮かぶ前に、今度は金華と黒蓮2人揃ってやって来た。
金華は何処かさっぱりとした様子で、黒蓮は何故か気まずけに視線を逸らして明後日方向を向いている。
「今度は二人で来たのか、どうかしたのか?」
そう聞くと金華は良く聞いてくれました、と言った感じでずずいっと近付いてくると思っていたよりも大きな声でこう言った。
「ヒマ!暇だよドーン!」
「お、おぉそうか?」
「ちょっと!そんな拍子抜けしたみたいな顔をしないでよドーン!大事なことなんだよ!?」
そう言って不服そうに頬をぷくーと膨らませる金華。
「ごめん、金華。しかし暇か…」
ご飯にはまだ早い時間、レベル上げ等をしようにも先程の一幕でここら辺の魔物は一掃しただろうから、魔物が出現する明日までは出来ない……こっちに来てから殆ど戦い詰めだったし、ポイントには余裕もあるから何かゲームでもして遊ぶか?
「そうだな……おもちゃで遊ぶか、それが嫌なら運動出来る場所に案内しよう」
「おもちゃ!おもちゃがあるの?」
金華は目を輝かせて嬉しそうに声を上げる。
「色々あるぞ、人形にボードゲーム、デジタル系まで色々と……リストを渡すからその中から選んでくれ」
そう言って金華に生成可能な遊具ジャンルの一覧表を渡し、金華それに夢中になっていることを確認して黒蓮の方に向き直る。黒蓮はさっき来た時と同様に少し顔が赤らんでいて、少し機嫌が悪そうだ。
「それで黒蓮はどうしたんだ?」
そう声をかけると黒蓮はまるで話しかけられると思っていなかったかのようにびっくりした様子で体をビックっと跳ねさせた。
「な、なに!何のよう?」
いや、それはこっちのセリフなんだけど…
「あ……もしかして黒蓮も暇だと伝えに来たのか?」
「あーえっとそう!そうのよ!なにかないかしら?」
なんと言うか…黒蓮が何かに隠してそうな感じがひしひしと伝わって来る。こういうのってちゃんと聞き出した方が良い様な気がするけど無理やり聞き出すのはちょっとアレだし…まぁさっき1人で来た時の感じからして黒蓮に相談する気はあるみたい出しほおっておいても大丈夫でしょ。
「金華と一緒におもちゃを探したらいいんじゃないないか?」
「私は体を動かしたいから運動できる場所に案内してくれるかしら?…次の目標は今までと比べ物にならないぐらいの強敵なんでしょ?少しでも強くなって起きたいわ」
「わかった、そう言う事なら相手を用意しよう、案内する。金華はどうする?ここで待ってるか?」
「ん?ん〜私も着いてく!一人だけ遊んでるのは申し訳ないし!」
声をかけると金華は渡した紙から視線を上げ、少し悩んだ様子を見せたあとにそう答えた。
「そうか、でも別に休んでていても良いんだぞ、休むのも大切な事だから」
★
迷宮の中を二人を先導して歩き、とても広い正方形の空間に案内した。
「ここだ」
「殺風景だね」
「運動する時に物があったら邪魔だろう金華。それで黒蓮、何をするんだ?」
「何って…改めて聞かれると少し困るのだけどそうね…相手を用意してくれるって話だったわよね?」
「ああ、一人でやるよりその方が良いだろう?」
「そう…なら私と戦いなさいドーン」
黒蓮は何かに覚悟した様子で自分の前に立つとそう宣言した。黒蓮の予想外の行動と発言に少々面食らったかが…まぁたしかに強い相手と戦った時の方が補正値も高いし悪くないか。
「わかった」
「ほら、金華もやるわよ」
「え〜私は見てるだけで良いよ、ドーンと戦いたくないし」
「文句言わないの!ほらこっち」
そう言って黒蓮が金華の首根っこを猫のように掴んで連れて行く。金華は嫌がる素振りをみせているものの振りほどこうとはしていないし本気で嫌がっている訳では無さそうだし大丈夫かな。
【道具生成】で〈決闘書〉を生成して。擬似戦闘、能力制限、報酬なし、に設定して発動させる。
「うへっ!?な、なんか出てきたんだけど!ど、ドーン何かにした?」
「この戦のルールだ、承認してくれれば戦いが終わったら怪我が完治するし、致命的な攻撃を食らったとしても死ななくなる」
「……つまり全力で戦っても大丈夫になるという事ね」
「せっかくやるなら全力でやった方が良いだろ?」
「そうね」
黒蓮と金華が同意したのを確認して、二人の部屋からフリョンに持ってこさせた二人の武器を手渡す。
「先手は譲る。金華も遠慮なく攻撃して来てくれ、たとえこの体が消し炭になったとしてもう俺は死なない」
武器を受け取ったものの何処か迷いを見せる金華にそう伝えながら『次元収納』から〈浮遊人形の青大剣〉を二つとりだして制御下に置く。
「よし、距離はこれぐらいで良いか?何時でもかかって来ていい」
「行くわよ…ドーン!」
黒蓮はそう言うやいなや、勢いよくこっち向かってかけ出した。
思ったよりヌルッと始まったが自分が黒蓮を迎撃するために進路上に大剣を移動させ、間合いに入ったタイミングて黒蓮に叩きつけるように横薙に大剣を回転させたが、黒蓮はこれをスライディングの要領で姿勢を下げて滑り込むようにして回避し、そのまま直進してくる。
「【居合】!」
そして黒蓮の間合いに自分が入ると『居合』を発動し自分のことを切り伏せようとして来たが、待機していたもう一方の大剣が間に入ってそれを防いだ。
「『反発』」
「【狐火】!」
そして黒蓮の間合いから距離を取るために先程の戦闘で新たに習得した『反発』の魔法を発動したのと同時に、黒蓮が居合の後隙を潰すように【狐火】を放って来た。
「キャッ!?」
『反発』のレジストに失敗した黒蓮が悲鳴と共に勢いよく遠ざかって行く。【狐火】の影響は【防御指示】の影響下にある大剣が黒蓮とじぶんの間に入っていたおかげでほとんどない。
「『減速』『加速』」
二人にデバフをかけ、自分と二つの大剣にバフをかける。
そしてそこで金華が何か決心した様子をみせ、通常の矢を放った、それを大剣で防ぎ続け様に飛んで来た【三連矢】を二つの大剣を使って防ぎ、黒蓮が苦し紛れに放った【鎌鼬】を少し後ろに下がって回避する。
黒蓮に『反重力』かけて『反発』と合わせてとても近寄りにくくしてあしらいつつ【攻撃指示】に切り替え金華目掛けて大剣の一方を突進させた!
金華は慌てて逃げ出したが大剣は操作できる上に浮遊しているため動きも自在、障害物も、無いここでは逃げ切るのは….現実的ではないし金華では無理だろう。
が、しかしこの自分の予想はいい意味で裏切られることになる。
自分に近寄るのは難しいの判断したらしい黒蓮は矛先を変えて金華と金華を追跡する大剣の間に割って入り【居合】【大切断】と続け様に放って金華を追い掛けていた大剣を弾き飛ばし手見せたのだ!
るしのイメージ画像を追加しました。




