【62】強力な一撃
超遠距離からの弓矢による狙撃に対応すべく、移動迷宮の利点である自由に移動出来るという点を生かして矢が飛んできた方向に迷宮を向かわせる。
迷宮に対して【防衛指揮】を発動しつつ2つある中規模祭壇にそれぞれ『拒絶』と『魔弾』の魔術を仕込む。『拒絶』は自分を中心に強烈な衝撃波を発生させる魔術、『魔弾』は文字通り魔力の弾を発射する魔術で消費魔力が少ないのが特徴。
しっかりと敵を警戒していた甲斐あって再び不意打ちを食らうような事にはならず敵の第二射の観測に成功、大きな岩陰から放たれた矢は赤い閃光を放ちながら凄まじい勢いでこっちに向かって飛翔した、このままだと第一射堂迷宮に突き刺さるだろう。
飛翔し、迫り来る矢を撃ち落とそうと無数の『魔弾』矢目掛けて放ったが、矢は『魔弾』を塵紙の様に容易く切り裂き、貫通して些かも勢いを衰えさせることもなく飛翔を続けた、そして『拒絶』の射程に入ったタイミングを逃さずに発動すると一瞬の紫光と共に大地が削れる程の衝撃波が放たれ、それの影響下にあった矢は勢いこそ衰えさせることは無かったものの、矢そのものの耐久が限界に達したらしく粉々に砕けちった。
敵の攻撃の迎撃に成功した事に安堵しながらも、今度は敵を排除するために大量の敵を倒したことで集まったポイントを消費して追加で大祭壇を設置し、『聖なる光線』をセット、大きな岩陰に隠れているであろう敵目掛けて『聖なる光線』を発動した。
放たれた閃光は一筋の線となって目標の大岩に命中し、その直後に聖属性の黄色い大爆発を発生させた!
貫通すると思ったんだけど、あんまり威力が出てないな…まぁレベルも設備も装備もまだまだだしこんなもん……ん?
威力が思ったより出なかったと言っても今まで出会って来た敵のレベルならばその殆どを余裕で即死させられるレベルの威力が出ていたため、倒せたと思って完全に油断していた。
いつの間に移動していたのか、こちらより上空に位置し太陽を背にするように大きな弓を構えた翼を生やした何者が『拒絶』の射程ギリギリまで接近してきており、構えるその弓は遠方から飛んで来てきたものと同じ赤い輝きを纏って今まさに放たれようとしていた!!
太陽のひかりで見えにくけどどう考えても核を狙ってる!慌てて『次元収納』から《浮遊人形の青大剣》を取り出して迎撃に向かわせるが…先程感じからすると焼け石に水だろうし妨害が間に合うとは思えない。
とは言え何もせず諦める訳にも行かないので、リキャストも終わっていない『聖なる光線』の照準をこれみよがしに敵に合わせつつ無数の『魔弾』を放ってどうにか牽制しようとしたもののまるで怯む様子も見せず、予想通り矢は迷宮の核目掛けて放たれた!当然『魔弾』『拒絶』が放たれた矢を削り続けるが先程とは距離がまるで違う上、やはり速度が緩む素振りすら見せない為かなり厳しい『聖なる光線』の再発射にはまだ数秒かかるし…
ついに《浮遊人形の青大剣》の操作範囲内に矢は侵入した、矢を迎え撃つように剣を振るったものの一瞬の拮抗の後に剣は打ち砕かれ矢は進路を変えずに迫った……が時間は一瞬で事足りた。リキャストを終えた『聖なる光線』が先程と同様の規模で放たれ、一瞬で矢を焼き切り、続け様に放たれていた第二射もそのまま焼き付くし、その背後で第三射目を放とうとしていた敵に直撃してその光の本流に敵を飲み込んだ。
ーーーコォォォ!!
数秒の後、光が収まり薄れゆく光線の中から黒焦げた人型の何か地面へと落下して行った。
直撃だったし蒸発させられるかと思ったけど全然そんな事なかったな、丸焦げとはいえ原型を留めているとは……もしかしなくても自分の想定より今回の敵のレベルは高かったのかもしれない。レベルの予想は敵の攻撃からの物だし武器の性能が想定よりも低かったとしたら下ぶれる事も全然有り得る、実際武器は無くなっているし。
落下して行く丸焦げとなった敵…ドラゴニュートを吸収、手に入ったポイントは…流石に属性飛龍には及ばないものの、山脈付近の敵から得られるポイントと比べると二回りほど量が多かった、と言っても結果的に前哨戦となった大量の敵を倒して得られたポイントの方が圧倒的に多いんだけど。
しかし思ったより大量のポイントが手に入ったな、派手にやったからある程度敵は集まって来るだろうと思ってたけどまさかこの迷宮の建造費をペイ出来るほどの数が集まってくるとは思わなかった、まぁそれでも最上位の設備一つも生成出来ない量なんだけど…まぁこれだけあれば三人分の『呪い無効』の効果を持った装備ぐらいなら用意した上で必要最低限の設備を揃えるぐらい出来そうかな?
強度の高い呪いは効果が不可逆的な物もあるから対策は必須、るしさんの話が正しければ目標は悪魔系のレイドボスらしいからその手の呪術を必ず使って来るだろうし、そうで無くても呪いまみれの地らしいからこの手の対策は重要なはず。
ーーーコンコン
部屋の扉がノックされるた。反応するために戦闘の為に迷宮に集中させて居た意識を分散させ平常時戻す。
部屋の扉を開けてると廊下にはケモ耳をヘニョっと倒し、頬が赤く染まった顔を恥ずかしそうに俯かせてもじもじしている柄にも無くいじらしい様子の黒蓮の姿があった。
「どうかしたのか?」
「あ、えっと、その……バカ!変態!」
そう聞くと黒蓮は戸惑った様子を見せてた後に、何故か余計に恥ずかしくなったらしく顔を真っ赤に染めて言葉と共にパンチを繰り出すとぷりぷりした様子で足早に去って行ってしまった、一体何だったんだ?。
ーーーコンコン
数分後、再び扉がノックされた。扉を開けるとそこにはしっとりとした髪の毛を額に張り付かせ、珠の様な汗を流しながらも快活な笑みを浮かべる金華の姿があった。
「どうし「やっと見つけた!」ぅお!?」
要件を聞く直前に金華は何故か感極まった様子で自分に飛びついて来た!突然の事に対応しきれずバランスを崩しそうになってしまったが度重なるレベルアップの影響か倒れずに踏ん張ることに成功し、金華を支えるように腕を回す。
「一体どうしたんだ」
「もーあっちへ行ったりこっちへ行ったり、いっっぱい探したんだよ?一体何処行ってたのドーン?」
金華が少しムスッとした様子でずいっと近づいて…いや、近い近い!抱き上げてるからタダでさえ距離が近いのにそんな事したら顔と顔がふつかる!
そう思い顔を引くと、金華は自分の行動が理解出来なかったのか頭に疑問符を浮かべるような様子で可愛らしく小首を傾げそれに釣られるように耳も傾けさせ…急にハッと何かに気が付いたような表情を浮かべるとカァッ〜と頬を赤らめて腕の中から飛び降りた。
「ご、ごめんドーン、走り回ってたから汗臭かったよね?ちょっと…汗を流して来るから待ってて!!」
「いや別にそれで身を引いた訳じゃ…行ってしまった」
金華は恥ずかしそう頬を赤らめ、誤魔化す様に激しく尻尾を振りながら自分の制止の声に耳を貸さずに足早に走り去って行ってしまった。
2人とも揃いも揃って…一体なんの用だったんだ?というか黒蓮はともかく金華は必死に探し回ってた感じだったのに要件も伝えずにいなくなっちったし……
……もしかしたら戦闘中に迷宮内でなにかあったのかもしれない、少し調査してみるか。




