【54】旅立ちの時
あの後、傭兵ギルドを後にした自分達は、そのまま足で宿屋へと戻り今後の話をして…明日にはこの街を出て、ガーンさんにおすすめされた通り山越えルートでこの国を出る事になった。他にも延々と森の中を進んで行ったり、ある程度落ち着くまで森の中に隠れ住む案などもあったがそのどれもが運任せの要素が強かったため、山を超えて別の国を目指すのが一番現実的だという判断の結果だ。
「大丈夫です!確かに今後の事は凄く心配ですけど、今回の件でお金も沢山手に入りましたし私の方は大丈夫です!それよりも心配なのは皆さんの方ですよ!あの時よりもさらに奥に行くんですよね?それなら皆さんの方が心配ですよ!それでその迷惑料…….とかそんな感じてこれ!タダで上げます!本当に本当に、皆様の旅の無事をお祈りしています」
と、言う訳で翌朝、早速2人とは別行動で知り合いに別れて別れの挨拶をして回った。と言ってもこの街に来てから1ヶ月経ったどうかの自分の知り合いなんて殆どいないんだけど。
そうして【道具生成】で生成したレシピ書で見つけた懸念点…魔力増幅薬は〈親和性増加薬〉である可能性と、あの精霊樹から取った葉から作った物では風属性しか上昇効果がしないであろう事をタロさんに伝え……なんか思った以上の心配と謝罪を受けその場を後にした、なんかこっちの話を聞いてたか怪しいきがするけど……まぁあくまで可能性だし向こうはプロ、きっと大丈夫だろう。
そしてその後も世話になった宿屋の人や買い出しで世話になった店の人などに別れの挨拶をして周り、最後に金華と黒蓮と合流して諸々の準備をし終わったあと三人揃って傭兵ギルドのガーンさんの元に訪れた。
「ガーン」
「ん?おぉお前らかどうかしたか?何かあったか?」
「この後この街を出る事にしたから挨拶をしに来たの、今回の事と言い貴方には世話になったからね」
「まじか、昨日の今日だぞ?随分と決断が早いな…お前ら俺の言ったことの裏取りとかちゃんとしてるか?」
「それは…してないけど、貴方がわざわざ嘘をついてまで私達を追い出すように動く理由がないわ」
「….そりゃそうなんだがな」
「一応、タロさんに事の審議の程は確認して来たが嘘は言っていなさそうだった」
「そ、そうなのね」
「ハハッ!しっかりしてる奴が仲間になって良かったな。どう言う縁で仲間になったのかは知らねがこれからよろしくやれよ!」
「当然だ」
「ど、ドーン!」
そんなやり取りの後、傭兵ギルドを後にし、その足でその森の向こうに見える山脈、その向こう側にあるという別の国を目指して最初に訪れた街を三人は旅立った。
「……」
「どうした黒蓮、何かやり残した事でもあったか?」
表層の森に入る手前で振り返って無言で街見つめる黒蓮にそう聞くと、黒蓮は少し思案する様子を見せた後
「何でもないわドーン、行きましょう」
行って何でもないように歩みを再開した。
「まぁあの街に二度と戻れないって訳でも無いだろうし…気になるなら折を見てまた訪れればいい。俺としてもあの街が今後どうなるのかは少し興味があるしな」
「そう…そうよね!」
黒蓮は何処か納得したような感じで力ずよく頷き、森のなかへと歩みを進め、その後に自分も金華も続いた。…今後自分達がどうなるのかまるで分からない事に若干の恐怖と未知への好奇心、そして望郷にも似た思いに後ろ髪引かれる感覚を味わいながらも、再び街を振り返る事なく三人はこの地を後にし、古臭い地図を頼りに隣国を目指す旅を始めた。
★
「今日はこの辺りで一晩こさないか?」
順調に中層を抜け、深層に入った辺りで二人にそう提案する。
「急にどうしたのドーン?まだまだ明るい時間よ?……もしかして疲れちゃったのかしら?」
自分の発言を弱気だとでも捉えたのか、ニヤリと笑い少し小馬鹿にするようなニュアンスでそう返してくる黒蓮
「そんなわけないだろう…あと数時間もしないうちに暗くなる様な時間帯に、どんな場所かもよくわかってない深層に入ると危険だと言っているんだ」
「あ……も、もちろん分かってるわ!ちょっとからかっただけよ!」
「それならいいんだが…」
全然そんな事なさそうだけど。
「金華もそれで良いか?」
「もちろんだよ!安全は大事だし!…けど、その、ここで寝るのは…痛そうで嫌!」
そう、何処か不安げな表情を浮かべ言い淀むように言葉に詰まらせながら金華は靴先で硬くゴツゴツした地面を叩く。あぁなるほど、確かにこんなゴツゴツした場所で一晩過ごしたら次の日には全身痛くなってしまいそうで嫌だよな、自分もこんな場所で寝たくはない。
「それもそうだな」
「それじゃあ、先に進んで適切な場所を探すのはさっきドーンが言ってた不確定要素が多いし、パッと見ずっとゴツゴツした地面が続いているから無しだよね!つまり…来た道を戻って適切な場所を探す?」
「それも良いが…もっといい方法がある」
「「いい方法?」」
自分がそういうと二人揃って首を傾げながら疑問符を浮かべる。二人が同じタイミングで同じ方向に首を傾げる様は少し場違いな感想な気もするが、とても姉妹って感じがしてその動作も相まってとても可愛らしい。
「この〈簡易拠点〉を使えば、野営用の拠点設営も
一瞬だ」
そう言って『次元収納』から事前に生成しておいた〈簡易拠点〉を取り出して二人に見せる。
「この…玉でどうするの?」
「まぁ待て、拠点設置」
そう言って〈簡易拠点〉を使用すると、ポンッと大きなテントと焚き火、それらを囲う鉄条網が出現する。
「ほら、これで問題ない」
「…本当にドーンの能力は何でもありね」
黒蓮が何処か呆れたような様子でそう言う。
「ポイントが足りてさえいればばある程度はな」
「やっぱりドーンには一度何が出来て何ができないのかきっちり説明してもらう必要がありそうね」
「あ、それ!私も気になる!」
「…前に説明しなかったか?」
「その生成の使用については聞いたけど、何が出来るのかは聞いていないわ」
「そうだったか?……分かった説明しよう、色々と準備をしてもまだ寝るには早そうだしな。中で話そう」
「わかった!」
黒蓮と金華を先導して〈簡易拠点〉に大きなてんとの中に入る。内部は事前に確認した通り小さなパイプベットが四、棚が一つ、そしてテーブルと椅子が四脚設置されており、拠点としては必要最低限の設備は整っていると言えるはずだ。椅子に座り、中を確認している様子の二人を対面に座らせる。
「それで…まず何が聞きたい?」
「そうね…いや違うわね、ドーン貴方が私達に伝えなきゃ行けないと思うこと全部教えなさい」
そう言って席に着いた黒蓮の方に視線を向けるを少し悩む素振りを見せた後そう返してしきた。うん、まぁ確かにそっちの方がいいか、前回は質問形式にして失敗したような気がするし、そもそも二人と自分では知っていることはもちろん持っている知識もまるで違う訳だし。
「そうだな確かにそっち方がいいかもしれない、俺が喋って何が疑問があったたら質問してくれ」




