【49】護衛依頼
山賊の討伐依頼をこなしてから数日が経った。話し合いの結果現在持っているポイントの半分を使用して二人の武具を更新する事になり、護衛依頼の日まではその〈希少級〉の武具の習熟に使用した。
具体的には金華は魔力で矢一時的に生成する《魔法の矢筒》を、黒蓮は属性の影響がとても大きくなる《結晶樹の刀》の練習を行った。一番苦戦していたのは黒蓮の《結晶樹の刀》の習熟で、こいつは【属性付与】等によって属性を与えられることによって真価を発揮する武器のひとつだが、逆に属性がなければただのなまくらなので、【属性付与】を切らしたり、かけ忘れたりして敵を倒せずに反撃を貰いそうになっている場面が多々あったが……最後の方は効果時間の管理をちゃんと出来てる感じがしたしかけ忘れも無くなってたから多分大丈夫なはずだ。
「本日はよろしくお願いします!」
そんなこんなにで傭兵ギルドから通達された日時がやって来た。依頼書に記載されていた場所に向かうとそこにはあの古臭い薬屋の店主であるタロさんが待ち構えおり、こちらを見つけると大きく手を振ってアピールを行い、近付くと元気いっぱいに挨拶をされた。
「こちらこそこういうのは初めてだからお手柔らかに頼むわ」
そう言ってタロさんと黒蓮が挨拶を交わしているのを後方で見守っているとそっと近付いて来ていた金華が何かをこっそり話したそうに自分の袖を引っ張って来たので少ししゃがみ混むと、道筋や工程の話をしている黒蓮とタロに聞こえないような話小さいな声で話し始めた。
「本当ににあの人がタロさんなの?聞いてた話と全然違うよ?」
そう金華に言われて改めて今目の前にタロさんを見る。髪型はボサボサじゃなくて綺麗なボブカットだし、服装もボロっとしたものじゃ無くてちゃんと魔物蔓延る森の中に分け入って行くのに適切な状態の物。そして何よりあの時の暗く淀んだ陰の雰囲とはまるで違う明朗快活な雰囲気を彼女は発しており…まるで別人のようだ。
「確かに全然違うが、顔つきとか体格はもちろん声も同じだし…多分前回は会った時は慌てて出て来たからそう言うのを整える時間がなったんだろう」
店内はかなり薄暗くて細かい所までは見えなかったし記憶力には自信が無いけど…さすがに人を見間違えることは無いはず。【魔力探知】で感じる魔力の波長的なやつもこんな感じだった気がするし。
「そうなのかな?」
金華とのそんなやり取りの後、黒蓮とタロの方も話し合いが終わったらしく早速街を出発し、南方向にあるある森の奥へと足を進めた。タロさんの話を聞くがきりだと目的は依頼書に書いてあった通り、中層の奥にある精霊樹の葉を何枚か採取することで、護衛の期間は街に戻るまで…とのこと。
ちなみ護衛の陣形は黒蓮→金華=タロ→ドーンとなっており不意打ちを食らっても守りやすいと思われる陣形を取っている。いくら【防御指示】があるとはいえ、それを理由に慢心してそこら辺を適当にやるのは今は、良くても今後は良くないだろしな。
そんな感じで時折襲いかかってくる魔物を返り討ちにしながら四人で順調に森の奥へと進んで行き、特に何事もなく表層を抜けて中層に入った。
「あの、魔物をあんな簡単に倒すなんて皆さんとってもお強いんですね!正直びっくりしました。失礼だと思いますけど正直傭兵って薬草を採取したりおっかなびっくり角兎を倒してるイメージしか私にはなかくて…」
そして襲いかかって来たジャイアントベアを黒蓮が瞬殺するとタロさんがそんな事を言い始めた。何となく察してはいたがやはりこの街の傭兵はかなり弱いらしい…まぁギルドの掲示板にて提示されていたDランク依頼の多くが古い物だった事からEランクの傭兵すら余りいないどころか殆どいないんだろう事は何となく察していたけど、どうやら自分の想像以上にそうらしい。
「この街にはそんなに強い人が居ないんですか?」
「ええそうなんですよ。昔は強い人もいたって年寄りの人に聞いた事がありますけど今は見る影もないですし……そのせいでこの街の主要産業だった調薬もいい素材が手に入らなくなって、今は昔と比べてあんまりですし、お金に余裕が無いので外から強い傭兵を雇う余裕も無くて……だから皆さんには本当に感謝してるんです!ありがとうございます!」
「なんだか…改まってそう言われると少し緊張してくるわね」
黒蓮は随分と期待されいる事に重圧を感じたのか緊張で僅かに引き攣った顔を見せながらそう言った。
「大丈夫だよ!私達とっても強いし、ドーンもいるんだから!」
「そ、そうよね、私達随分と強くなったものね」
金華の能天気とも取れる楽観的な発言を受けて黒蓮がいつもの調子に戻ろうとしたその時!中層の大樹すら揺らすような一陣の強烈な風が吹き荒ぶ!
「うっ…急に何?」
急に吹いた強烈な風に思わず目を瞑ってしまいそうになったが【魔力探知】の反応がそれを許さない。【魔力探知】はこの吹き荒ぶ風に魔力が含まれている事を伝えて来ており、更には遠方からかなりの速度で迫り来る強大な反応があった。
さすがに属性飛竜には及ばないものの、この辺りなら向かう先敵無しだろう事が容易く予想出来る程の反応を放っており…レベルが上がり、装備も新調したとはいえ黒蓮と金華だけでは間違いなく苦戦する敵の登場に否が応でも緊張感が高まって行く。
ーーーヒュォォォォォォ!!!
「強いのが来る、警戒を」
「え、なにドーン!何か言った!?」
「強い敵がくる!!」
これは…風の音が強すぎて意志の疎通が…
金華と黒蓮の二人は、轟々と激しい音を立てながら吹き荒ぶ突風に耐えかねてか獣耳を抑えて塞いでしまっており意志の疎通は実質不可能…それだけじゃなく、恐らく速度特化だと思われる今、急速に迫って来ている敵相手に両腕を塞いでしまっているのはとてもまずい!
「くっ」
そんな事を考えているとまだ数十メートルは先にいたはずの反応がいつのまにかもう目の前まで迫って来ており、咄嗟に『減速』と『加重』を範囲指定で発動しつつ、まだ敵が近づいて来ている事に気が付いていない様子の三人を庇うように前にでだ…が敵は魔法の射程ギリギリの所で横に逸れて旋回するように走って来た勢いそのままに旋回し…魔法の付与時間が終わった瞬間に隊列の側面側から凶悪な牙でこちらを噛み砕かんと大口を開けて飛びかかって来た!!




