【48】薬屋と初めての休み時間
薬屋の中にはその外見の雰囲気に違わず薄暗く、見えずらいが商品らしきポーションが所狭しに並べられており、カウンターの奥にいかにも魔女が掻き回していそうな大釜が三つ設置されており、薄暗い店の雰囲気も合わさってどこかおどろおどろしかった。
「すみません、誰かいませんか」
そう言って店の奥に問いかけ、しばらく待つが得に返事は帰って来ない。留守なのかと思い外に引き返そうとしたその時建物の二回からドタドタと激しい音がなり始め、バンッ!と勢い良くカウンターの奥にある扉が開け放たれた。
扉から出てきたのは茶色く長い髪を生やした背の低い女性で、余程慌てていたのか髪はボサボサで服もだいぶ着崩してしまっている。
「い、いらっしゃいませーあはは」
出てきた女性はパッと見でもわかるレベルの露骨な愛想笑いを浮かべながらこちらの事を警戒した様子で見ており、自分に何か思う所がありそうだ。まぁ上で何をやっていたにせよ、何かをやっている最中に呼び出されたら不愉快に思うのは当然の事だししょうがない事だと思うが…客商売をやってる者としてその態度はどうなのだろうか?
「あ、あの〜ご注文は」
「ごめんなさい、少し考え事をしてました。これとこれをお願いします」
「はいはい、治癒と解毒のポーションの二つね…銀貨35枚ね」
提示された金額は市場で売られている物と比べて倍…とは行かないまでもかなり高い金額だ。まぁその分品質は高そうに見えるけどこの程度のランクの品じゃ品質の善し悪しじゃそこまで大きな際にはならないとおもうんだが…
「どうぞ」
とはいえ、木の実を採取する時にフォレストスネークを大量に狩ったおかげにお金にはそれなりに余裕があるし出し渋る程の金額じゃない。手持ちの袋に手を突っ込んで『次元収納』を発動して35枚銀貨を取り出して、さも袋から取り出したかのようにカウンターに並べる。こういう時『次元収納』は指定したものを指定数取り出せるから便利だ、普通の袋に突っ込んでいてはこうは行かない。
「あ、はい……確かに、お買い上げありがとうございます」
「それで…少し話があるんですけど…いま大丈夫ですか?」
「え?え、えぇ大丈夫ですよぉ?」
「この依頼を出したのは貴女で間違い無いでしょうか?」
そう言って懐から傭兵ギルドで受け取った依頼書を見せる」
「それは…あ、確かに私が出した物ですけど…もしかして貴方が例の依頼を受けてくれた人ですか?」
「一応、そうです」
「そうなんですね!あ、でも確か傭兵ギルドの人は獣人の姉妹のパーティーだって…」
「私もそのパーティーの一員なんですよ」
「そうなんですね。えっとそれで一体なんの御用でしょうか?あ、見たらわかると思いますけど金銭的な余裕はあまりなくてあれ以上の報酬は……」
「そんな事言いませんから安心してください。今丁度ポーションを切らしてしまっていましてね、それを購入するついでてに、折角だから護衛対象と顔合わせを済ませておこうと思っただけですから」
「そうなんですね」
そう言って女性はあからさまにほっとした様子を見せる。
「私の名前はドーンと言います、当日はよろしくお願いしますします」
「あ、はい!私の名前はタロです、よろしくお願いします」
「ええ、任せてください」
★
護衛依頼は…あの感じだと大丈夫そうかな、話の通じる相手だったし、聞き分けも比較的良さそうだった、この分のならあの時のワイバーンみたいな強いのと出くわさなきゃどうにでもなるはずだ、中層の魔物はもはや大した脅威じゃないし深層の魔物が出てきても3人がかりなら仕留めるのは容易い。まぁいざ危機が迫ったり実践となるとそうじゃなくなるかもしれないが…そんなこと早々無いし対処事態は容易いから気にする必要はないだろう。
そんな事を考えながら薬屋の有る裏通りを出て市場のある表通りにやって来た、まだ昼過ぎだからかそれなり人が多く、辺りには肉の焼ける香ばしい匂いとそれに混じって焦げた匂いが漂ってくる。
今の目的は…二人に何かいいお土産はないかなと探しに、後はこの世界に来てから初めての暇だから何か面白い物探しとか……あるいはこの世界に自分がいる理由も見つけられたらいいなと思う、一応自分がこの世界で初めて目覚めた場所に1番近い街だしなにか手がかりがあるかもしれないし。
そんな感じで何となく〜く賑やかな市場を屋台を冷やかしながら練り歩いて行く、妙に注目を集めているのは…多分格好と容姿のせいだろう、殆どの人が薄着で短髪の茶髪…偶に金髪もいるがそんな中でトレンチコートとシャツを着た、白髪、青インナーのポニーテールで紫目の男……まぁ目立つよな、何処からどう見ても異邦人だし。
とはいえ別にそれだけだ、注目する以上の事はして来ないし、別に見られてる困るようなこともしてないからべつに構いやしないが。
「ん?」
ふととある店が目に留まり足を止めた。確かあの店は……黒蓮が何か怒鳴りつけていたアクセサリー売りの屋台……なんか店主の人にめちゃくちゃ怯えられてるな、そう言えば黒蓮がこの店で言い放った言葉って「私達は帰らないから」的なニュアンスの言葉だった気がするし、もしかしなくてもこの店の店主って獣人?それもあの跡地でのやり取り見てた……?
「っっ!」
まああのビビりようなら何かちょっかいをかけてくるような事はあるまい、仮にかけてきたとしてもあの程度ならどうとでもなる。
アクセサリーを売っている屋台の前を通り過ぎ、さらに市場の奥へ進んで行く。基本的には食料などの日用品や食べ物を売っている店が殆どであり、特に見るべきものは……いや、待てよ?そう言えば料理ってどうなってるんだ?ゲームだと料理系のクラスでそれ用のスキルを持ってないと品質やバフに大きな制限がかかったはずだけど…作ること自体は出来たはず。とは言えそういう使い切りのアイテムは自分の嗜好に合わないから殆ど使った事も無いし、当然レシピも全く知らない。リアルでも料理なんてまともにした事無いし、懐かしの味の再現なんて夢のまた夢か…まぁまだこの世界に来てから1ヶ月も経ってないけど。
あ〜でも別に何とかなるかも…レシピ自体は【道具生成】で作れるし、料理人も【命の生成】で生み出せる……一考の余地はあるな、蘇生系の魔法やスキルがゲームと同様に働くか分からないうえ、現実である以上やり直しが聞かない事も多くあるだろうから出来ることはやっておいた方がいいはずだ。
しかし指定のクラスやスキル持ちを生成するのはそれなりコストがかかるし、まだまだ余裕があるとはいえ安定供給先がない以上無駄使いはしたくない……レベル50になった時に習得できるスキルがあればある程度はましにはなるはずだけどまだまだ先だし。
あ、そう言えば武器俺だけ更新して二人はそのままだった、料理バフよりもそっちを優先するべき…いや、防具が先か?護衛対象がいる訳だし攻撃から庇うような場面が発生しないとは限らないし、忘れる前に帰って相談した方が良いな。
結局、ドーンは市場を見て回っただけで何も買わずに二人の居る宿屋へと帰るのだった。




