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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
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【47】閑話

呻き声を上げる山賊を前にした黒蓮は、一瞬怯む様子を見せたものの意を決した様に刀を背中に突き刺した。


突き刺された山賊から血が吹き出しながら痙攣する。当然近くにいた黒蓮にもそれはかかり、刀を手放してフラフラと後退りし刀を突き刺した手の平を浅い呼吸で見つめている。


「わ、わたし」


「黒蓮」


今にも倒れそうな黒蓮に近付いてその体を支えると、黒蓮は自分の服をぎゅうと握り締めポロポロと大粒の涙を零しながら自分の事を見上げた。


「やった、やったよね?私ちゃんと出来たよね?」


そう涙を流しながら聞く黒蓮はまるで親から嫌われない様に必死になる幼子のようにとても弱々しく…とても見て居られ無かった。


「勿論だ、ちゃんと出来てる。よく頑張った、よく成し遂げた、偉いぞ黒蓮」


「そう、そうよね私、ちゃんと出来るわよね……」


そこまで言ったところで緊張の糸が途切れたのか黒蓮はくたっと腕の中で意識を失ってしまった。気を失った黒蓮の刀を鞘に戻し、連れ帰る為に担ぎ上げているといつの間にかぷりぷりと起こった様子の金華が近付いて来てきており、尻尾をピンッと立たせジト目でこっちを見ていた。


「….どうした金華?」


「お姉ちゃんだけ褒められてずるい!」


そう言って自分に背負われた黒蓮の事をビシッと金華は指さす。


「あぁなるほど…いや、金華は昨夜躊躇なく知ってる人を焼き殺してなかったか?」


「むー!それはそれ、これはこれだよ!」


「そうか…まぁそうかもな。金華もちゃんと出来て偉かったな、黒蓮のサポートもしてくれたし本当にありがたったかたよ、ありがとう金華」


「えへ、えへへ♡」


そう言って金華の頭を優しく撫でながら褒めると、金華はにへらと顔を綻び、耳はへにゃりと垂れさせ、機嫌よさげに尻尾を振って喜ぶ様子を見せた。


周囲に人の死骸と瓦礫がある環境で血に濡れた美少女が撫でられてにこやかに笑う様は何処か猟奇的な気もするが…誰かに見られてるわけでもないだろうから構わないだろう。


「さて」


担ぎ上げていた黒蓮を近くの木にもたれかからせる様に下ろし『次元収納(インベントリ)から槍を取り出す。


「どうかしたの?」


「いやなに、そういえば俺も直接手を下したことは無かったなと思ったてさ」


首を傾げてそう疑問を呈してくる金華にそう答え、まだ生きている山賊に近付き槍を構える、山賊の顔は半ば瓦礫に埋まってしまって居てその全容を見ることは出来ないが、それでもその表情が恐怖に歪み青ざめている事が察せられる。武装と体格から察するに山賊をする前は農民だったのだろうか?


ーーーザクッ


槍を振り下ろすと山賊の肉を貫く感触が伝わって来るが…まぁ色が違うとは言えど魔物の肉を割く感覚と色以外はそう大差無いし同様には値しない。


山賊の絶命を確認した後、槍をしまい〈浮遊人形(フロートゴーレム)の青大剣〉を《人形劇の指輪(マリオネット)操作して残りの山賊にトドメをさす。


「これで依頼完了だな」


「そうだねドーン。あ、そういえば此奴らが奪い取った物って無いのかな?確か貰って良いって話だったよね?」


「確かにそんなにことを受付のおじさんが言ってたな……けど【魔力探知】それらしき反応は無いからあっても食料系が精々だろうからわざわざ瓦礫を掘り起こしてまで探す程のものじゃないよ」


「そっか、それじゃお姉ちゃんを連れて町まで戻ろ」



といわけで黒蓮を担ぎ上げて街まで戻り、依頼達成の報告をしてそのまま宿まで帰ってきた。初めて担ぎ上げた時に比べるとかなり遠い道程だったがレベルアップの恩恵かそこまで苦も無く戻ってくる事が出来た。


そして宿屋で血や埃で汚れた体や服を〈洗浄の札〉を使って綺麗にしていると黒蓮が向くりと起き上がった。


「あれ、ここは……」


「あ、お姉ちゃん大丈夫!?」


そう言って金華がバッと立ち上がり黒蓮の方にトコトコと近付く。


「え、ええ、大丈夫よ…あぁそうだわ、わたし人を殺して…」


「うん、そのまま気を失っちゃった」


「依頼はちゃんと達成したから安心して……そうだな、休んでいろ」


「そう…そっか。それじゃ少し休ませて貰うわ」


そう言って黒蓮は再びベット横になる。


「折角だから甘やかしてやろうか?」


「……遠慮しておく」


黒蓮に冗談半分でそう言うと、煩わしそうに断られた。ちょっと前の時みたいにギャーギャー言いながら断ってくると思ってたからこれは予想外…本当に精神的に参ってるんだな。


そっと黒蓮に近付いて黒蓮の頭を撫でる。


「いい子いい子」


「…ちょっと別に甘やかさなく良いって」


「まぁまぁそんな事言わずに」


「そうだよ!お姉ちゃん沢山頑張ったんだから!私も撫でて上げる」


「ちょっちょっと!?」


この後小一時間ほど二人で黒蓮を撫で回した。そして戯れ、一息ついた後の黒蓮は少し前の憔悴した様子とは打って変わっていつも通りの快活な様子に戻っていた。


「なんというか…ありがとう二人ともおかげ少し気が晴れたわ」


「それは良かった!あんなションボリしてるの全然お姉ちゃんらしく無かったもん!」


「そうだな…と言っても色々と疲れたろ?午後はゆっくり休んだ方がいい」


「そうね、そうさせて貰うわ」



何かあったら些細な事でも遠慮なく言うように伝えて二人の部屋を出た後、自分は自分の部屋には戻らず宿屋を出て街に繰り出した。目的地は…次に行う事になる護衛依頼の護衛対象の薬師が営む薬屋だ。


聞き込みをしながら街を歩いたが、知っている者が殆どいなかった為に結局街中を彷徨い歩く事になってしまった。こんな事なら何時もの受付のおじさんに場所を聞いておくべきだった。そんな後悔をしながらもついに目的の場所にたどり着いた。


そこはそれなりに込み入った路地の先にあるボロい…….と言ったら語弊がある少し古臭い石造りのこじんまりとした建物であり、外にはポーション屋とだけで書かれた看板が設置されていた。


お店は見た感じ閑古鳥が泣いており、建物の見た目からしても、とても提示されている報酬額が払えるような店には思えない…が報酬金自体は依頼を受けた時点で傭兵ギルドに収められているはずなのでそれは問題無いはず。


そんなえもしれぬ事を考えながら薬屋の中に入って行った。



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