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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
49/122

【46】山賊

「ぅぅぅぅぅぅ」


そして山賊達の()()を目撃した瞬動、黒蓮は耐えきれなくなって嘔吐した。


現場に近づき、人の血肉の匂いが強くなって行く度に黒蓮の具合が目に見えて悪くなって行っていたので心配していたが……案の定こうなったか


膝を着いて嘔吐し続ける苦しそうな黒蓮の後ろに周り背中をさすっていると金華が慌てて近付いて来て黒蓮に回復魔法をかけ始め、心配そうに声をかける


「お姉ちゃん大丈夫!?」


「うぅぅおえっっっ」


「……とりあえず此処を一旦離れよう」


ちょっとやりすぎたか。そう思いながらゲロを吐きながら気持ち悪そうにぐったりとする黒蓮の背中越しに山賊達の残骸に目をやる、山賊達は〈浮遊人形(フロートゴーレム)の青大剣〉によって1人残らず文字通りバラバラになって辺りに血と臓物がばらまかれる悲惨な状況になっており、ゲームでこういった環境にある程度慣れている自分でも少し感じる物がある。


凄惨な死体を見れば殺す事に対する精神的なハードルが下がると思ったが……この様子だと寧ろ逆効果だったかもしれない。


「ま、待ってドーン…私はだいじょっぅ」


「とてもそうは見えないが」


「大丈夫、大丈夫…だから…私は…やれる、まだ出来るから」


そう言って口元を拭いながらヨロヨロと覚束無い足取りで起き上がった黒蓮は霞んだ瞳でこちらを見ながらそう言う。


「だ「先にこうドーン?」金華?」


戦う前から憔悴しきった様子の黒蓮。ダメだと伝えようとしたその時、言葉を遮る様に金華がそう言った。


「お姉ちゃんの面倒は私が見るからさっ…だめ、かな?」


金華がふらつく黒蓮を支えながらそう言って真剣なら眼差しでこちら此方を見つめてくる。敵の強さや黒蓮の状況そして金華の意思、そして今後展望…それら合わせて今どうするべきか……情報通りなら恐らく問題はない。二人が戦えなくても容易く依頼は達成出来る….がこの依頼の本当の目的は人を殺せるか見る為の物、金華はともかく俺一人でやってもそれではあまり意味が無い様に思える。二人の意思を無視して一度退避した場所….正直どうなるのか全く予想出来ないが……


二人の方をちらりと見ると金華は相変わらず芯の強い瞳で此方を見つめているが、黒蓮は怯える子供のような今にも泣き出しそうな怯え切った震える瞳で此方を見つめている。


……あまり良く働かないような気もする。2人は無理をしてダメになるリスクより、この状況から逃げ出す方がリスクが高いと踏んでいる様に思える…この選択がどういう影響を及ぼすにせよ致命的な物には流石になり得ないと思うし、今後の関係を考えると二人の意志を尊重した方がいいはずだ。


「わかった先に進もう、少し待って居てくれ」


「ドーン!」


「…ありがとう….ございます…ドーン」


次元収納(インベントリ)から〈運命の羅針盤〉を取り出し、この場にある山賊達の死体を媒体にして拠点の位置を指し示させる。


「こいつらが拠点日している場所はそう遠く無さそうだ……移動出来るか?」


「……ええ」



「『加重(ヘビー)』」


それから程なくして山賊のアジトにたどり着いた。山賊のアジトには竪穴式住居らしき物が二つ立っており、【魔力探知】で確認した所見張りらしき人物は切り開かれた場所の中心にいた2人だけだ。とりあえず『加重(ヘビー)』を発動して押し潰す。


普通なら『加重(ヘビー)』に相手を動けなくする程の効果は無いがレベル差、種族差、職業差、そして耐性の有無を考えればこんなものだろう。『加重(ヘビー)』を受けた見張りの山賊達は微かに呻き声を上げながら倒れ伏しており、まともに声を上げることすらままならないようだ。


潰れて行く二人の見張りから目を離してパッと見でもわかるぐらい粗末な作りをした二つの竪穴式住居に目をやる。【魔力探知】によると小さい家の方に五人、大きい家の方に二人いる。幸いな事に双方共に反応は予想の範疇を出ておらず、攫われた人などもいなさそうだ。もし攫われた人が居たら色々と手間が増えるから助かった。


二つの竪穴式住居を対象にして『加重(ヘビー)』を発動すると対象となった建物は一瞬すら耐えられずにぺちゃんこに潰れ、瓦礫の中から絶叫と悲鳴が響き渡った。しかし粗末な作りだったのが項をそうしたのか瓦礫の中からみすぼらしい姿をした人間が瓦礫を押し退けながら続々立ち上がった、その数は4人程であり残りの三人は気を失っているのかはたまた運悪く致命傷を負ったのか起き上がって来る気配は無さそうだ。


「ぐっ…おいてめぇら無事っっ!?誰だてめぇら!!」


瓦礫のかから出てきた人間の中でも比較的ましな装備をしている男が周囲の状況確認するように辺りを見渡し、それによってこちらに気が付いた大きな声で怒鳴りつける様に誰何してきたが、答えてやる義理はない。出てきた人間を対象に………いや違うな、対象指定ではなく範囲指定で『加重(ヘビー)』を発動すると瓦礫から這い出て来た人間達は見張りの2人の様に即座に自重を支えきれなくなって倒れる……前に足場の瓦礫が耐えきれなくなって全員が倒れふした。当たり所が悪かったのかまた何人か死んだがまだ何人か生きてるな。


「2人とも…トドメを刺して見るか?」


「トドメを…私が?」


そう聞くと黒蓮は明らかに狼狽した様子を見せ、目を泳がせ初めた。


「無理ならやらなくていい、黒蓮が無理をする必要は無い」


その様子を見てこれは無理そうだなと思い、そう言い放つとその言葉の何かが黒蓮の涙腺に触れたらしく急にハッとした表情になったかと思うと金華に肩を預けて腰砕けになっていた姿勢を正し、俯いていた視線をこっちに向けた。


「やるっやらせてください」


「そうか…金華はどうする?」


「もちろんやるよ」


「『加重(ヘビー)』の効果で全員動けなくなっているから……まぁ殺るならちゃんと殺れよ」


「もちろん!」


金華は場の空気にそぐわない元気な声で返事を返し、瓦礫の上で倒れ伏す山賊の一人に近付いて引き絞った弓矢を突きつけ、そのままちらりと黒蓮の方を見た、どうやら黒蓮を待っているらしい。


黒蓮は金華のその視線にびくりと体を震わせ、フラフラとした危なっかしい足取りで位置につくと刀を抜き放ちその切っ先を山賊に向けた。


「……ぅ…」


「っっ」


呻き声を上げる山賊を前にした黒蓮は、一瞬怯む様子を見せたものの意を決した様に刀を背中に突き刺した。

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