【42】樹上
そして傷付いた翼が自重に耐え切れずへし折れた後、戦いは単調な作業のように終わりを迎えた。
あの突進による不可は自分の想定よりも大きかったらしく属性飛龍はその後は立ち上がる素振りすら見せず、残ったもう片方の翼と尻尾と頭を振り回し、更には魔法も使用して激しい抵抗をしてきたものの移動速度が著しく低下したためこちらの攻撃が回避されるようなことは無く距離を取って遠距離攻撃で一方的に削り殺した。途中からこちらに攻撃をさせない為か止めどなく魔法を放って来た為時間がかなりかかって既に夜になってしまったが……全員無事で属性飛龍を倒す事が出来た。
「か、勝ったの?」
「そう…みたいだな」
「ドーン!」
全身傷だらけとなり、見るも無惨な姿を晒す属性飛龍死体を長めなら感慨にふけっていると金華声を張り上げてグイグイっと引っ張ってくる。そちらに視線を向けると可愛らしく頬をぷっくり膨らませた金華の姿があった。
「金華…あ、さっきは投げ飛ばして悪かったな」
「そんなの……どーでもいいよ!私を庇うためだったて分かってるし」
てっきり急に投げ飛ばされた事に怒ってるんだと思ったけど違うのか?
「無茶しちゃダメだって言ったでしょ!全く!」
「ああ!確かにそんな約束した気が…いやいや、俺じゃなくて金華が跳ねられてたらこんなものじゃすまなかっただろ?」
「それはそうだけど……むぅ〜!傷を見るからしゃがんで!」
「…わかった」
そう答えてしゃがみこむと金華はいそいそと近付いてきて回復魔法を使い始めた。傷は既に殆どフリョンによって直されてるが…まぁ戦いはもう終わったし心配をかけた分ぐらいは付き合うべきだろう。
「それで黒蓮…あの属性飛龍はどうするんだ?」
「どうって…あぁ換金するかポイントに変えるのかの話ね。そうね~ワイバーンの換金額なんて聞いた事ないけどあの強さだしかなり高そう……だけどあそこまでボロボロじゃあんまり振るわなさそうよね」
「それは…そうだな」
ぐちゃぐちゃになった属性飛龍を見る。翼も足も角も折れて、その他の部位も穴だらけでボロボロ……うん、確かにあまり高くは売れなさそうだ。
「それでポイントに変換するとどんなもんなの?」
「そうだな… 属性飛龍、第四階梯の魔物だろ?それでレベルは多分30強、撃破で入手したポイントとを踏まえると…今まで手に入れてきたポイントの倍は手に入るじゃないか?」
「そ、そんなに?確かに今までと比べ物にならないぐらい強かったけど……」
「ああ、これだけポイントが手に入れば希少級のアイテムで全員分の装備を用意出来るはずだ」
「希少級…は、よく分からないけどなんだか凄そうね、今後も傭兵として生きて行く以上強力な装備があるに越したことはないわよね。今はお金に困って無いし変換してちょうだいドーン」
「ああ…」
属性飛龍が変換されるとその巨体も相まって今までにない、視界を埋め尽くす程の大量の青い粒子が辺りを舞体の中に入ってくる……そして数秒後には青い粒子は消滅し、数秒後にはなんの痕跡も残さずに消滅した。なんというか、この光景を見ていると本当に終わったんだなという感じと達成感がふつふつと沸き上げくる。
「それで…この後はどうするんだ?」
「…….飛行アイテムは作れる?」
「いや、その必要はない、この勝利で新しく『反重力』が使えるようになった。効果は…まぁ簡単に言えば減速が無くなる、軽くジャンプしただけでどこまで飛んで行けるようになる」
「成程、たしかにそれがあれば別にいらなそうね、それじゃ木の実を取りに行きましょ」
「ただ本当に何処までも飛んで行くから気をつけてくれ」
「わかったわ」
というわけで全員に『反重力』をかけ、鉤縄を駆使しながら大木をスムーズ登って行く。ちなみに今回は普通に登って行っていた時とは違い順番ではなくみんな一緒に飛び上がっているうえ、なぜか2人とも何故か滅茶苦茶近いからぶつかって在らぬ方向に飛んで行きそうでちょっと怖い。
いやまぁ2人は空中浮遊なんて体験は初めてだろうし怖がってるのかもしれない…その割には真顔でこちらを見つめてるけど。
そうやって上え上えと上がって行くと程なくして随分と開けた場所に出る、属性飛龍と遭遇した場所だ。それぐらいの高さまでものの十数秒で登ってこれた、最初ここに来るまでに何十分もかけたのがバカみたい思えるスムーズさだ。
「フォレストスネイクは…居ないみたいだな」
【魔力探知】を使って周囲を捜索するがそれらしき反応は見当たらないし、僅かに感じ取れる反応は死にかけらしきものだけ……
「何か居ても、ドーンは行ったらダメだよ?」
「怪我は治してくれたからもう大丈夫だぞ?」
「あんな大怪我したんだから!絶っっ対に安静にして無きゃだめだよ!!」
「別にもう痛くも何ともな「ダメったダメ!!」お、おう」
「………」
そんなやり取りもあったものの順調に登り続け、遂に頭上に月が直視出来るほどに上り詰め、いよいよ目的の場所にたどり着いた、属性飛龍が暴れていたのはこの場所よりもかなり下だったから衝撃で落ちたりしていなければまだ……
そうやって辺りを見渡すと案外すぐに目的のものは見つかった、梨を思わせる形をしたオレンジ色の大きな果実がそこにあった。
「やった!頑張ったかいがあったね!」
そう言って金華が木の実をもぎ取って嬉しそうに笑った。青い月光に照らされ、夜風に髪をなびかせながらこちらに笑いかけるその姿は何処が幻想的で美しく…思わず見惚れてしまった。
「必要数集まったし早く帰りましょ」
「そうだな」
黒蓮の言葉て我に返り、下に降りる準備をしようとした直後、金華が何かを確認するように黒蓮にこう声をかけた。
「お姉ちゃん何かあったの?何か変だよ?」
「…別になんでも無いし大丈夫よ」
「全然そうは見えないよ?」
そんな二人のやり取りを見て、そういえば属性飛龍が現れた時、黒蓮が何かに気が付いた様子だった事と、魔物の青い血肉に混じって人の赤い血肉も飛び散っていた事も思い出した。
「もしかして属性飛龍が現れた時、飛び散る魔物の血肉に混じって知り合いの顔でもとんでたかのか?」
「………」
ある種冗談半分で言った言葉に対する黒蓮の返答は沈黙と複雑……え、まじ?というかあの状況でそんなの見つけたのかよ、すげーな。い、いや、まずそうじゃないだろう、そうじゃなくて……
「済まない、不躾だったな」
「……別に構わないわ。私、あの猫野郎のこと大嫌いだし、むしろ死んだとわかって清々したぐらいだわ!」
「そ、そうか」
「ちょっと待て…お姉ちゃん!アイツが食われてたって事は村は……




