【40】ワイバーン 前編
予想だにしない呆気ない結末に意気消沈しながら属性飛龍が次の獲物を求めてこの場を立ち去ろうとしたその時、粉塵の中で一筋の鋭い光が放たれ、その直後に粉塵を吹き飛ばす様に三本の淡い光を纏った矢が出現しそれらは属性飛龍に向かって飛翔していた。
当然狙われている属性飛龍はその事を認識していたが常に張っている風壁を突破する程の威力は無いと思考から切り捨てて矢が飛んで来た方を見やる。気配に比べて呆気なく終わってしまったと思ったがどうやらそんな事は無かったようだとニヤリとその口元を歪ませ…程なくしてそれは苦悶の歪み変わった。
痛みのした場所を見れば大きく抉れ血が流れいた。一体何から攻撃を受けた?属性飛龍が疑問に答えを見つける前に第2射が粉塵の中から放たれた。攻撃はあの矢ぐらいな物だが威力に乏しく、風壁を突破出来るはずがないし、そもそも傷口には矢が刺さって居ない。
警戒心からか、はたまた直感からか属性飛龍は再び飛んできた三本矢を風壁を纏った尻尾で撃墜した、当然矢は一本たりとも当たって居ないし風壁を突破すら出来ていない……にもかかわらず先程と同じく肉が大きく抉れ青い血が流れ出す。
ーーーGAAAAAAAA!!!!
属性飛龍が再び叫び、強風が吹き荒れると辺りに舞っていた粉塵が風に乗って流されこの場の全景が露になった。属性飛龍の周囲数十メートルの枝葉が一本しか残って居らず、その上には三人の人影があった。
★
side ドーン
属性飛龍はその喉笛を大きく膨らませて【竜の息】を発動し、風刃を伴った風属性の波が三人に迫った。【竜の息】は自分達を覆うように【環境改変】によって作られた鈍い鉄色の光のエリアに侵入した瞬間に僅かに属性効果で勢いを失い、直撃するはずだった分は習得条件を満たした事で先程使えるようになった自分の職業スキル【防御指示】…100のダメージ固定値減少によって完全に防がれる。
「【攻撃指示】」
「【三連矢】」
そして【攻撃指示】、お察しの通りこちらは100の固定ダメージの追加…固定ダメージは攻撃が命中せずとも当たった瞬間にダメージが発生するのでやつの身を守る風壁に当たれば例え本体に届かなくてもダメージが通る。
欠点をあげるとすればこの二つは併用が出来ない点と自分にはかけられない点だが…パーティーから抜けない限り効果は永続で効果の切り替えも魔力消費だけで自由に出来るから効果としてはかなり破格のはずだ。実際ゲームでも永続バフ、それも固定値で100以上上昇差せられる物は他に殆ど無いし指揮系以外とは重複して効果が発動してくれるのも魅力だった。
「あ、躱された」
とはいえ、さすがにそう何度攻撃に当たってくれる相手では無いらしい。金華の射撃をしっかり回避した属性飛龍は遠距離で戦ったら不利だとでも思ったのか、その翼を大きく羽ばたかせかなりの勢いでこちらに突進して来た!
「さすがにあれは無理だ」
「そんなの見ればわかるわよ!」
属性飛龍は大型トラックを思わせる巨躯を誇っており、それが魔法も使って加速しながら突っ込んで来るとなると、流石に100以上のダメージが出るだろう。この手の軽減系は先程のブレスの様な照射や放射のような継続的に当てることでダメージを与えるタイプとの相性がよく…突撃の様な一撃必殺系とは相性悪い。まぁそういうのは得てして回避しやすい事が多いから回避すれば良いんだけど……ここじゃそんなことは出来ない。
「突っ込んで来た瞬間に【狐火】を使ってあいつを燃やせ。それにも固定ダメージが乗るから、さっき感じからしてそれですぐに倒せるはずだ」
「それはいいけど!どうやってこの場を凌ぐのよ!」
不安さを隠しきれない様子でまくし立てるようにそう言う黒蓮。
「……一段下に飛び降りるしかない」
「本気で言ってるの!?一段下でも2、30m下よ!?」
「待ってても地面のシミになるだけだし、登って来る時に使ったロープがまだ残ってる」
「それはそうだけど……ちょ、ちょっと!?」
「ちゃんとしがみついとけ、金華は一人で行けるか?」
「うん!」
躊躇う様子を見せる黒蓮を片手で担ぎ上げ、金華にフリョンを投げ渡し足場にしている枝からぶら下がっているロープに飛び込んだ。
「ぐっ」
そしてロープを掴む事に成功し、背後で青白いほの光が灯るのを確認してそのままロープを伝って落下を始める。激突する前に止まるためにロープを掴む右手が焼けるように熱くなり、激しい痛みを訴えてくるが止まるわけには行かない、少しでも速度を緩めたら属性飛龍が紐が結ばっている枝に激突して自由落下してしまう、それだけは避けなくては。
ーーーバキンッ!!
が、しかしそんな覚悟と無茶は身を結ぶ事は無く、下の枝に着く前に突進してきていた属性飛龍が紐が結ばっていた枝を破壊し、ロープが千切れて自由落下が始まってしまった。
「ひぃぃぃぃ!?!?」
「くそっ!」
随分と可愛らしい悲鳴を上げる黒蓮を無視して何時もの短槍と盾を『次元収納』から取り出して木の幹に突き立てる!
ーーーガガガガガガ!!!!
幸いな事に槍が勢いに負けてへし折れる事は無く、突き刺した地点から数メートル幹を引き裂いた所で落下は止まり…すぐ後ろをついていた金華をキャッチすると流石に耐えられなかったらしく、槍は柄の部分でへし折れてしまいそのまま落下したが幸いな事にあと数メートルで一段下の枝だったため大事には至らなかった。
「わ、私達生きてる…の?………あいつ私達のことを見失った見たいね」
「そう…みたいだな」
黒蓮の言う通りだった。見上げて確認してみれば【狐火】によって燃え盛る属性飛龍は頭を振って何かを探すように旋回しながら飛び回っており、最初の衝撃波のせいで枝葉が近くに殆ど残って居ないことを合わせて考えれば、間違いなく見つかるのは時間の問題だ。
「ドーンの回復も終わったし早く下に行こ!あんなふうに何度も襲われた一溜りも無いよ!」
「そうね」
当然自分も反対するはずもなく三人でするするとロープを伝って地面を降りて行った。幸いな事にロープを使って降りて言っている最中に敵に見つかることも無く無事に地面に降り立つ事が出来た……
かに思われたが、地面に到着した瞬間感に前方で激しく土埃と枯葉が舞い散り視界を塞いだ。そして程なくしてそこから激しい咆哮が鳴り響き渡り、舞っていた土埃と枯葉を吹き飛ばしあちこちが凍てついた巨躯が露になるなる。
「随分執念深いな」
「まだ追って来るだなんて」
「いつバレたんだろ?」
三者三様違うリアクションを取りながらもしっかりと戦闘体勢になり……
ーーーGAAAAAA!!
属性飛龍の激しい咆哮とともにその戦端は再び開かれた!




