【39】樹上の攻防 後編
「決めたわ、私達は……上に行くわ、ただし…音が収まった後で」
「その心は?」
「正直今の疲れ果てた状態で連戦は勿論、強敵と戦うのは避けて起きたいと思ったの。それに……
ーーーバキバギバキ!!
この今も鳴る激しい破砕音からして新たな強襲者の目的は多分木の実じゃないわ、もしそうならとっくに終わってるか、そう出なくても音は遠くになっているはずだもの」
「なるほど、確かにそれなら謎の乱入者がフォレストスネイクを全て始末して去った後に悠々と木の実を回収出来る可能がある…
ーーーバキバギバキ!!
あの激しい戦いで木の実が全て壊れてなければだけど」
「そうね……」
そう言って3人で激しく揺れ、音を立て、時折枝葉が降ってくる上を見上げる。
そして音がなり止む前に上に登り戦いに乱入する事も無く、その場で休みながら待機する事十数分……上から鳴り響いていた音が止み、その直後に激しい咆哮が響き渡る。
「うっ….一体何?」
「上で暴れてたやつの咆哮だと思うが…鳥って感じゃ無いな、それよりも持っと重厚で…ッ!?」
突然の大気を震わせる様な激しい咆哮に驚きながらも、その咆哮の主…上で大暴れをしていたであろう存在が何者かを推測していると…ビチャンと言う水っぽい落ちた様な音ともに視界が真っ赤に染まり、それと同時に再び枝葉をへし折る激しい音が辺りに響き渡り始めた。
「うひゃあ!?」
そして反射的に顔に付着した赤い何かを手でとり確認するとそれがよく見なくても肉塊だったと分かった、しかもまだ生暖かくまるでつい先程まで生きていたようで……
「ドーン!」
鬼気迫る黒蓮の呼び声で人の肉塊が顔面に激突したことによる動揺から僅かに立ち直り、促されるままに上空を見上げるとそこには……馬の様な長い胴体に鳥類を思わせる鋭い鉤爪を持ち、更にはコウモリのような皮膜の翼に蛇のようなウロコを持ったトカゲ頭の魔物………ワイバーンがそこにいた。
ーーーGAAAAAAA!!!!
「ぐぅぅ」
再度行われた激しい咆哮、それに呼応するように突風が吹き荒れて足場としている太い枝も激しく揺れ、人の赤と魔物の青の血潮が風に乗って辺りに舞い散る。
「属性飛龍!?属性は風だって!」
「な、なんだってー!?」
金華が【魔物鑑定】をあのワイバーンに対して使用したらしくその種族名を口にした。
属性飛龍は第四階梯の魔物…決して第一階梯の魔物ばかりのこんな森にいていい存在じゃない!しかも先程の戦闘音とパッと見の雰囲気から察するにこの世界にきてから今まで出会った存在の中でまず間違いなく最もレベルが高い……
「あ…」
ーーーGUOOO!!
何かに気が付いた様子の黒蓮に、話しを聞く間もなく属性飛龍は再度咆哮を上げ、それと同時にワイバーンの周囲が薄い緑色の光を帯びて魔法が発動される前兆を示す!黒蓮と金華もその事に気が付き魔法の発動を妨害するために空を飛翔する属性飛龍目掛けてそれぞれ遠距離攻撃を仕掛けるが、属性飛龍は事前に防御魔法を発動して居たらしく風の防壁によってそらされてしまった。
「ポイントを使うぞ!」
躊躇っている時間も、相談する時間も無かった。光の規模と先程まで上で響いていた破壊音、そして防御性能から察するに相手の魔法能力はかなり高い、たとえ敵が用意しているのが範囲攻撃だったとしもレベル差と溜め考えればかすっただけでも致命傷免れないだろうし…風属性であることと地形も考慮すれば例え攻撃を躱せたとしても死にそうだ。
逃げるなんてことももちろん無理。地上ならいざ知らずここは大木と言えど木の上、飛べない以上高速で移動なんて落下でもしない限り無理だし、そんな事をしたら間違い無く死んでしまう。そもそも風属性持の奴ら速度に秀でている事が多いからただ逃げて逃げ切るのは無理だろうけど。
つまり何が言いたいのかと言うと、あの属性飛龍の攻撃を防げてかつ、撃破する為に防壁を突破してダメージを与えられるものを生成する必要があるということだ。
かなり欲張りな注文だし、仮に防壁を突破出来たとしも今度はレベル差が立ち塞がる。レベル差による補正を突破してダメージを与えてるには、散々話した通り急所に攻撃を当てるか固定ダメージしかないが… 風属性の属性飛龍が現れた時の最初の咆哮のせいか、先程からずっと暴風が吹き荒れており、高速で飛翔出来るだろうことも考慮すると正直言って今までのように弱点に攻撃を命中させて倒すのは現実的じゃない。
一応金華の【環境改変】を使えばあるある程度の風の影響は抑えられるだろうけど、レベル差考えると焼け石に水だろう。
「【道具生成】!さらに【防具生成】」
【道具生成】で生み出したるは《人形核》【防具生成】は周囲に散らばっている木片とフォレストスネイクを素材にして〈鱗の機盾〉を生成、そして《人形核》を〈鱗の機盾〉にある凹みにはめ込むと…ふわりと浮かび上がる。よしよしちゃんと機能した、今持ってるポイント全部突っ込んだからこれでダメだった終わってたから良かった。
「そんな小さな盾でどうにかなるの!?」
焦った様子の黒蓮が恐怖を振り払うようにそう声を張り上げて生成した〈鱗の機盾〉を指差す。
「…大丈夫、どうにかなるはずだ。あとそれは本命はそっちじゃない【ーーー
黒蓮にそう答え、スキルを発動させた直後…属性飛龍の周囲で発生していた薄緑色の光が輝きを増し……衝撃波として解き放たれた!
ーーーーーーバキバギバキ!!
属性飛龍が放った衝撃波は周囲の枝葉を無差別に粉微塵に粉砕し、轟音を立てながらこちらに迫り…自分達の事も容赦無く飲み込んだ。
ーーーGUOOooN!
辺りに粉塵が立ち込める中、属性飛龍は勝ちを確信したかの様に雄叫びをあげる。
苦節数十年、魔物はもちろん人種問わず様々人や村、町を襲ってはその全てを破壊し平らげてきたきた属性飛龍は若干拍子抜けしていた。
強者とは見なくて近付けば分かるものだ、この近くにあった目障りな村を潰したが量も質も悪く、腹ごなしのために大きな体のものの多いこの地にやってきた。そうしたらどうだろうか?今まで感じたことの無い身の毛がよだつような恐ろしい感覚が属性飛龍を襲ったのだ。属性飛龍はこの感覚に覚えがあった、まだ体が小さく魔法も使えない幼き頃(敵と相対した時に常に感じていた感覚……すなわち強敵、無いし格上の相手との遭遇である。
属性飛龍は歓喜した、大量の人族が住む街を、巨大な建物を、自身より大きな存在に襲いかかってなお久しく感じられ無かった死闘、強敵の気配に……故にこそ、邪魔だてしそうな連中を先んじて処理してからその気配の主と相対し己の最強の一撃を持って攻撃した。
ーーーGLLLL……
が、結果はこのとおり、我が必殺の一撃の前に全て灰燼に帰した、今までと同じように。虚しい結末である。予想だにしない呆気ない結末に意気消沈しながら属性飛龍が次の獲物を求めてこの場を立ち去ろうとしたその時、粉塵の中で一筋の光が…




