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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
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【37】樹上の攻防 前編

「ん゛ん゛逆転してしまったな。それでええと…【水の上位精霊誨淫のウィンディ】の話だったな」


「ぷぷっ別に無理に取り繕わなくても良いのよドーン……案外可愛いところもあるのね?」


「…カッコつけさせてくれ」


「まぁドーンの好きにすれば良いわ。けどあのオドオドした喋り方も可愛くて好きよ、私は」


「………それで金華、精霊達からの警告の内容は《かの者は多くの者を色欲に堕っさせた罪にて封されていた。【誨淫】の支配者よ、心すべし。堕落は停滞を停滞は堕落を呼ぶ事を》との事らしい」


「えっとつまり…性欲に注意って話?」


「当たらずしも遠からずだな…まぁ色々と配慮した言い方をすれば有り体に言えば讒言や甘言に注意しろ、という事のはずだ」


「はい!私頑張るよドーン!」


「ああ、何か困ったことや気になる事があったら聞いてくれ」


「うん!」



と、言うわけでちょっとしたゴタゴタこそあったものの無事に話し合いを終えた後、街で諸々の準備をしてから木の実の採取依頼をこなす為に街を出発し、森の中層まで来ていた。


今日は朝早くから依頼をこなす為に外に出ていたし精霊との遭遇というビックイベントもあった訳だから自分は午後は休んで明日からやれば良いと思ったんだけど、今回の受けた依頼はあまり時間的な猶予が無いから…という事で殆ど休む間もなく再び街の外に赴く事になった。こういう疲れてるタイミングでそう言う時間に厳しい依頼を取って来ちゃダメだろと思わなくもないが…まぁこの依頼が終わったら多少休める事を願おう。


休めるのか?そう言えば自分が二人の仲間になってから一日も休みがなかったような……ま、まぁさすがに気の所為だろう。随分と内容が濃いから忘れがちだけど二人の仲間になってからまだ1週間も立って無いはずだから休みが無いのもまぁ当然かもしれない。


そもそも二人って何のために傭兵をやってるんだろうか?確か登録したところ以外の傭兵ギルドでもギルドカードが使えるようになるDランクまで傭兵ランクをあげるのが目標的な話を前にしていた気がするから故郷から離れたい…いや、旅をしたいのか?ただ暮らして行きたいだけならわざわざ難易度高い依頼を受けなくても軽く倒せるようになったジャイアントベアを毎日狩っているだけで贅沢をしても許させるだけのお金が入ってく訳だし、そうしていない以上その可能性が高い…か?ただ向上心が高いだけの可能性も捨てきれないけど。


「ドーン!ここ木の実残ってそうだよ!」


そんな事を考えていると命綱も付けずに鉤縄だけでひょいひょいとバカ高い木の中でもさらに大きな木によじ登って渡した望遠鏡で木の実の有無を確認しに行っていた金華の声が頭上から降ってくる。


最初、中層の序盤にある木に丹念な準備をして頂上付近まで登ったんだが残念ながら木の実は既に食い荒らされて納品するには不適切な状態になっており、渋々何も取れず降りてきたと言う事があったんだがその時金華が急に「行ける気がする」って言て命綱なしに不安定な枝から枝へぴょんぴょん飛び回りはじめて…最初こそ肝を冷やしたが特に危なっかし場面も無く飛び回り、戻ってくると「先に私が様子を見てくるね!」と……これを見て最初は獣人の運動神経すげーて、思ったけど黒蓮言わくただ金華がすごいだけらしい。


というか機動力が高いタイプの前衛が、後衛に運動能力で劣るのって……


「準備出来たからロープ下ろすよ!」


金華がそう言って太い枝の根元に括りつけたロープを地面まで垂らす。


「それじゃ私から登るから、ドーンは私が登り切った後に付いて来なさい」


そう言って黒蓮は降ろされたロープを木の幹を利用しながらよじ登って行く、既に二回目ということもあって黒蓮は順調にロープを登って行き、命綱の使い方もある程度は澱みない物になっている。こう言う所を見ると黒蓮も金華ほどでは無いにしてもセンスがいい事が伝わって来る。


「次はドーンの番だよ!」


そうしてものの数分で黒蓮は十数メートル上の枝まで登り切り、いよいよ自分の番がやってくる。ま、まぁ前回は上手く行ったし多分大丈夫だろう…もし落ちたら今のレベルじゃ即死しそうな高さまで登らなきゃだからすごい緊張するけど。



「やっと登ってきたわね」


「悪い」


一応、ロープには登りやすいように結び目と命綱を機能させる為の区切りがあるし、壁と木の幹もあるから遊具の棒のぼりよりは登り安いと思うんだけど…いかにステータス補正で身体能力が上がっていてもなれない動作だし多少多めに見て欲しい。


「金華はもう先に行っちゃったわよ?」


「準備出来たよ!」


「…ほら、まだまだ先は長いんだから気張りなさい」


黒蓮に促されるように上を見上げると上空にはまだまだ枝葉が生い茂っており、先が長い事を示していた。少なくとも後二回ぐらい登らないと行けなさそうだ。


「ああそうだな」


「ちなみに敵の気配は?」


「少なくとも感知出来る範囲には居ない」


「ならいいわ」


その後もひいこらひいこら木をよじ登って行き、もう既にしたを見下ろしても地面が見えず、枝葉ばかりになったころ、上の方で【魔力探知】に金華以外の生き物が複数引っかかった、隠密系の能力を使っているのか正確な数や配置は分からないがそれなりに数は多そう……


そんなふうに考えているとその生き物の反応の内の幾つか金華に向かって移動し始めた!


「金華!多分敵が上からそっちに向かってるから気をつけろ!」


「分かった!一旦降りた方がいい?」


「ドーン敵の速度は?」


「ああ…こっちを警戒しているのかそこまで移動は早くない。ペースが変わらなければ敵が金華と接敵するより早く黒蓮なら登り切れるはずだ」


「分かったわ。金華!私が登るから何かあったら教えなさい!」


「わかった!」


そう言うやり取りの後、黒蓮は足早にロープを登って行った。そのペースは先程までよりも早く何事もなければ余裕で間に合うだろが……そんな無防備な状態を見逃すほど甘い相手では無かったようだ。


上で確認出来た反応の一部が進行方向を金華から変えて黒蓮の方に降下し始めたのだ。とはいえ距離的には金華より黒蓮の方が遠いし速度が上がった訳じゃないから黒蓮が登りきる方が早いから気にする必要は……


「きゃぁっ!!」


ーーーガサガサガサ!!


「お姉ちゃん!?」


「黒蓮!?くっ!」


が、どうやらそれは甘い認識だったらしい。突然細く葉が揺れる音ともに黒蓮目掛けて無数の枝葉が落下し、黒蓮の事を気づ付ける。強い風が吹いた訳でもなく、黒蓮のいる場所だけで起こった局所的な出来事…まず間違いなく敵の攻撃だ。


小さいとはいえ無数の枝葉が落下してきた事で足場にしている太い枝が大きく揺れて足元がおぼつかなくなくなりバランスを崩しそうになった。咄嗟にしゃがみこんで体勢を整えるが…太いとはいえ元々大して丈夫でもない足場の枝には落下してきた枝葉が無数に突き刺さっており、しかもミシミシッと嫌な音まで上げ始めていた!


「うぅ」


「お姉ちゃん!」


黒蓮の苦しそうな呻き声と金華の心配そうな声が響く、幸いな事に落下してきた枝葉は黒蓮の致命的な部分には当たらなかったようで、あちこち擦り傷だらけになっているものの気を失っていたり血を流している訳でも無さそうだ


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