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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
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【1】不自然な始まり

「うっ」


目が覚めると眩い陽の光が網膜を焼かれる。驚いて思わず呻き声をあげ、反射的に手で顔を覆おい光を遮ろうとした直前に別の何かに光が遮られた。恐る恐る目を開けるとそこには可愛らしいにっこりとした笑顔を浮かべる金髪の少女がこちらをのぞき込んでいた。


「あ、ほら!私が言った通り板でしょ?」


呆然としているこちらをよそに少女は振り返ってそういった。つられとそっちを向くとそこには黒髪の…金髪の少女よりも少し大人びた雰囲気を漂わせた背の高い少女が居た。金髪の少女は何処か自慢げな様子だが黒髪の少女はいぶかしげにこちらを見ている……ん?


「…狐?」


目覚めたばかりだったせいか先ほどまで気が付かなかったが、しっかりと二人の少女みれば人間にはないはずの狐の耳と尻尾が生えていることに気が付いた。その衣裳は一般的に言われる獣人と言われる者と同様であり、その服装と派手な髪のインナーカラーと合わせて何かにキャラクターのコスプレかとも思ったが、感情の機微に合わせて動くその愛らしい耳と尻尾が()()らしさを醸し出す。


「うわっ!起きた!」


「死んでるわけじゃないんだから起き上がただけでそんなに驚かないで欲しいんだけど……」


起き上がり、顔にかかる灰色の髪を払いながらそういうと金髪の少女は起きていることに気が付いていなかったのか驚いた様子で飛びのき、代わりに黒髪の少女が前に出た。


「……あなた、ここ町の人じゃないわよね?旅人というわけでもなさそうだけど……こんな所で何をしているの?」


「何をして?……」


思考を巡らせて眠りにつく前のことを思い起こしてみるが……普通に自宅のベットで寝ていたはずだ、少なくともこんな森の中で眠ったりはしていない。


「えっと……わかりません」


「わからないって…そんなわけないいでしょ!」


うん、まぁそりゃそうだよね、普通に考えてなんでいるのかわからないなんてありえないし。


「お姉ちゃん、目覚めたばかりでそんなに怒鳴りつけたらかわいそうだし……この人は多分大丈夫だよ」


声を荒げる黒髪の少女に、金髪の少女は落ちついた様子で優しい声色でそう言ったが


「それはそうかもしれないけど……こんな危険な森のなかで寝ている不審者が大丈夫なわけないでしょ!?」


お姉ちゃんとよばれた黒髪の少女の不安はそれではぬぐいきれないらしい。


「うぅそれはそうなんだけど……でも、大丈夫!今まで私の直感が外れたことないでしょ?」


「それはそうだけど流石に今回は……」


黒髪の少女が金髪の少女の言い分に僅かにたじろいだ様子を見せたが、実績はあるようだが流石に()()で今の自分への警戒をぬぐうことは流石にできないらしく金髪の少女をたしなめようととしたところで金髪の少女がそれを遮るように食い気味に発言する。


「私達が抱えている問題解決の一助になってくれる!そんな気がする!」


そう金髪の少女が言った瞬間、時が止まったかのよう静寂が訪れ、一拍置いて黒髪の少女は先ほどよりも強い疑念の目でこちらを見ており何と言うか居心地が悪い。


「あ~えっと、何かお困りで?」


そう言うと黒髪の少女が自分へ向ける視線がさらにきつくなったが、何か言いだす前に今度は金髪の少女が前に出て話始める。


「見ればわかると思うんだけど私達傭兵やっててね?…まぁ見ての通り駆け出しだしなんだけどさ前回の魔物との戦闘が激戦で武器が使えなくなっちゃって……新しく買うお金も無いし、一応魔法は使えるけどそれだけでやっていけるほどじゃなくて……ほとほと困ってるの」


そう言うと金髪の少女は目に見えてしゅんとしてしまう、耳と尻尾もそれに合わせてしおれていて目に見えて悲しそうで……その様子は何と言うかこう、助けてあげたくなる。


「なるほど……武器、武器ねぇ…」


そう言いながら立ち上がって自分の体を見渡してみるが武器らしきものは持ち合わせていない。右も左もわからない現状、随分と物騒らしいこの場所で比較的友好的な彼女達からできれば現在地や近くの町の場所などを聞き出したいところだけど……


ん~服以外に身に着けているものはなさそうだし、寝る前とは服装が全く違うことぐらいしかわからな……いや、待てよ?この妙に厚着なこの服装…そしてこのインナーが紫の灰色の髪……さらに傭兵、武器、魔物、魔法、獣人というキーワード……もしこの予想が当たっていたら彼女たちの要望をかなえられるかもしれないが……外れてたら超かっこ悪いし、ここはコッソリ。


(【武器生成(クリエイトウエポン)】)


頭の中でそう唱えるといくつかの選択肢が続いて思い浮かびその中から現在生成可能な物を選択すると……


「できたか?」


「!?」


青いポリゴン状の粒子が何処からともなく出現すると帯のように連なりながら視線の先に集合していき……木の剣が作り出された。


「おぉ…本当にできた」


目の前で作り出された木の剣を手に取る……うん、普通に木の剣だ選択した通り。スキルを行使した影響か今時分がどういう状況なのかが薄っすらと認識できたような気がする。自分が最近よくやっているゲーム【ファンタズマ】の自キャラ【ドーン】にどういうわけかなってしまっているようだ、しかもレベル1、ポイント0、当然アイテムは無いしスキルや魔法も初期の物しか使えなさそうだ…なぜか種族はそのままのようだが。


「ちょ、ちょっと!いきなり何してるのよ!?」


「えっとごめんなさい!」


「ほんとだ!ほらお姉ちゃん!私の勘が当たって当たってたでしょ?」


「それは…そうだけどそれ、木の剣でしょ?さすがにそんなんじゃ魔物と戦えないしちゃんとした武器も作れるの?」


「えっとそれは…素材を使うか魔物をある程度倒せば出来るけど……」


「ハァ…本末転倒ね」


「でも武器が手に入れる当てができた分前進だよ!」


「それはそうだけど……」


何というか……流れが悪い気がする。このままだと自分のことをほっといて何処かに行ってしまいそうな…そんな空気を感じる。自分が何者か……いや、何者になってしまったのか、ここがどういう場所なのか自分はどういう状況に置かれているのかはここまでの流れでなんとなく理解できたから正直彼女達から情報を聞き出す必要はほとんどないし、おいて行かれてもどうにかなると思うから問題ないと思うんだけど…ふむ、何と言うか困っている人を助けたいという正義心とはまた違う気持ち……何と言うかこう…離れがたい?


たしかに二人ともまだ少女と言える年齢に見えるが、情報が溢れかえっていた前世ですら見かけた覚えすらない程の美人であることに間違いないし……これが男心?自分のような人とのつながりが薄く、理想の姿(フィクション)を見慣れたボッチゲーマーには縁遠い話だと思っていたが……


「はぁ……取り敢えず要件は済んだしこのままここに居てもしょうがないからいったん町に戻りましょ。ほら、あなたも行くわよ」


「……いいのか?」


「いくら不審者と言ってもまともな武器を持ってない人を危険な森に置き去りするようなことはしないわ」


「そうだよ!如何に金欠と言えど困っている人は見捨てられないからさ!何か困ったことがあったら相談してよ!」


「ありがとうございます!……えぇっと」


「あ、そういえば名乗ってなかったね私の名前は……





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