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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
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【36】ちから

「そ、そうね、いい質問だわ金華。魔物は…今回もいるらしいの、名前はフォレストスネーク、ドーンが〈魔笛〉を吹いて呼び寄せた魔物中に居た、大きな蛇ね。木の実を食べに来た鳥などを狙って木の実の付近に潜伏しているらしいから気を付けないと行けないわ」


「成程、となると不安定かつ少ない足場、それでいて高所で戦う為の道具を用意した方がいいだろうな。具体的には落下防止用の命綱…欲を言うなら飛行出来た方が良いだろうか?」


そう言うと金華と黒蓮が驚いたような顔でこちらを見てくる。


「もうドーンがどんな突拍子もない事をさも当然のように言い出しても驚かないつもりでいたけど…無理そうね」


「やっぱり、飛行は一般的じゃないのか?」


「当たり前だよ!もし一般的ならみんな空飛んでるよドーン!」


「確かに、それはそうだな。金華は賢いな」


ーーーなでなで


「えへへ…んふ?」


「ちょっとドーンっ」


近くに居た金華を撫でて褒めると黒蓮がひくい声と共に睨み付けてきた。別に本人も喜んでるんだから撫でるぐらい良いだろうに、ちゃんと撫でる時に髪が乱れたり、獣耳を潰さないように気を付けているし。


「まぁ『飛行(フライ)』の効果を持った道具を人数分生成するにはポイントが全然足りていないからな、登攀用の道具を揃えるのが現実的だ」


「そう…ね、依頼の方はそれで行きましょう。それじゃ次は精霊について話してくれないかしら?」


「ああ、まぁそりゃ気になるよな。言うて俺もあの時言った以上の事は…仕様ぐらいしか知らないんだが」


「それで良いから話してちょうだい」


真剣な表情で黒蓮がそう言う。


「分かった。まず契約を結んだ精霊は魔力を呼び出して攻撃と補助等の攻撃を取らせる事が出来る、ただ金華が契約を結んだ精霊のような特殊個体の場合はそれにプラスして特別な行動が出来たりもする」


「成程…精霊が契約者に害を及ぼす事は無いの?」


「そんな話は聞いた事がないよ」


そう黒蓮の質問に答えるとあからさまにほっとした様子を見せる。成程この質問が本命だな、余程金華の事が心配だったと見える。まぁ契約した精霊のせいで意識が朦朧としていた訳だし心配になる気持ちも分かる、自分も心配ではあったし。


「うん、私大丈夫だよお姉ちゃん!」


そう言って金華が自分の元から離れて元気な事をアピールするように正面から勢い良く黒蓮に抱きつく。お、おぉ黒蓮の胸が…


「ならいいのだけど」


「えへへー」


抱きついてきた金華の背を黒蓮は優しく撫で、それに答えるように金華は花が咲いたような満面の笑を浮かべた。2人とも美少女だからすごい絵になってていい。


「あと、契約の素晴らしい点はスキル枠を潰さずに使えるスキルが増えるという点だろう」


「スキル枠?」


「【狐火】の事?」


疑問を呈する二人に首を横に振って答える。


「【魔物鑑定】や【属性付与】の方だ。種族や職業に由来しないスキルは習得出来る数に限りがあるんだが…」


そう言った瞬間、黒蓮の表情が険しくなる。


「そう怒らないでほしい。二人に習得して貰ったスキルは間違いなく二人にあった適切なものだ、気に入らないならスキルを消す方法もあるから………許してください、この通り」


言い訳を切り上げ、そう言って頭を深く下げる。

言われて見れば確かに、習得出来る数に限りがあるにも関わらずその事を一切伝えずにこっちが指定したスキルを習得する様に促し……いや、話の流れ的に断れる状況じゃなかったし強制したと言っても過言ではない…それでこんな話を聞かされては黒蓮が不快に思うのも当然だろう。


「…まぁいいわ、許してあげる、悪意があって黙っていた訳じゃ無いみたいだし。けど、それを伝えずに私達に習得させたはどうかと思うわ。私報連相はとても大切だと思うの」


「本当に、ごめんなさい…」


「お姉ちゃん、あんまりドーンを虐めないで」


「虐めてなんていないわ」


「そもそも!ドーンが居なかったら私達はスキルを覚える事はもちろん存在すら知る事はなかったんだよ?」


「それはそうだけど……」


「ドーンもね、そんなに必死に謝らなくて良いんだよ?」


そう言いながら、いつの間にか近くまで来ていた金華は自分の肩を掴みグッと上体を起こさせた。


「あ、ああ…」


「ふふ、もっと偉ぶっても良いんだよ?ドーンが居なかったらお姉ちゃんも私もとっくに死んでただろうし……仮にそうならなかったとしても今程強くは絶対になれなかったんだから」


「いや、けど…「よっこいしょっと」き、金華!?」


近くに居た金華が機先を封じるように自分の膝の上に向かい合う形で上り、その小さな手を自分の頬に当てて顔の向きを誘導され…導かれるままに顔を向けると視界いっぱいに金華の夕焼けを思わせる美しい瞳が写った。


ーーードキンッ!


「っ!」


その瞬間が心臓が大きく跳ねた、そして全身が強い熱を帯びた様な感覚に襲われる。そして目の前の金華が何故かとてつもなく魅力的に思えた。


何時も気を使ってくれるし、優しく接してくれるし、なんだったら姉である黒蓮よりも優先してくれてるような気すらする。金華は可憐で、元気いっぱいで、何処か神秘的で、とても得難くかけがえのないものない存在で…それらの前には出会った瞬間から何故かこんなにも良くしてくれる不気味さも些細な……些細な…………


そこまで思考を巡らせた所で精神が沈み込み、先程まで感じて居た高揚感が失われて思考のもやが晴れるような感覚に襲われる。


「金華…」


「はいっ♡」


名前を呼ぶと金華は潤んだ目を細めて嬉しそうに返事を返し、何かを期待するかのように熱心にこちらを見つめてくる。


「励ましてくれるのはくれるのは嬉しいけど、『魅力』を使うのは辞めてほしい…かな」


「あ……」


そう言葉を続けると、先程までの嬉しそうな、なにか期待したような顔付きが一変し、さぁーーと血の気が引いたかのように顔が青ざめ俯いてしまった。


「別に怒って無いよ。【水の上位精霊(誨淫のウィンディ)】について水の精霊達が残した警告を金華に伝えるのを後回しにした自分のせいだから」


「で、でも」


「大丈夫、【水の上位精霊(誨淫のウィンディ)】にそそのかされただけなんでしょ?ちゃんとわかってる」


ーーーなでなで


「うぅ」


「…すっかり立場が逆転しちゃったね」


あっ


「ん゛ん゛逆転してしまったな。それでええと…【水の上位精霊(誨淫のウィンディ)】の話だったな」

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