【35】次のステップ
「どうなの!?金華は大丈夫なの!?」
「…ああ、特に問題は無さそうだ、数分後には意識を取り戻すはずだ」
金華は混乱状態に陥っているようだが【解析】の虫眼鏡で見た限りでは効果時間は順調に減って行っており、このまま何事も無ければすぐに目を覚ますだろう。フリョンがこの手のシンプルな状態異常も治せたら手早く済むが、殆ど戦って居ない事もあってまだそう言う魔法やスキルが使える段階に達して居ない…次からフリョンにも戦わせてレベルをあげよう。
「俺は水の魔結晶を採取してくるから、黒蓮は金華の事を見ていてくれ」
「わかったわ」
そして二人と一匹を置いて地底湖の辺に一人で戻った自分は『次元収納』から事前に水の魔晶石を採取する為に買って置いたアイテムを取り出す、採取の方法も道具の使い方も事前に調べておいたからバッチリだ。
「流石にこう言う所はゲーム通りとは行かなさそうだし」
そんな独り言を漏らしながらも採取を終え、金華が目覚めるのを待って帰路に着いた。
★
朝早くに出発した甲斐あってか、洞穴の中で色々と手間取ったことがあったにもかかわらず日は高い位置にこそあるもののまだ上り気っておらず、街に着くまでの間には同業者らしき人影がちらほらと散見出来た。
そしてその折に偶然一匹のゴブリンと三人の傭兵らしき自分が戦っている場面を目撃したが……あれは酷いものだった。
なんと無手のゴブリン相手に武器を持った人間が
3人がかりで押されてたのだ。もちろん三人が持っている武器は質のいい物ではなさそうだったが、それでも二人に出会ったばかりの頃の自分達より断然いい物だし、裸同然のゴブリン相手にこのていたらくなのは戦いを生業とする者としては流石にどうかと思う、あの分だと群れで襲われたらひとたまりもないだろう。
まぁ自分のように死んでも問題ない環境で修練?を詰んだわけでも、誰かに師事したわけで無ければあんなものなのかもしれない。そういえば黒蓮も金華もちゃんと敵と戦えるけど誰かに師事したことがあるのだろうか…もしかして2人ともいいとこのボンボンだったりする?前に街で二人を呼び戻しに来たっぽい人と話してたみたいだし。
「……」
まぁ二人がどんな生い立ちでどんな理由で人間しかいない街で暮らしているのか知らないけど…ああして救われ、こうして仲間になった以上その責任を最後まで全うすべきだろう。
そんなふうになんでもない事考えているといつの間にか傭兵ギルドに到着していた。ちなみに『次元収納』にしまっていた納品用の素材は既にカバンに移してある。黒蓮と金華曰く『次元収納』なんて魔法は聞いた事が無いし、強いて言うなら御伽噺に登場した魔法の鞄ぐらい……との事なので隠することにしたのだ、多少の手間がかかっるし面倒だけど、このての魔法やスキルはバレると大変な事になるのが定番だし出来るだけ隠して置いた方がいいはず。
依頼の水の魔結晶を提出し、今回の探索で入手したゴブリンの魔石を売り払うために受付を後にしようとすると引き止められた。
「嬢ちゃん達の方は行って構わないぜ、傭兵ランクのことでお前らの彼氏くんに伝えなきゃいけないことがあるだけだからよ」
「そうなの?……ってど、ドーンは彼氏じゃないわ!か、勘違い…しないでちょうだい!」
ーーードンッ!
黒蓮は余程からかわれたのが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしてカウンターのテーブルを叩いた。
「お、おお…そんな剣幕で怒鳴らないでくれ、からかって悪かったよ。」
「もう二度としないで」
黒蓮にそう凄まれた受付のおじさんは怯む様子を見せたが、気を取り直し手放し始めた。
「ん゛ん゛……それでドーンの傭兵ランクの事なんだが、今回の依頼達成でひとつ上のランクであるEランクに上がる条件を満たしたんだが…」
「だが?」
「上位のランクの者とパーティーを組んでいた場合、実力の確認のために別途試験を設ける事になってるんだ」
「あー成程、上位の傭兵に寄生してランクをあげるのを防止するためか?」
「あぁそうだ、もしそんな事が簡単に横行したらランクに信用が無くなっちまうからな」
「ドーンはそんな事しないし!とって強いんだよ!」
「そりゃーそうかもしれねぇかなぁ」
「それでどんな試験なんだ?」
「あんた得意な種目は?」
「一応近接戦闘」
「成程、この後時間は?」
「特に予定は…
質問を受付、黒蓮に視線を送ると少し悩む素振りを見せたあと首を横に振る。何を悩んだのか気にはなるがどうやらこの後の予定は特にないらしい。
…無いな」
「んじゃ決まりだな。Eランクへの昇格試験は群れの魔物の討伐だ、対象も数も問わない。まぁ今までの戦果が本物なら余裕だろ、直ぐ行こうぜ」
「分かった」
★
分かり気って居た事だが試験無事に合格して自分も黒蓮と金華と同じEランクに上がった。監視目があっため念の為に一切魔法を使わなかったから多少時間はかかってしまったが洞穴で戦ったゴブリンよりも弱かったしとくに問題は無かった。
こうして、無事に自分のランクが上昇し、三人でいつもの宿屋に戻って来た。そして話すのは…自分が試験を受けている間に黒蓮柄見繕った次の依頼の話。
「今回受けた依頼は木の実の採取よ、もちろん難易度はDランク、最近戦闘ばっかりだったから少し箸休め的な意味も込めてこの依頼にしたわ。依頼書を見る限りでは、この木の実は中層に生えているあのとっても大きな木の上の方に生えているらしいからあれに登る準備が必要ね」
「はいっ!」
威勢の良い元気な声と共に金華が勢い良く手を上げて質問がある事を宣言した。
「どうしたの金華?」
「今朝の洞穴みたいに魔物が巣食ってたりするの?」
金華が小首を傾げながらそう疑問を呈すると、前回の失敗が脳裏によぎったのか、黒蓮は一瞬ぴくりと身を震わせたもののすぐに気を取り直して返答した。
「そ、そうね、いい質問だわ金華。魔物は…今回もいるらしいの、名前はフォレストスネーク、ドーンが〈魔笛〉を吹いて呼び寄せた魔物中に居た、大きな蛇ね。木の実を食べに来た鳥などを狙って木の実の付近に潜伏しているらしいから気を付けないと行けないわ」
「成程、となると不安定かつ少ない足場、それでいて高所で戦う為の道具を用意した方がいいだろうな」




