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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
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【33】水の魔結晶

「ドーン!」


背後から迫って来たゴブリンの殲滅を終え、顔にこびりついた魔物特有の青い血潮を拭っていると洞窟の先から自分の事を呼ぶ声が響く。声のする方に振り返れば金華がかなりの勢いでこっちに向かって走って来ていた。手を振ってこっちに走って来ている金華に返事をすると、薄暗い上にかなり距離が離れていても分かるぐらいらい輝かしい笑をにぱっと浮かべると更に走る勢いを早め、ある程度近付いた所で飛び付いた来た。足元は魔物の血肉が転がって居て不安定だったが不意を疲れた分けでもないので倒れることは無い。


「汚れるぞ」


「そんなことより大丈夫?怪我してない?」


そう言って自分に抱き着いた状態のまま、心配そうに体のあちこちに手を這わせてくる。


「こっちは大丈夫だ、そっちは黒蓮の姿が見えないけど……」


「あ…それは大丈夫だよ!お姉ちゃんは走ってる時に足を滑らせて転んじゃっただけだから!あ、もちろん回復はしてあげたよ、だけどドーンのことが心配で置いて来ちゃった」


金華を地面に下ろしながら黒蓮の事を聞くと金華は何かを隠すようにそうまくしたてて話す。もしかして黒蓮に何かあった?いや、でも金華ならなら早く助けに行こうと言うと思うし…わからん。まぁ少なくとも大事には至って居ないだろう。


「そうか…無事なら良かった。後ろから来ていたゴブリンは大したこと無かったし先に水の魔結晶を…あ、水の魔結晶あったか?」


「うん、あったよ!ドーンの言っていた通り水魔法を使ってくるゴブリンが一匹だけで守ってたけどドーンの言っていた通り水魔法しか使って来なかったし余裕だった!」


「そうか、それは良かった」


そんな会話をしながら二人で洞窟の奥へ向かって歩いていると奥からとぼとぼとした足取りで黒蓮がこっちに向かって歩いて来ていた。


「黒蓮、大丈夫か?」


「あ…ドーン。その、さっきは疑ってごめんなさい」


「別それぐらいいいよ。ちゃんと向かってくれたから気にしてないよ」


「そう、ありがとうドーン……私、頑張るから」


「ん?ああ、そうだなぜひ頑張ってくれ」


そんなたわいもない会話の後三人で更に奥へ進み…ついに水の魔結晶のある場所にたどり着く着いた。

水の魔結晶があるこの場所は地底の様相を呈していて、先程まで通ってきた通路と比較してかなり広い空間になっており、陸地部分にはゴブリンのもの思われる生活跡が散見出来る。


そして本命たる水の魔結晶はどうやらその地底に生え(はえて)ているらしく湖から水晶を思わせる六角形の太い柱が水色の光を放ちながら行く本もそびえ立っており、地底湖のほとりではクラスターとなった小さな水の魔結晶が固着し、こちらも同様に光を発しており…


見た目だけはとても幻想的で美しい光景がここには広がっていた。想像よりもかなり水魔結晶の数が多い…この分だどここら一体は水属性の汚染領域になってかも可能性が高いから奥に行かないように気を付けないと行けないな…まぁ金華を中心に発動してる【環境改変】の影響下にいれば問題ないだろうけど。


「これ…あのでかい柱を持って帰れって訳じゃ無いわよね?」


「多分(ほとり)にある小さいので十分に足りるだろ、手早く済ませ……どうした金華?」


「……何かいる」


黒蓮の顔を付き合わせ、何処をどう回収するか水の魔結晶のクラスターを吟味していると、近くに居た金華がすくっと立ち上がり、水魔結晶の大晶柱が複数顔を見せる地底湖の奥見つめてそんな事を言った。


「別に何も見えないのけど…」


「そう…だな」


金華が指し示す先をよく見て見ても何か金華が言うような物があるようには見えず、念の為【魔力探知】を使用して探って見るがこの()が保持している魔力量がかなり膨大で、それ以外が塗り潰されてしまって居てよく分からない。


「あんなに光ってるのに分からないの?こっちだよ、こっち!」


「ちょっ!?」


そう言いながら金華濡れるのも厭わずザブザブと地底湖の中に入って行った。


「あぁ、もう!確認したらすぐ帰るからね!」


そう言って黒蓮も金華の後を追って入って行った。そしてこうして戸惑っている間にも金華はどんどんと地底湖の中の水晶柱の上を通って奥へと進んで行っており、早く行かなくては追いかけることすらままならなくなってしまうだろう。


「金華!絶対に【環境改変】を切らしちゃダメだからな」


僅かな逡巡の後、自分もそう言いながら金華の後を追った。そうして金華の案内で地底湖の奥へ奥へと進んでいき湖の中央付近に到達したところで金華が湖の底から真っ直ぐ生えた恐らくこの場にあるものでは最も大きな水の魔結晶を指さしてピタリと止まった。


「ほらここ!このとっても大きな水の魔結晶の中、何かいるでしょ?」


「別に……他の魔結晶と変わらないように見えるけど……」


「そんな事無いよ!ほら、ここ!」


「あぁ俺にも周囲と同じに見える」


「ドーンまで……」


そう言って目を潤ませ、目に見えて悲しそうな様子で俯く金華の頭を落ち着かせるように優しく撫でると、今に涙が零れそうな瞳でこちら見上げてくる。


「そんなに悲しまなくて大丈夫だ金華、金華の話が嘘だなんて思って無いから、なぁ黒蓮」


「え、ええ!もちろんよ!」


信じてなかったなこいつ。


「んん゛恐らく…金華に見えているのは水の精霊だろう」


「精霊?」


二人が何それ?という感じて小首を傾げてこちらを見てくる。説明してしんぜよう。


「ああ、精霊は属性魔力の化身…ひいては星の落とし子のような存在で…普通の場所にいるのならその体から発せられる属性の光で容易く発見出来るが…こういう場所だとそれで発見するのは難しいんだ。金華が発見出来たのは多分…星と縁があるからだろう」


「そっか…」


「それで…金華はどうしたいんだ?」


「どうって?」


「精霊は基本的に余所者を嫌うし、そうでなかったとしてもここまで近付けば普通何かしら反応があるはずだけどそれが無くて、精霊と思われる存在がいるのは中央にある一番大きな水の魔結晶の中ということは多分…この水晶の中に封印されてる」


もしこの仮説が真実ならここら一体が水属性の汚染領域になっているのも頷けるというもの。


「封印…」


「多分封印を解くこと自体は簡単なず、この水晶を破壊すれば封印は解けるだろう、ただ…」


「封印されてるってことはろくな奴じゃ無いってことでしょ?そんなやつ放置してはさっさと帰りましょ、二人とも」

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