【30】探索系スキル
「ここが良さそうかな」
「ここは…朝市ね」
視界の先では商売人のたくましい声と人々の喧騒が鳴り響き、人々がごった返していた。自分達は邪魔にならないように入った裏路地から大通で展開されている朝市を遠巻きに眺めていた。
「【魔力感知】を習得するには生き物が沢山いる場所が効率が良いんだ。場所は…まぁここでも大丈夫だろう、何かあったら言ってくれ」
「え、ええ」
二人に断って路地裏の地面に座り込んで目を瞑りその状態で内に外に…強弱もある見えない物を感じようと意識を自分から広げて行く……
【魔力感知】はその名前の通り魔力を感知するスキルで探索系スキルの中では比較的習得しやすい部類な上に索敵はもちろん地形探査やアイテム捜索等にもつかえる専用スキルに匹敵する極めて高い汎用性をもった高性能スキルだ…隠密に対して完全に無力なのを無視すれば。
隠密に弱いのは索敵用のスキルとして扱うには致命的では?と思うかもしれないが熟練度をMAXまで上げて上位スキルの【魔力探知】に出来ればある程度その欠点はましになるし…【魔力感知】は三大熟練度上げやすいスキルのうちの1つだからさっさと上げきってしまえば問題ないはず。ちなみに残りの二つは【隠密】と【大道芸】のスキルである。
しばらくそんな事を考えながら周囲の様子を探って居るとコツを掴めたのか急速周囲の様子が把握出来る様になり直ぐに【魔力感知】を習得出来た感覚があり……
「ん?」
黒蓮と金華が近くに居ない?まだそんなに時間はたって無いと思うんだが…待ってる間暇だったから朝市でも見に行ったのか?でも何かあったら言う様に言ったし何かあった…いや、それだど無防備だった自分が何ともないのはおかしいしそれはないか。
【魔力感知】をしっかりと発動し、その効果範囲を広げて探して行くと人混みの中に周りの人よりもかなり大きな魔力の塊を見つけた。昨日の〈魔笛〉を使用した連戦のおかげで二人のレベルも上がってるはずだし周囲と比べてかなり魔力が多いこの反応で間違いないはず……
座り込んでいた路地裏を後にし【魔力感知】を頼り朝市で混み合う大通りを通り抜けて行く。そしてようやく大きな反応が有ることろに辿り着くとそこには何やら露店の前で真剣な眼差しをらした金華と黒蓮の姿があった、何かしゃべってもいるようだが周囲の音がうるさくてこの距離では聞き取れそうにない。
二人の無事な姿に安堵の息を漏らしながらもこちらに気が付いていない二人にはまだ声をかけずに二人が見ている商品に目をやる。
二人が見ている露店には小さな宝石らしきものがあしらわれたアクセサリーが並べられており、異世界で傭兵という荒事を生業としていても、ちゃんとこういう所は女の子なんだなと思い少しほっこりした気持ちになりながらもどうするべきか思考を巡らせる。
ここですっと出て言って二人に奢ってあげるのがカッコイイムーブな気がするが…商品には値札が貼られておらず、そもそも2人が何を欲しがっているのかも分からない以上安堵にその行動をとるのはリスクが高い気がする。やっぱり話を着てその流れで…の方が良いな。
「二人とも」
「あ、ドーン!」
話しかけると金華がまず反応してくれ、それにつられるように黒蓮がこちら振り返ろうとしたが、途中で何かを思い返したように振り返るのを止めて…随分と機嫌が悪そうな声で露店の店主にこう言い放った。
「とにかく、金・輪・際!私達に関わらないで!!行きましょ二人とも」
「あ、あぁ」
黒蓮にそう言われて目に見えて動揺した様子を見せる獣人の店主を黒蓮はキッ!と鋭く睨みつけると自分の金華の手を取ってこの場を足早に後にした。どうやらアクセサリーを欲しがっているというは自分の勘違いだったらしい。
「不躾な質問かもしれないが…良かったのかあんな別れ方をして?あの人、二人の故郷の人じゃ無いのか?」
「……良いのよ、もう二度とあんな所に戻る気も会う気も無いから」
「そうか…」
不機嫌そうにそう言捨てる黒蓮。前々から察してはいたけどやっぱり2人とも故郷で何かあって人間の街に出てきたっぽいな。二人の過去…気になりはするが誰にだって後暗い過去や知られたくない過去はあるものだ、だから幾ら気になっていたとしてもそれを探るのは無粋というものだろう。仮に二人からその話を聞いたら自分も転生とか異世界とかゲームとかの話をしないといけないし…聞かない方がいいはずだ、それにわざわざ嫌な記憶を思い起こさせる必要も無い。
朝市が行われている場所から離れた後、次の行動を決める事になり、作戦会議の為にたまたま近くにあったカフェの様な場所に入って軽食と飲み物を頼み席に着く。
「……それでわざわざ私達を探しに来たってことは【魔力感知】を習得出来たってことで良いのよね?」
「ああ、それはバッチリだ」
「それじゃ後は金華の【魔物鑑定】ね」
「うぅまだ4分の1も読み終わってないよー」
そう言って金華は〈魔物図鑑〉を見せてガクッと項垂れる。
「俺は金華が【魔物鑑定】のスキルを習得するのを待たずに、水の魔結晶を取りにまたあの洞窟に行ってもいいと思う」
「その心は?」
「【魔物鑑定】の標的は基本的に強敵相手で、あの洞窟は【狐火】一発で倒せる様なゴブリンの巣だから。あの時みたいな不意打ちは【魔力感知】を習得したからまず起きないはずだし」
「なるほど…確かにその通りかもしれないわね」
「もちろん万全を期すなら金華が【魔物鑑定】を習得して、黒蓮が各種属性適正をあげて、俺が【魔力探知】を習得出来るまで待った方がいいとは思う、〈魔物図鑑〉を読破しなくても【魔物鑑定】は習得出来たはずだし…どうする?」
「そう…そうね。まだ依頼の期限まで余裕があるし…一度失敗した依頼だもの万全を期しましょう」
黒蓮はたっぷりと悩む素振りをみせた後、そう言った。正直ゴブリンの住処となっている洞窟程度なら不意打ちやらトラップ対策をしておけば今の装備でも余裕だと思うが…木の剣で中層近くまで行く選択を即断した人とは思えない慎重っぷり、余程前回の失敗は黒蓮の中で大きいのだろう。




