【26】パーティー
次から7時投稿に戻します
「や、やった!」
「やったねお姉ちゃん!」
天高く日が昇る頃、早朝から初めた黒蓮がスキルを思念発動出来るようになるための特訓がようやく一つの実を結んだ。指定動作による登録したスキルの発動自体は想定通り教えればすぐに出来るようになったものの思念入力によるスキルの発動の習得にはかなり時間がかかってしまった、まぁ高レベル帯でもマニュアル入力の人がいた事を考えれば、前回のも含めて二日程度でただ出来るだけではなく安定して出来るようになったのはすごい事なのかも?
「おめでとう、黒蓮」
「2人とも手伝ってくれて本当にありがとう、おかげで……私もスキルを発動させることが出来るようになったわ」
そのことを証明するように黒蓮は指先に小さく青白い火…【狐火】を小さく灯して魅せる。制御もしっかり出来ているようでとても少し前まで発動すらおぼつか無かったとは思えない。
「それじゃ少し休んだら魔物を狩りに行こう」
「そうね」
玉のような汗を流す黒蓮に水と汗を拭うための布を渡した後、草原に座り込んで…その時偶然目に入った他の傭兵を見てふと意外な事に気が付いた。
こんな目立つところで派手にやってるのに誰も話しかけに来ないんだな、この手のお話だと特異な力や能力を使っていたら突っ掛って来たり能力について聞かれたりするのが定番だと思ったんだけど…まぁ面倒事は少ないに越したことはないけどちょっと気になる、傭兵なんて命懸けの荒事やっているのに力を得ることに対する欲求や渇望が少ないとは思えないし……もしかしてふたりが獣人であること関係してたりするのだろうか?
「あ、言い忘れてたけど魔物を効率的に倒すため周囲の魔物を呼び寄せる〈魔笛〉を使用しようとおもうから連戦の準備をしておいて」
そう言って鞄から昨夜も使った〈魔笛〉取り出して2人に見せる。
「魔物を呼び寄せる……もしかしてドーンが今朝あんな大怪我して帰ってきた理由って…」
「まぁそれを使って魔物を狩ってからから「ドーン…」ん?」
「もう勝手にそんな危ないことしちゃダメだから」
「ホントだよ!いったい何考えてるの!」
「別にあれぐらいなんてこと…「「ダメ(よ)!」」あ、はい」
食い気味にNOを突きつけてくる2人に気おされながら了解の返事を返すと、2人は何故かどこか不満げな様子は話し始めた。
「…私の為にドーンがそんな無理したのはわかってから、あんまり強くは言えないけど…もっと自分の事を大切にして」
「本当だよ!もっと自分を大切にね、あともっと私達に頼って良いんだよ?」
「ぜ、善処する」
「まぁ今はそれでいいわ。そろそろ十分に休憩したし、行きましょ?」
「ああ」
「はい!」
★
木漏れ日が木々の隙間から差し込む森の中に三人でやって来た。昨日狩り尽くした影響かここに至るまで魔物に襲われることはもちろんその痕跡も見当たらない。もしかしたらゲームのように常に一定数の魔物がいる訳じゃなくて、時間経過で増えていくタイプなのかもしれない……いや、リアルなんだから普通はそうなんだけど、昨日より前の森と今日の森の事を鑑みて考えるとこの森は最低数までは一気に魔物が増えてそこに達してからからは徐々に増えて行く感じの場所なのかもしれない。
「バフはかけ終わったわね…それじゃ吹くわよ」
黒蓮はそういって自分から取り上げた〈魔笛〉を掲げてそう宣言し、自分と金華の方を伺って大丈夫そうな事を確認すると勢いよく〈魔笛〉に息を吹き込んね吹き鳴らした!
ーーーピュォーーーーーーーー!!!
すると甲高い独特の音が周囲に響渡り、俄に周囲のざわめきが大きくなり始め….そしてその時がやってくる。最初に森の中から現れたのは角兎の群れだった、角兎の群れは草木にその身を隠しながら徐々にに近付いて来ており金華が矢を放って迎撃しているがそもそも射線が通る機会が少なく、角兎の数が多いことも手伝ってこのままではこっちに辿り着く前に倒し尽くすのは厳しいそうだ。
「『重力』」
だから『重力』を発動してよってきてきた敵を一箇所に集め…
「【狐火】!」
黒蓮が【狐火】を発動して一箇所に集められた角兎の群れを纏めて焼き払う、角兎達は冷たい炎に焼かれるがその炎が周囲の草木に燃え移る様子は無く…少し前までスキルをまともに使えなかったとは思えないぐらい制御がしっかり出来てるしこれなら安心して見ていられる。
続けてやってくる他の群れも同じ手法で倒し、ゴブリンのように遠距離から攻撃してくる的は金華が矢を放って仕留める、当然の事ながら1人でやった時とは比較にならないレベルで順調に狩りは順調に進み…手に入ったポイントで昨日のようにある程度状況を整え終えたころでいよいよ中層の魔物が出現し始めた。
複数人でやっている影響かその数は昨日の倍近い上に出てきたのは抗戦経験の無いフォレストスネイクだ、毒を持つというのと森蛇と言うことで小さいのを想像していたが実際に出てきたのはアナコンダを超える大きさをした優に巨大蛇であり、それが五匹にょろにょろ森から這い出してきて、その後に続くように二匹のオークが勢いよく駆け込んでくる。
「「【狐火】」」
「『下位減速』『加重』」
ふたりが敵全員を巻き込むように広範囲に【狐火】を放った。事前に話しておいたとはいえ、この数の中層の魔物相手に怯まず攻勢にちゃんと出れるとは…最初にジャイアントベア一匹相手に即逃げを選んだとは思えない成長っぷりだ。
蛇系や蜥蜴系の種族は基本的に冷気属性の攻撃をくらうなどして体温が下がると攻撃力と速度が著しく低下する特徴があるから『下位減速』『加重』をかけてやれば遠距離攻撃を持たないらしいフォレストスネイクはしばらく戦闘に参加出来ないはずだ。
2人の【狐火】をくらうのを無視して突っ込んできた二匹のオークの内一方の足に槍を投げ付け侵攻を止め、もう一匹は盾受けして受け止める、レベルが前より上がっているおかげか無茶をしていないおかげか昨夜と違って今回は余裕を持って受け止められた。
「ハァッ!」
そして自分が攻撃を受け止めた方のオークを黒蓮が刀で攻撃し、オークの気が黒蓮の方に向いた隙に投げた槍を手元まで引き寄せてキャッチしてオークの体に突き刺した。もう一匹のオークは足へのダメージと金華の追撃のおかげでまだしばらくは大丈夫そうで、フォレストスネイクの方も予想通りかなり動きが鈍くなっておりこっちも心配無さそうだ。
とはいえ金華が持ってる矢に限りはあるし、フォレストスネイクだって陽の当たる位置にいるからそう時間を置かずに動き出す、だから…目の前のこいつをさっさと倒す必要がある、幸いな事に昨夜と違ってオークは二匹とも武器を持っていないしそう時間はかからないはずだ。
オークの攻撃を盾で防ぎながら回避よりも攻撃を優先して責め立てる。果敢に責め立てた甲斐あってかオークは自分の方にばかり注意を向け、その間フリーだった黒蓮の放った斬撃の多くにオークは対応しきれず比較的素早く倒す事が出来、もう一匹のオークは殆ど金華に遠距離から削り切られており、ほとんどトドメを刺すだけであっけなく終わった。
これであとは動きの鈍いフォレストスネイクだけ…とは行かないようだ。フォレストスネイク達は既に戦いになる程度には動けるようになっており、オークの時と違い数的不利もあるので少し厳しいように感じるが黒蓮と金華が【狐火】を当てればまた動きが鈍くなるはずだからそこまで問題は無いはず。




