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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
【第一章】始まり
25/122

【22】 帰り

side 金華


「う、ん〜」


ふと目を覚ますと辺りは暗闇に染まってた。窓からはわずかに月光が差し込んでて、それを頼りに辺りを見渡して見ても何も変な所は無い…どうして目が覚めたんだろ?


まぁ何も無いならいいか。


そう思って再び眠り着こうとした所でふと、眠りについた記憶が無い事に気が付いた。あれ、私…私いつ寝たんだっけ?そうやって思考を巡らせた事で先程まで気がついていなかった喉元と目の痛み気が付き、その痛みが切っ掛けとなってどうやって眠りついたのかを私に思い出させた。


ーーーボンッ


「は、は、恥ずかしぃ!!」


どどどドーンに、だ、抱きついて!大きな声を上げて泣きじゃくって…うぅぅぅ、ドーンにあんな情けない姿を見せちゃうなんて!?だ、大丈夫だよね?嫌われてない…よね?


「うぅ…」


「あ……お姉ちゃん」


隣でお姉ちゃんがうめき声をあげる。そうだお姉ちゃん足を怪我して…回復魔法をかけても全然治らなくてそれでドーンが……


「そうだドーンは何処に…」


辺りにドーンは見当たらない。私が眠っちゃったしもう夜も深いから自分の部屋に戻って寝てるよね、会いたいけど…こんな時間に行くのは迷惑だろうし……


そんな事を思いながら痛みからか泣き腫れたお姉ちゃんの顔に『下位回復(レッサーヒール)』をかける、すると目元を覆っていた赤みはスっと消え、堪えるような表情こそそのままだけど元の綺麗な顔に戻る。それを見るとやっぱり気になるのは…太腿


「綺麗…だよね」


矢が刺さっていた太腿を見てみてもやっぱり変な場所は無い。いつも通りの程よい筋肉がついた太くてすべすべでムチムチで柔らかく触り心地のいい柔肉のまま…癒えないキズがあるとは到底思えない、けど確かにお姉ちゃんの顔は痛みに歪んでいて…


「私達の戦いはこれで…」


今は故郷の村を飛び出して苦節一月ぐらい…そんな短い間しか活動していないのにこんな取り返しがつかない有様…結局村の大人達が言ってた通りになっちゃったんだ、私達なんかじゃ外の世界で生きて行くなんて無理だったんだ。


ーーーぽた…ぽた


「ごめんなさい…お姉ちゃんごめんなさい。私のせいで、私が無理を言ったせいで…」


悲しみで涙が溢れ止まらない、今一番辛いのはお姉ちゃんなのに。一度村を飛び出した身、逃げ戻っ足りなんてしても当然いい扱いなんてされないだろうしまともに歩けないお姉ちゃんは尚更…


「すんっすんっ…どうしてこうなっちゃのかな…」


村には戻りたく無い…けど私一人じゃお姉ちゃんを養いながら暮らすなんて無理だしその為にドーンを付き合わせるなんて持っての他…ただでさえ助けられてばかりでドーンには何も返せて居ないのにこれ以上迷惑をかけるわけには…


「ぁ…そうだ、手術…手術ができる医者が居れば直せるって」


ドーンは確かにそう言っていた。同時にこの街には居ないだろうしそもそもお金が足りないだろうとも。けど、もしかしたら……


そう思ってこぼれ落ちる涙を拭って立ち上がった時にテーブルの上に見慣れない物が置いてあるのを見つけ、気になって見てみるとそれには《朝には帰ってくるから、おとなしく待っててね》と書かれていた。お姉ちゃんはここにいるしまず間違いなくコレを書いたのはドーン……だけど何をしに行ったの?まさか手術を出来る人をこんな深夜に探しに言ったなんてことは無いだろうし…ま、まさか夜逃げ?ドーンに限ってそんな事………


いや、でも私達は、ドーンに、何も返せてない、し、それどころか、迷惑を、かけて、ばかりで…


「うっ!?」


ーーーハァッハァッハァッ


「金華…」


私の背中に優しく柔らかい手が触れる。


「あ…お姉、ちゃん」


「大丈夫、大丈夫よ。ドーンは何も言わずに消える様な不誠実なことをする人じゃ無いわ…きっと大丈夫よ」


お姉ちゃんは力の入って居ない腕で私を安心させるように身体を抱き寄せて抱き締めてくれる。その震えるお姉ちゃんの手に私の手を重ねる。


「朝まで…信じて待ちましょう?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

side ドーン


深い深い夜が明ける。世界を覆って居た暗闇がオレンジ色の明る光によって征伐され、世界が本来の色を取り戻していく様は何度観ても感じ入る物がある。


まぁそんな感情に浸っている余裕は無いんだけも。隠密はもちろん探知系のスキルも魔法も持ち合わせていないため敵との交戦を避ける事は出来ず、かと言ってそれらを打ち払うような攻撃魔法も持ち合わせて居ないので武器が振るえない現状では妨害しながら逃げるしかない…レベルはこっちの方が圧倒的に上だし『重力(グラビティー)』が使えるからか囲まれてもにげるのはそこまで難しくない…けどその度に時間が……


「くっ」


新たに襲いかかってきた狼の群れを飛び越え蹴り飛ばし先を急ぐ。そんなこんなで襲撃を凌ぎながら森の中を必死に駆け抜け、ついに街までたどり着いた時にはもう既に早朝と言える時間は過ぎ去って朝と言える時間に差し掛かっていた。


「お、おいあんた、大丈夫か!」


「すまない、急いでるんだ」


街に近付いたタイミングで見張りの衛兵からかけられた心配の断って先を急いだ。幸いな事にもう一度止められるようなことは無く二人が待つ宿屋にたどり着いた、二人が居るはずの部屋をまだ動く右腕でノックすると右腕に激痛が走り、思わず漏れそうになった声を堪えて二人の反応を待つ……間も無く、トビラをノックしたのと殆ど同時に扉が勢い良く開け放たれた。


「ど、どーん…ドーン!」


開け放たれた扉の向こうにはしおしおに落ち込んだ様子の金華の姿があった。髪はボサボサで尻尾と耳は萎れ、目元は少し前まで泣いていたのか赤く腫れて大きなオレンジ色の瞳は今にも涙がこぼれそうなぐらいに潤んでいた。


「ど、どうした金華?もしかして俺が居ない間に何か…「どうして居なくなっちゃったの?やだぁ居なくならないでぇ!いい子にするし!なんでも、何でも言うこと聞くからぁ!」お、おお?」


ほ、本当に何があったんだ?自体の説明を求めてヒシッと抱きついて見た目相応の子供の様になきじゃくる金華から目を逸らし、ベットの上で状態を逸らしてこちらを見ている黒蓮に目をやると、黒蓮も金華と似たような様子だったが自分と目があった途端その表情は喜びと恐怖が混じった物から驚愕と後悔が入り交じった物に変わった。


「ドーン…あなたその怪我…」

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